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アクセサリーを探して⑤

「来てくれてありがとう。
メンバーに相談したら、ファンじゃないなら来てくれない可能性あるかもよ、って言われてたから不安だったんだ」

そう言われた直後、彼と待ち合わせをしているのは本当に私で間違いないのか、を自分自身に問いただしていた。



Cメール



あの夜、初回限定版のCDをあげると言われた後、
「迷惑かな?」
とまた子犬の様な目で首を傾げて見てきたが、「貰えるなら貰います」
という可愛くない返答をした。


「あ、だったらカフェとかで待っててくれるかな?俺、急いでCD取ってるから。ね?」
そう言われたが、丁重にお断りをした。

理由は3つあったが、2つまで言うようにした。

1つ目は、緊急事態宣言中で20時には店が閉まる為、もう間もなく閉まる事。
2つ目は、急いで行って怪我でもされたら困る事。
3つ目は、まぁ何というか申し訳ないけれど、別にそこまでして欲しいわけでは無い事だった。



「あ、そっか閉まっちゃうもんね」

相変わらず、女性と話しているかのような言葉遣いと声の高さで、余所行きの声しているんだろうけど、聞き取りやすいなぁと思っていた。
頂いたカイロの様に、話している時はほんのり温かい気持ちにさせてくれていた。
これが彼の特性なんだとしたら、”世の中の方々にもっと知られたら良いのに”とまで思わずにいられなかった。


「申し訳ないけれど、俺の仕事と今の立場上、急にスケジュールが決まる事もあって、この日に会おうよって約束していたら破っちゃうかもなんだよね」

そう前置きを置かれた後

「だからもうさ、俺の連絡先もう一回教えるから、時間取れるかもって思ったら連絡しても良い?」

と、普通に言われた。

そう、普通に。
まるで仲の良い友達同士が「携帯変えて連絡先消えたから、もう一回教え合おうよ。な、良いだろ?」の様に、
ごく普通に、ごくごく普通に、聞いてきた。


んんん?
貴方、芸能人で、それも今をトキメクスペシャルアイドル、SNOWMANの阿部亮平さんですよね?
忙しいからって、そんなに簡単に?


瞳孔が開き、もしかしたら聞き間違えたかも知れないと耳を疑い、
喜ぶなんて事は全く無く、むしろ怪しい様な疑いたくなる様な、そんな感情だった。

”ジャニーズってこんなに簡単に連絡先を教えるの?チャラいのか?チャラいんだな?チャ・・・いや阿部さんに限ってそんなこと無い、よね?
よく知らないけど、というか全く知らないけど、そんな感じは全く感じないぞ?”

そう思って空白の1秒が過ぎた後、

「あ、女性に連絡先を突然聞くのって失礼だった?」

ごめんね、そういう常識欠けててさ。
と付け加えられた。




”あ。しっかり阿部さんだわー”と心底納得し、先ほどの感情と疑いは一瞬にして消え去り、落着きを取り戻した。

そして半笑いで「連絡先くらい別に教えますよ」と返答した。


良かったー、と可愛らしく言われた直後
LINEじゃなくて電話番号教えるからCメールでも良い?
と言われ、
”Cメール?”
と思ったが、芸能界はまだLINEが主流じゃないのかも知れないと勝手に納得し、連絡先を伝えた。


「あ、ちなみにプライベートの連絡先ですので」
と言うと、だよね知らない番号だ、と嬉しそうに言われた。

「社用はもう知ってるからね、俺登録してるし」

「え、登録してるんですか?」

「うん、名刺頂いた日に登録しといたから、あの日にメール出来たんだよ」


”・・・マメな人だなぁ”そう思った直後、

「名刺はねマネージャーに渡すことになってるから、その前に登録するようにしてるんだよね。まぁ、渡しても整理整頓出来ない人だからすぐに無くなって困るしね」

私が彼への疑いをかけていた事を察知したのか、弁解をするかのように、経緯を教えてくれた。



彼と話すこともようやく慣れてきた頃、
”寒いな”という感情が戻り始め、カイロだけでは身体が落ち着きをみせなかった。

”・・・立ち話はもういいや”

