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指サック

事務員なので指サックが必須だ。
年を取ったからではない。
若い時から必要だった。
大学を卒業して就職して
隣の同僚が指サックを使っていたので
試しに使ってみたのだが
紙をめくる際のあまりの効率の良さに
手放せなくなった。
その頃の指サックはひとつの指全部に被せる
オレンジ色のごっついものだった。
(今でも売っていると思う)

指サックをしていない私の指は
サラサラツルツル紙を滑ってゆき、
少しの引っかかりも掴めない。
まるで刀を持っていない武将のように
弱気になり、仕事の効率も悪くなる。
多分指サックは私の刀なのだろう。

初めて使った時から何十年も過ぎたが
当然今でも私は指サックを愛用している。
現代の指サックは半透明でラメが入り、
指先だけはめるので可愛らしい。
はめてから伸ばしたり丸めたりして
指とフィットさせて使いやすくしているので
無くした時はかなりのショックである。
しかも小さいので結構無くなる。

先日休み明けに職場に来たら
指サックがいつもの置き場になかった。
2個あったはずなのにひとつも無く、
これは誰かが嫌がらせをしたのかと
思ったのだが、
私がどのくらい指サックを必要としているか
誰も知らないはずなので、
そんなちまちました嫌がらせ思いつかんよな、
と考えなおした。
きっと私が何処かにやってしまったのだろう。

無くしてしまったと思った指サックは
しかしながら突然ポケットの中とか
カバンの中から出てきたりするので、
またいつか会えると信じて
新しい指サックを出した。

そういえば郵便局に行った際に
受付してくれた職員さんの指サックは
爪のところにリボンが付いていた。
可愛かったので、今度はそのタイプにしてみようかと思っている。
調べてみると、他にも、お花が付いているものとか
ハニワ(!)になっているものとかいろいろあって
見ているだけでも楽しくなってきた。

私と指サックとの付き合いは
まだまだ続きそうだ。


(了)




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