見出し画像

緒方カープの将来設計~投手編~

前回の野手編に続き、今回は投手について、緒方政権にてどのような将来設計がなされているのかを、以下にて解き明かしていきます。

※成績は2019年前半戦終了時のもの

1.現状整理

まず先発投手の現状を整理したものが表①となります。

ここでは、一軍で先発を務めた投手の中で、消化イニング数上位6名をローテーション投手として表し、それ以外の投手をその他と表現しています。

大瀬良大地・床田寛樹・ジョンソンという計算の立つ3名の投手に加え、先発再転向後は球威が増し新境地を開拓しつつある九里亜蓮、ムービングボールでゴロを打たせる投球が持ち味のアドゥワ誠がおり、他球団のローテーションと比較しても優位に立てるような布陣ではないでしょうか。

※他球団ローテーション投手WAR比較(先発登板数上位6名)
広島(8.6) 巨人(7.9) 横浜(7.5) 阪神(8.5) 中日(2.3) ヤクルト(7.2)

6番手には若手のお試し枠として、山口翔が起用されていましたが、リリーフで好投を続ける遠藤淳志に白羽の矢が立つ日もそう遠くはないでしょう。

このローテーションで特徴的なのは、年齢的なバランスで、6人中3人は25歳以下の若手投手、2人は肉体的精神的にも今が全盛の28歳、1人はベテラン格の35歳と、若手の多い布陣となっています。

実力があるとはいえ、身体の出来上がっていない20歳や21歳の投手が、平然とローテーション入りしているのはいかがなものかと思いますが‥

続いてリリーフ陣の現状を整理したものが表②です。

5月までは、フランスア・レグナルト・中村恭平というパワー型左腕3枚と、経験豊富な一岡竜司や中崎翔太、何でも屋の菊池保則という右腕で構成されるリーグ屈指のリリーフ陣でしたが、離脱者が相次ぎ、現状はベストメンバーではないという状況です。

Aチームの年齢を確認すると、30歳前後で固まっており、今が最も脂の乗っているであろう選手たちで構成されています。

Bチームは、ボールの勢いのあるものの引き出しが少なく経験不足な若手投手や、菊池や今村猛といった経験豊富な投手で構成されており、年齢構成だけを見れば、非常にバランスの良い布陣であることが分かります。

ただ内情をもう少し詳細に見ると、2015年からクローザーを務めてきた中崎は勤続疲労からかスピードの劣化で二軍調整中で、昨年からの登板過多の影響もあってか開幕からいまひとつのフランスアの存在など、登板管理の問題が未だ残存したままです。

2.将来設計

ここからは、本題である将来設計について考えていきます。

まずデプスを確認していくと、先発陣については、若手投手の数が多く、投手を育成していく上で、先発として長いイニングを放らせることを重要視していることが窺えます。

リリーフ陣については、25歳以上を見ると、先発にトライさせて上手くいかなかった選手を起用しているように見えますが、それより下の年代では、若手投手の数の多さからか、最初からリリーフとして起用されるようなケースも多く見られます。

以上より、若手を先発起用し、その争いに敗れたものはリリーフに転向するという理想的な形が出来上がっているように見えますが、もっとその内情を深掘りして見ると、決して理想的とは言えないことが分かってきます。

それは、現状整理の部分でも述べましたが、アドゥワや山口のような20歳前後の若手投手が二軍ではなく一軍の先発ローテーションに入っているように、将来を担っていくような投手が早々に一軍で起用されるようなケースが増えている点です。

この事象の根本的な原因としては、過去3年で活躍した投手が続けて活躍出来ていないことが大きいでしょう。

薮田和樹・岡田明丈・今村猛なんてのはまさにこの例に当たりますが、もちろん各球団から研究されて攻略された側面もあるでしょう。しかし、無駄に引っ張り過ぎたり、投げなくていいような場面で起用されたりと、酷使によるパフォーマンスの劣化という側面も考えられるように思います。

そのために、本来先発ローテーションに入ってこなければならない投手が二軍で燻る事態を引き起こしてしまい、有望な20歳前後の投手が早くも一軍で先発ローテの一角を任される事態に繋がっているのでしょう。

オリックスの山本由伸のように圧倒的な実力があり、二軍で何もやることがない状態であれば一軍での起用を行うことは構わないと思いますが、広島で一軍に昇格している投手は、まだ身体が出来上がっておらず、二軍でさえローテーションを回り切った経験のない投手ばかりで、二軍で体づくりや経験を積むことにいそしむ必要がある投手ばかりではないでしょうか。

このような起用では、一時的には良くとも、もう少し長いスパンで見るとそのポテンシャルを最大限生かすことが出来ず、最適な起用とは成り得ないでしょう。

そして、投手運用自体が改善されているわけではないため、過去の前例のようにまた使い潰す危険も大いにあるという状況は変わらないわけです。

このような起用が続くと、一軍クラスの投手がどんどん削られていき、将来的にまた暗黒時代のような投手陣の層へと逆戻りでしょう。

投手に関しても、中堅からベテランの投手が、きちんと一軍で量(投球回)をこなすことが、有望な若手投手をプロテクトすることに繋がり、戦力の連続性が保たれるため、中堅からベテランの投手もある程度は確保しておかないと、健全な運用は不可能です。

今の広島には、この辺りの層の投手が不足しているために、若手を動員する羽目になっているのでしょう。

以上より、投手の部分を見ても、若手を一軍で積極起用している分、将来設計がきちんとなされているように見えますが、実情はそんなことはなく、むしろ若手投手が早々に潰れかねない起用になっていることがお分かりいただけたと思います。

3.まとめ

・現状整理
先発陣の実力はリーグ屈指のものがあるが、20歳前後の若手投手がローテ入りしているのは‥
リリーフ陣の年齢バランスは素晴らしいが、酷使の影響からかパフォーマンスを落としている投手もおり、登板管理の問題も存在
・将来設計
若手にまずは先発を経験させ、そこからリリーフへと移行していくような流れが出来上がっているものの、その若手が二軍での培養期間をすっ飛ばして早々に一軍ローテ入りしているケースが目立つ
酷使の影響からかパフォーマンスを維持できない投手が多く、中堅からベテラン層が空洞化しつつある
そのため、空いた枠に有望な若手が収まる形となっているが、運用改善がなされないようだと、投手陣の層は薄くなる一方であることから、将来設計きちんとなされているとは言い難い

以上が本noteのまとめとなります。

現在の20歳前後の投手を見ると、アドゥワ・高橋昴也・山口・遠藤といったポテンシャルにあふれた投手が多く、野手のコアとなりそうなのもこの世代であることを考えると、彼らをきっちり本格化させることが次の黄金期を築くために必要なことでしょう。

そのためにも、今からでも遅くないので、各投手の負担を最小限にするような投手運用を行い、目先の勝利だけでなく、新たな広島の礎を築くことへも尽力してほしいと思います。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #投手 #将来

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?