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私は人より鈍感で我慢強くてタフなだけ。

大学1年生の頃、担任補助として小学1年生のクラスを持ったことがある。
ただのボランティアで、夜間学校が始まるまでの間、平日ずっと小学校に居た。
授業をする訳では無く、ただ小学生と勉強したり絵を描いたり遊ぶだけの時間で、
友達からは「その時間をアルバイトしてお金を貰ったら良いのに」と言われていた。
ボランティアを受け入れてくれた校長先生は「教員を目指したいという志が伺える」と言われたが「教育に携わる将来は考えていない」と答え、ハテナマークを浮かばせてしまった。

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小学1年生はまるで幼稚園だった。
そう言い表すしか無いほど、本当に手を焼いた。
小さい怪獣達かと思えた。
楽しかった思い出は山ほどあるが、一番は記憶にあるのは「いじめ」の話だった。

担任の先生は、全学年保護者に向けられた学校からのお便りを、「お家の方に渡してね」と伝えていた。
漢字が沢山ある中で、最近習った平仮名とカタカナを読み、疑問に思った生徒が大きな声で尋ねていた。

「せんせー、イジメって何ですか?」

一人が尋ねると周りも同調して、イジメって何?と好奇心が膨らみ大きな疑問怪獣が出来上がった。

私と担任の先生は「そうか、この子達は知らないのか」と初めて教えられた。
そして、教科書に載っていない勉強を教える意味の難しさを初めて知った。

「人の嫌がることをしたりする事ですよ」
「じゃあ、カエデさんの事だね」

(いやいやいや、個人名あげるのはやめてくれ)

「カエデさんは皆とお友達で仲良いじゃないですか。んーと、人の物を取ったりする事ですよ」
「えーやっぱりカエデさんだー」

(いやいやいや、これ、これがイジメみたいなものだから!!!)

「イジメというのは一言で言うと難しいけれど、
まだこの言葉を知らないならきっと今はイジメは無いのだと思いますよ」
「・・・難しいなぁ」


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学校の先生はこういった事も教えていたのか、と学んだと同時に、先生の言っていた言葉が引っかかった。

「イジメという言葉を知らないなら、
きっと今はイジメは無い」


私が初めてイジメという言葉を耳にしたのは中学1年生だった。
というか、その時にしか私の日常で耳にしたことが無い。
その時、私は友人に聞いた記憶がある。
「ねぇ、イジメって何?」

そう尋ねると友人は、ギョッとした目でこちらを見つめ、「本当に知らないのか」と尋ねてきた。

私の中では
漫画やドラマを通して何となくは知っていたが、まさか現実にもあるものだとは思っておらず、
「現実で言うとイジメって何?」と言う様な意味で質問しただけだった。

まさか教科書を破られたり、物を勝手に捨てられたり、服を切られたり、怪我を負わせたり。
まさかそんな馬鹿馬鹿しい事が起きるのか、と。


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ありがたい事に、私はいじめを受けたり、いじめたりを経験せずにこれまで生きてこれた。
大学生の時、仲の良かった子が昔はいじめられっ子だったと明かされた時は、
久しぶりにそのワードを聞いたなと第一に思い、その後に大変だったねと伝えたが、
そこまで苦労を理解してあげられなかった。


社会人になってから中学からの友人にイジメの話を振ったことがある。
「私の人生でイジメなんて目の当たりにしたことが無い」と。

そうすると友人は答えた。
「知らないなら仕方ないけど、中学1年生の頃一人学校を辞めた子がいたでしょ。あの子はいじめられてたんだよ」

私には青天の霹靂だった。

「確かに辞めた子は居たけど、いじめられてた?私普通に話してた記憶あるけど。確かに一人で居ることはよく見たけど、本読んでたよね」

「まぁ、知らないなら人生平和だよね」


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私自身イジメとは思ったことが無いが、
高校1年生の頃、先輩に目をつけられていたけれど、「そんなものだ」と思い込んていた。
大人になってから同期に聞くと、あれは酷い扱いだったから良く耐えてるなと思っていた、と言われた。

楽観的な、ポジティブな性格だからか、
「この子には何を言っても受け流すだろ」と酷い言葉を言われた記憶もある。
遊び半分で言っていたのかも知れないが、普通に傷つく言葉だった。
でも、別に病んだりはしなかった。

きっと私は人よりも心がタフなんだろう。
きっと私は人よりも鈍感なんだろう。
きっと私は人より我慢強いだけなんだろう。


そう気付いた時、私は
周りへ頼り方や、相談が下手な子なんだろうな、と思った。
そう、下手。
きっと、この性格で無ければ、典型的ないじめられっ子だっただろう。

現状、会社であまり良い雰囲気では無い。
私の不手際もあるだろうが、
良い大人になって、私より年上なくせに考え方が小さいなと、ガキだな、と思うことがよくある。
周りの社員も心配して声をかけてくる程だ。
それでも私は弱音を吐いた事は少ない。

「そういう性格でそういう人生を歩んできた人と初めて出会ったから、
まだ対処方法が分かっていないだけ」

そう思っている。

これは、下手なんだろう。
もっと騒げば良いとも思う。
「私こんな扱いされてます、酷いと思いませんか?」
そういうときっと、少なからず多少は動くだろう。
というか上司は、気付いていても私が言わない限り動くつもりは無いだろう。



今、考えている事は
会社を辞める事で、別に部署異動でも何でも無い。
辞めるは逃げる、だとも思われるかも知れないが、
そんな事、随分前から考えていたので、
私的には逃げでは無い。

それで良いのか。
それが良いのか。
まだ分からないが、
やりたい事がある以上、こんな小さな事で足を止めるのは止めようかと思う。





チョコレートに牛乳



あの時小学1年生だった彼らは今、高校1年生なのかと思うと、
時が流れるのは早いなと思う。

あの先生が今どうしているのかは知らないし、
正直名前も忘れたが、
確か社会人2年目だったかと思う。
今では中堅社員だろう。

あの先生は、強い心の持ち主では無かったかの様に思えるが
人の気持ちを真正面から聞いてくれ、相談したいと思わせられる女性だった。


同じ社会人だ。私も負けてられない。


いつまでも、どこまでも、ポジティブな性格に育ててくれた両親には感謝だ。



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