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コーヒー農園の体験価値

こんにちは、川野優馬です。

先月〜今月にかけて、インドネシアのバリ島でコーヒー農園ツアーを開催してきました。
自分達が借りている農園、自分達が建てた精製所と宿泊ヴィラ、そして拠点のカフェ。自由に過ごせる自分達の場所だからこそ、見学だけじゃなくて味わったり一緒に作業したりと、コーヒー生産をまるっと体験できる2泊3日のツアーをつくりました。

そして今回30名ほどの方にご参加いただき、めちゃめちゃいい体験になったと思うのですが、このnoteでは何で農園の体験が大事なのか、現地の課題含めて書いてみようと思います。


コーヒー産地で生産を始めるまで

僕は2014年からコーヒー屋を東京ではじめました。シングルオリジンコーヒーといって、農園ごとによって分けて仕入れるコーヒーの専門店です。同じコーヒーと言っても産地が違えば味が違うし、収穫後の後処理である精製や、農作物としてのコーヒーチェリーの品種によって大きく風味は変わっていきます。
そんな、農作物としてコーヒーを扱うお店をやってきました。

そんな中、縁あって2016年に人生で初めてコーヒー農園を見にバリ島にいきました。僕が訪問させてもらったコーヒー農園は、コーヒーの木を育てている畑と、裏にそこからコーヒー生豆にするまでの精製を行う設備がありました。
初めて見るコーヒー農園の景色、そして初めて食べるコーヒーチェリーの味はとっても印象的で感動しました。ただ精製の様子は思ったほど綺麗なものではなく、本や動画で精製について知った程度の僕でも改善できそうな所だらけでした。

2016年に初めてバリ島のコーヒー農園に行った時の様子

その流れで農家さんに、コーヒー豆を買い取るから僕が思う精製レシピでつくってくれないかとダメもとで依頼してみました。結果はOKで、英語で僕がまず精製工程表をつくり、それを現地のメンバーにインドネシア語に翻訳してもらい、その工程表をもとに、発酵時間、徹底した水洗、乾燥の状態など改善点を盛り込んだ新たな精製を試してもらいました。

翌年できあがったコーヒーをサンプルローストしてテイスティングしてみると、びっくりするほど美味しくなっていました。なんとなくイメージは、どんより暗くてはっきりしない味わいだったコーヒーが、コスタリカのスペシャルティコーヒーのように、りんごや紅茶のような上品な香りとみずみずしさ、甘さに満ちていていました!
僕は、こんな素晴らしいコーヒーを身近なアジアでつくれるなんて最高だと興奮して、もっともっとアジアでおいしいコーヒーを生産できるのではと思い、クラウドファンディングで2018年にバリ島に精製所をつくり、ベトナムの農家さんとも連携したり、ラオス、台湾、ミャンマー、ネパールといったアジアの生産地をまわりながらスペシャルティコーヒー生産を進めてきました。

ミャンマー北部 Pyin Oo Lwinの農園に行った時の様子


コーヒー生産の仕事の難しさ

実際にコーヒー精製をやってみると、2つの課題に気づきました。


1つは、気候の変動などの中で毎年安定した品質を保つ難しさです。

時には日照りが強すぎてコーヒーの木に実ったチェリーが日焼けを起こしてしまって、皮と種が貼り付いて精製できないチェリーになってしまったり。収穫期は基本的に乾季なのですが、週に1回雨が降るようになり、木の上のチェリーが割れてしまったり、乾燥中のコーヒーが乾かなくなったり。



僕らは自分達で畑を借りてコーヒーの収穫からやってみたのですが、それだけだとコーヒー豆の販売としては量が少ないため、周りの農家さんからもコーヒーチェリーを買わせていただいていました。
完熟のチェリーを持ってきてもらうと、1kgあたりいくら、という感じで熟度に応じた価格設定をして、なるべく熟したチェリーを集めていたのですが、2021年からCOEという国際品評会がインドネシアで始まったこともあり、コーヒーチェリーの仕入れ価格は僕らが精製所を始めた時から2~3倍になっていきました。

これは農家さんにとってはとてもいいことで、生産者の利益をもっと増やしたいと思う僕らとしてもいい流れなのですが、これだけ急激にコストが上がると精製した後のコーヒー豆の価格設定も大きく変化していきます。それが2つめの課題のビジネス的な難しさ。

もっと人件費が安い国、もっとチェリーの売買価格が低い生産地で、バリ島よりも標高や品種に恵まれていたら、グローバルの市場でバリ島の生豆を売ることはとても難しくなってきます。

もちろん輸送コストや産地のイメージなどもあるので地元で売ることは継続していけるし、僕らのコーヒーは2021年にはNational Winnerも受賞するくらいは品質を保って生産できていたので、それほど深刻な問題にはなっていなかったのですが、これからもっと安定させるにはもっとたくさんコーヒーをつくっていくことが必要にもなり、品質x量でコーヒー生豆を販売していく仕事だけではリスクがあるとも感じました。


生産地の体験価値

一方で、僕がはじめて農園に行った2016年からこれまでの間、もう50回くらいコーヒー農園に訪問してきました。どの農園も景色が素晴らしく、そして店をやるほどコーヒー好きな僕にとっては、赤く熟したチェリーがある農園やそんなチェリーからコーヒー豆にしていく精製所はもはやパラダイスでした。

バリ島の農園


その中でも特にバリ島の北部、バトゥールのエリアの景色は素晴らしく、僕らが精製所を作った場所からも、目の前にバリ島3大聖なる山の1つであるバトゥール山が迫力満点で見えて、パワー溢れる場所でした。

バリ島 バトゥール山の景色


コーヒー農園でコーヒーをつくる体験自体が、コーヒー農園の一番の価値かもしれないとその時思って、そこからコーヒー農園に滞在しながらコーヒーの収穫、精製をみんなでしていくツアーを形にしようと決めました。

精製所の横、まさに森の中に宿泊キャビンをつくって、そして2019年に一度、コロナ明けて2023年に2回目のツアーを開催しました。

農園の中に完成したヴィラ


コーヒーと触れあう

農園ツアーは大成功だったと思います。

初日は空港で落ち合い、そのまま車で産地へと向かいました。気温の低い農園で生育途中のコーヒーチェリーの様子を見ながら、品種や農園の整備、収穫期などのお話をして、夕方ごろカフェに到着。


翌日は朝から、チェリーが実ってる低標高の農園に行って時間が許すまでみんなで収穫。コーヒーチェリーの味を味わってみたり、農家さんに摘み方を教わってみたりと、農園を満喫しました。
午後はみんなでチェリーの水洗、熟度選別、皮むきをして、コーヒーを発酵タンクに入れたら隣でBBQ。コーヒー好きな方が集まっているのもあって参加者同士急速に仲良くなれたのもよかったなと思います。

最終日は、発酵が終わったコーヒーの水洗と乾燥台に並べるまで。


農園に泊まるという非日常な時間を過ごしてもらえただけでなく、コーヒーチェリーを収穫してコーヒー生豆にしていくまでの工程をすべて体験できて、農園の仕事の意味や農作物としてのコーヒーの存在を感じてもらえたと思います。

何よりも、農園の体験を通してコーヒーのことがより好きになってもらえたんじゃないかなと思います。



農園ツアー今後も開催します!

今年は標高高いエリアで収穫が全盛期を迎える6~7月にも農園ツアーを開催する予定で、まだまだご参加募集中です。ご興味ある方がいましたらぜひ一緒にコーヒー農園にいきましょう!!(来年にもまた5~7月ごろに開催します)


川野優馬


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