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年の初めに、ランニングウオッチ考

私がGPSと心拍計つきの時計を使うようになったのは、ランニングを始めて2, 3年経ったときからです。元々はハーフマラソンを走れるようになるとも思わずに始めたランニングの距離が少しずつ伸び、初めて挑戦することにしたフルマラソン。30km過ぎで完全に足が止まってしまい、スタッフの人に心配されながら目標より1時間以上遅いタイムでどうにかゴールにたどり着く、という散々な結果でした。体力不足と筋力不足に加え、自分の持久力に見合ったペース配分ができていなかったのだと思います。その時に、GPSで距離とスピードを把握するだけでなく、体調や疲れの目安として心拍数を測る必要があると感じたのです。

以来、ある程度の距離を走るときや、短い距離でもペースを上げて走るときは、ほぼ毎回ランニングウオッチで計測しています。走る上で欠かせない道具です。

ただ、その一方で「自分の体のことなんだから、機器に頼らずもう少し自分の感覚でペースや心拍を掴めるようになれないだろうか」という気持ちもずっとありました。ランニングウオッチの威力は十分にわかるのですが、完全にそれに頼り切ってしまうことにちょっとモヤモヤ感が残るのです。

でも残念なことに、私は自分の体に対してかなり大雑把な感覚しか持ち合わせていません。走っているとき、「今はどれぐらいの力を使っているか」という自己判断とそのときの実際のペースや心拍数が一致しないことがあるのです。特に心拍数については、さほどスピードを出している訳ではなく呼吸の具合も全然平気なのに、心拍数だけがかなり上がっているということが時々起こります。

長距離を走るとき、予想以上に心拍が上がっている状態が続くとエネルギー切れにつながりかねないので、スピードを落として心拍数を下げるようにしています。このような感覚と実際のずれを、データは示してくれます。だから、ランニングウォッチで自分の走りや心拍数を客観的に見ることができるというのは、体調を管理してトレーニングの効果を上げる上でとても効果的だと思います(もっとも、ランニングウオッチも絶対のものではなく、「どう考えてもこれはおかしい」という数値を出してくることがあることも、書いておくべきでしょう)。

ただ、この考えを推し進めると、ランニング時のデータをどんどん詳細に計測していこうという方向に向かって行きます。実際、近年は、シューズに小さなクリップのような器具をつけて設置時間や上下動などを測るSTRYDという器具や、シューズ自体にデータ計測の機能を持たせたものなどが販売されるようになってきています。また、ガーミン のランニングウオッチの上位モデルは、日本で販売されるものは薬事法の関係で機能がオフにされていますが、海外では血中酸素飽和度を計ることができるようになっています。

私は休日に趣味で走る程度の平凡ランナーで、最近はきついトレーニングを重ねてタイムを伸ばすよりも、体の使い方や呼吸の仕方を工夫することで上手に走れるようになっていけないかということに興味を持っています。そうした視点で見ると、データを活用することで走り方を改善していけるかもしれない、というのはとても魅力的です。特に血中酸素飽和度には興味があるので、ガーミン の時計で日本でもそれが使えるようになるならば、すぐにでも試してみたいと思っています(それなりの値段はします。手頃なレンズを付けたバルナックライカが入手できるぐらい。どちらにするかと言われたら、かなり迷います)。

でも同時に、機器に頼りすぎることにはどうしても抵抗があるのです。「データを活用して走ること」はある程度の慎重さをもってやらないと「データに振り回されること、データに走らされること」につながりかねないという思いが、どこかにあるのかもしれません。

そんなことを考えているうちに、「たまにはランニングウオッチに頼らず走ってみよう」と思いつき、試してみました。計測はしつつ、走っている最中にはペースも心拍も確認しないようにというランです。何度も走ったことがあるコースなので距離は大体の目途がつけられます。ただ、時間が限られていたので5分ごとの時計の振動は普段通り残すことにしました。

途中、習慣でふと腕を上げて時計を覗き込もうとするたびに、今日は違うんだと思い出しながら走りました。後で履歴を見ると、結果的には普段とあまり変わらないペースで走っていました。ただ、心拍数は通常よりも少し高め。時計の数値を確認しながらだと、心拍が高くなりすぎないようにスピードをコントロールすることになりますが、そのストッパーがなかったからでしょうか。あと、時計を見ないランは、気にするものが減った分いつもより少しだけ自由度が増したように感じました。

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データをうまく使いつつ、計測器なしでも体の具合やスピードを掴めるよう感覚も磨いていく—1年で習得できることではなさそうですが、これからの大きな目標にしたいと思います。


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