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生きるために食うのさ

小学校の先生の話を書いていたら、
「正直感謝はしてるけど、学生時代本当にやめてほしかった話その2」を思い出した。




学生時代、多分私のことを好きな人がいた。
突然。

それで「一緒にご飯たべよ」なんて伏し目がちに話しかけてくる。
もちろん教室の隅には、こちらを覗く集団の影。




『え。いや、ちょっと勘弁してよ』
人前で飯?絶対に無理。嫌だ嫌だ。
断る!断固拒否!!



『あー、人とご飯食べるのちょっと苦手で..
話すのは、食べ終わってからでもいいかな?』


なーんでこんなにマイルドに言っちゃったんだろう


「あ、そうなの?じゃあ気にしないで。あとでね」



安心したのも束の間、
これ絶対見られてる。見られてます!!
それもひとりじゃないよ。集団ごとやっちゃってるね。


近づいてきてるよ!!!!

(あ。これ終わった気がする)


(ね?)


(ほら!)


話しかけてきました。


(は、しばくぞ。)

そんなこと思っても、彼女が見たのは私の涙目。
いや別に悔しいとかじゃなくて、単なる嘔吐反射だから。
吐きそうだからーー〜!

わかる?

言いたくても、口の中いっぱいだし。


『サイテイダ』



ーー
時が再び動き出すと
なんか気まずそうに「ごめんね〜」と笑って去っていた。
いや集団の人なんかちっちゃい声で私のこと、しゃべってね。


『ああああああああああ。
ほんと、最悪。』



ーー
なんと
これ、卒業までの数ヶ月毎日続きます。

…便所はどこですか。


屋上に続く階段は、空き教室は、
どこですか。

私の平凡な学校生活。終。


次の日。
『社会不安だっけ?会食恐怖ってやつでしょ?(ニヤリ)
私が治してあげる』


…は?この人どうにかしてください。
こっちは、はや15年、これと付き合ってきてんだぞ。
あんたが現れるまではなんとか!
とりあえず実績でも出しやがれ。

もうやだ、これ絶対やばい人だ。


私のとこに通う彼女、(野次馬集団はもう飽きたっぽい。そりゃそうだ)

4限が終わる10分前から私をロックオン。視線には気づかないふりを。
起立、礼。

『おい逃げるな』

もうその圧で
私、席から動けません。



みんなが、弁当と菓子パン囲んで朗らかなときを過ごす中
『いまみてなーい きいてなーいよー
だから食べていいよー』
とかふざけたなにかが私の横に居た。

いや、宇宙人の真似して、横目で見てるだけだろ。馬鹿か。

そしてほとんどの時間、私の手元を口元を目元を喉元を凝視している。
手を掴むな。食べこぼしを見るな。近づくな。右から左へ見るな。ああああらちりょすstg壊れちゃうよ。キャパオーバーだら。


最初のミッション、弁当の蓋をあける…
無理。



地獄ですか、ここは。



もう、昼飯抜こうかな。断食。
おいしい食事。私の唯一の趣味。

毎日昼休み潰れるし、午後の授業は栄養不足で頭まわんないし。
つらすぎ。死にたいわほんと

ここで無遅刻無欠席がでるよな。死ぬとか極端かよ。
そんな奴殴り飛ばせ!校長室で食べろ!
4限で抜ければよかった?彼女、追いかけてくるでしょ。


ああああああああ。だりいいい。
君のために、初めて理由言うけどさー
私が「うわあ経口補給おつ〜。生存願望、醜すぎなんですけど笑笑」
って思ってる時点で、他人がどう見て、何を感じてようが
食事姿なんて見たくも、見せたくもないの。気持ち悪いから無理。

わからないよ君には。わかんなくていいから!
だからほっといてー。お願いだー!!!
私なにか悪いことした?迷惑かけた?




『大丈夫だよ』『できてるよ!』
『もう一回、頑張ってごらん』


「やばい、こいつフェチか」ってくらい、執着してくるのに
そんな言葉がなんかすごい嬉しくて。食べてるとこ、嫌わないで次の日も来るところとかになんか愛着とか湧いちゃって、吐いた。


どんどん気力がなくなる私をおいて、かまけてくる君。
班が一緒とかペンが同じとか些細なことで、死ぬほど喜び回る君。の視線の先には死にそうな私。

なにこれ。
いやなにこれ。

「え?壁ドンしてくれたら?お昼は?委員会で食べようかな?
つまり??久しぶりの…!!!」

(あ、委員会一緒にされてた〜)

(誰かたすけてーー。)


てかそもそも、人に構われるのも、手が触れるのも、文字見られるのも、喋ってとか言われるのも、全部無理ですからね。麻痺してるよ。



クラスの違う幼馴染にまで噂は届き、
「はは、、それは災難だね、、頑張れ、、」と見捨てられる始末。


「いやあ、ほんと生きづらい世ですねえww」

『…は?』
『一緒に成仏しよっか!』




ーー
正直、あれは何だったのか今でもわからない。
小悪魔と呼ぶには、悪魔すぎる。相手、中学生ぞ。
散々振り回されて、本当に彼女は私が好きだったのかさえ知らない。

遊びの誘いもついには全て断った。彼女が、住所知らなくてよかった。
数少ない友達が、個人情報保護に積極的なノリの悪い奴らで、ほんとよかったー!!!


卒業してからは、メッセージがときどき来るくらい。


ーー
今も変わらずひとりで食べてるけど
ときどき思う。

「ご飯の時一緒にいてくれて、普通に嬉しかったな。

…いや、嘘。ないわ。
今後誰かに見つめられて食べるなんて、死んでもないわ。」


もっといろんな環境を知りたい!!