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【嘘】雨の中の炭酸

帰り道。
突然雨が降ってきた。傘なんて持ってきていない。
仕方がないのでしばらく雨宿り。やむまで待つことにする。

待つこと数十分。

雨は一向にやむ気配はない。
街灯やら車のライトやらが水たまりに反射して、夜の街はギラギラと光っている。
もう諦めて、濡れながら帰ることにする。
走ればなんとかなる距離だ。

雨はどんどん強くなる。
気付けばもう、これ以上濡れようがないほどびしょ濡れだ。
こうなったらのなら走る意味もないし、雨に怯える必要もないし、この状況を楽しんで、のんびり帰ろう。

住宅街にひっそりと自動販売機が。
雨を弾きながら、プカプカと光っている。
雨飛沫で商品も良く見えない。

「こんな日はコーラが美味しいよ」
自動販売機に話しかけられた。
お勧めされたら、断れない。
さっそく缶のコーラを購入。

雨の中、びしょ濡れになりながらコーラをあける。
自動販売機から勢い良く吐き出されたコーラは炭酸を噴き出し、溢れかえる。
全身びしょ濡れなので構うものか。
そのまま勢い良くコーラを呑み込む。
濡れた身体中が炭酸で泡立つようだ。

心なしか、光る街もシュワシュワとしている。
知らなかった。こんな日は、コーラが美味しいんだな。


ありがとう