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ラン x ローライ

ローライ35Sが修理から戻ってきて、この小さなビンテージカメラとランニングを組み合わせて使っていく準備が整いました。どんなことをしていきたいのか、いちどしっかりと書いておきたいと思います。

私がローライ35Sを使い始めたのは十数年前です。小ささとデザインに一目惚れし、状態のよさそうなものをしばらく探して入手しました。うちには、少し遅れて入手したローライの二眼レフ、ローライフレックス2.8Cもあります。こちらはローライ35Sよりもずっと大きくて重いですが、使うのが楽しく、うまく行くと素晴らしい写りを見せてくれるカメラです。

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どちらのカメラも気に入っていて、外出の際に持ち出し使っていましたが、当時は山歩きなどはしなかったので、街中や旅行先などの写真が主でした。

一方、私がランニングを始めたのは約10年前。それまでにも何度かトライしたことはありますが、三日坊主で終わっていました。それが、スマホのランニングアプリで距離や速さを測るようにしたら、素人なりに少しずつ長く、速く走れるように伸びていくのが面白くて段々と習慣づいていきました。

以来、熱心さや頻度は時期によって差があるにせよ、どちらも継続してきました。でも、このふたつを組み合わせようという発想は浮かんでくることがありませんでした。それがなぜ1年ほど前に結びついたのか。改めて考えてみると、3つの要素があるように思います。

まず、記録向上という点で自分があまり真面目なランナーではなくなったこと。凡ランナーながら少しずつ伸びていた記録が大きな壁に突き当たり、もう簡単にはタイムが縮まないことを実感したとき、よりハードなトレーニングをするかフルマラソンと違う方向に進むかを考えました。そして私は後者を選び、ウルトラマラソン やトレイルランの大会にたまに出るようになりました。フルマラソンの大会にも年に一度は出ますし、参加するからには最善の走りを目指すというところは以前と変わっていません。でも今は、普段のランニングでもスピード練習に向いた場所よりも気持ちよく走れる道を好んで走っています。すると、以前はあまり意識しなかった季節の変化や雲の様子など、周囲の環境に対する感度が少しずつ上がってきたような気がします。

次に、上に書いたこととも一部重なりますが、ウルトラマラソンやトレイルランを始めてから、日常でも長い距離を走ったり、山や海辺などを走ったりする機会が格段に増えました。最近は、時間が十分に取れれば「走りながら散歩する」という感覚で20-30kmほど、なるべく車などが少なく緑が多い場所をランニングしています。自然の中を長い距離移動しているとき、特にくつろいだ「散歩感覚」で動いていると、はっと目を惹かれる景色に出会うことがしばしばあります。そうした瞬間を、スマホだけでなく自分の気に入っているカメラで写してみたいという気持ちが、だんだんと芽生えてきました。

そして最後に、ローライ35Sが故障したことです。当時はどちらかと言えばデジカメに気が向いていた時期だったので、残念だと思いつつすぐに直すことはしませんでした。でも、使い慣れたカメラを持ち出せなくなって「ロストした感じ」はどこかで抱いていたのだと思います。その後フィルム代がどんどん高騰していき、フィルムカメラを使い続けていくか手放すかどうしようと、自分にとってのローライ35Sやローライフレックス2.8Cの価値や使い道を真剣に考えなければならなくなりました。そのとき、「タイムよりも走る心地よさ」というランニングのスタイルと、「デジカメの簡単さや鮮明さよりも写真を撮る楽しさ」というローライでのスナップ撮影の特徴が、ぴったり重なることに気づいたのです。

私が行いたいのは、ランニングやハイキング(時にはサイクリング)の中で心惹かれた景色を、これまで長年付き合ってきたローライ35Sやローライフレックス2.8Cで写し取ることです。どちらのカメラも、速写や連写したり「コスパ良く」写真を撮ったりすることには全く向きません。でも、それでいいのです。記録のための写真はスマホに任せ、ランやハイクも、写真を撮ることも、自分なりに楽しんでいけるスタイルを少しずつ作り上げていこうと考えています。

私は走るのも歩くのも自転車に乗るのも好きですが、特にランニングは、歩くよりも時間あたりずっと長い距離移動することができ、自転車よりもずっと手軽に小道に入ったり岩場や砂地などの不整地を進んだりすることができます。自分のペースで20~30kmほどは体に負担をかけ過ぎることなく走れるようになったいま、その機動力を生かして心地よい景色と出会う機会を増やし、フィルムに収めていきたいと思います。ローライフレックス2.8Cは、大きさも重さもある分、ローライ35Sほど気軽にランニングに持ち出すことは難しいですが、トレイルランを始めてから山歩きの力がいくらかついてきました。ハイキング、トレッキングに持っていき、じっくりとピントを合わせて景色を写し取りたいと思っています。

とはいえ、私にとってランニングやハイキングの際に写真を撮るのはあくまでメインではなく、サブです。写真を撮るために走ったり山に登ったりするのではなく、ランニングやハイキング、山歩きそのものをまずは楽しみ、その中で写真を撮っていきます。だから、ローライのカメラを持って行っても数枚しか写真を撮らなかったり、あるいはまったく撮らないということがあってもいいと考えています。無理にシャッターを押す機会を探し出すのではなく、ここだったら写真を撮りたい、ランニング中にいったん足を止めることになっても撮りたいと感じる場所で、シャッターを押したいと思います。フィルム1本を撮り切るのに数か月かかるかもしれません。でも、それでいいのです。そうして撮り終えたフィルムは、きっと現像から上がってくるのがとても楽しみになるでしょう。

まったく違う地点で始めた2つの趣味が、10年という時間を経てこうして結びついたことは、純粋にうれしいですし、ワクワクします。この組み合わせが、自分のランニングやハイキングに、そして写真にどんな影響を与えていくのかはまだわかりません。張り切りすぎるといずれ飽きてしまったりするかもしれないので、ゆったりと楽しんでいこうと思います。


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ローライフレックスとローライ35シリーズの各機種の違いや使い方などが書かれた本として、『使うローライ』があります。ローライフレックスの話がメインですが、ローライ35についても記されています。

絶版になっているようなので、探す場合は中古本を見てみてください





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