ファンの子が聞いたら殴られるかもしれないが「寒いし、もう帰りたいんですけど」と伝え、
「たしかに。じゃあ今日はこれで。ごめんね突然声かけて」
と返された。

あの夜は感情の起伏が激しい日だったが、〈初回限定版をあげるという条件を出してくれた〉有難い夜になった。
しかし内心では、阿部さんに顔を覚えられていたほどに、私はこの1年で変わり映えしていないんだな、と少し残念だった。



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件名
初回限定版CDを差し上げる日のご提案
本題
阿部です。初回限定版の話ですが、2月の2週目なら時間取れそうです。
ご都合いかがですか?
折り返しください。
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あの夜から2週間が経ち、日常を過ごしていた私の元に、思い出したかのようにCメールが届いた。

”あ、阿部さんだ”

今どきCメールなんて使う人いないから見過ごすところだったと焦り、休日の連絡で助かった。

阿部さんを"一般人のように見過ぎていることに関して、失礼かもしれない"と思ったので、
次に会うまでにYouTubeを見ようと決めた。

返信は早急に、という人事課の目標の下、
件名を「初回限定版のCDを頂へる日の回答」に変え、
「私はいつでも大丈夫ですが、平日の場合は18時以降でお願いいたします」と返信しておいた。



私はそもそもYouTubeを見る癖は無い。
だからだろうか。
おすすめの動画はいつも猫やホテル系の偏りのあるモノばかりで
数回SNOWMANの動画を見た後は「おすすめ動画」にすぐに変わった。

ただ、見れば見るほど、残り8人のことまで知らず知らずのうちに詳しくなって良かったが、阿部さんに関しては遠い存在の様に思えてきた。
話さなくてもネット情報に誕生日も大学名も、聞いたこと無い情報が溢れていて、
プライベートが無いんだなと、私もYouTubeと同じように知能的に理解した。



2月中旬、明日時間取れますと、18時ころに連絡が来た。
Cメールが届くと、阿部さんだなと名前を見ずとも分かる。
可笑しいけど、非日常的に楽しんでいる私がいた。

初回限定版のCDを渡されたらこれで会う事も無くなるなぁ、と若干寂しい気持ちになりながらも、
まぁこれくらいの関係性が一番楽だな、と私らしく判断して
「明日よろしくお願いいたします」と返信をしておいた。



「来てくれてありがとう。
メンバーに相談したら、ファンじゃないなら来てくれない可能性あるかもよ、って言われてたから不安だったんだ」

そうこっそり話す彼は、薄暗いカフェのテーブル席に一人、ホットのカフェラテを飲んでいた。


「お待たせしてすみません」
と冷静を装いながら目の前に座ったが、内心は”SNOWMANの阿部亮平だ”と
YouTubeを見てしまったがおかげに、意識をし過ぎてしまっていた。

うわーという感情が、1秒ごとに波に襲われ、
何度もまばたきを繰り返し、
気持ちにを落ち着かせる為に、何度もマスクの下で隠れながら深呼吸をしていた。


チョコレートに牛乳


この回で終わらせようとしていましたが、
そもそも何も考えずに書き始めたので、全然終わらない。

どうやって題名と紐づけるか。
いま、最大の悩みの種です。



ちなみにYouTubeで私もSNOWMANを詳しく知りました。

おすすめは「阿部ちゃん先生」

普通にタメになる事もたまに含まれているので、
私の母はSNOWMANが何人いるかも知らないですが、阿部ちゃん先生だけは気に入って見ています。


また、カフェラテですが、
YouTubeの企画でセブンイレブンのカフェラテを飲んで一言みたいな回がありました。
そこから引っ張ってきていて、実際彼が好きかどうかは勿論知らないです。笑

イメージがカフェラテ。





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