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モノボク - モノかき彼女と絵描きのボク -

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どこかの世界、いつかの街で暮らす、彼女とボクの日常を描いた連作です。 実はファンタジーでラブストーリーでもあります。
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記事一覧

モノかき彼女と絵描きのボク _ Day 1

  Day 1 - AM 10:03 -

 彼女の朝は、だいたい遅い。
 根っからの夜行性なので、夜が更けるとともにエンジンがかかり、空が白むに連れて回転数が落ちてくるタイプだ。
 もっとも、ボクらのような仕事をしている場合は、夜行性というのはそんなに珍しいことではない。
 かく言うボクも、普通の勤め人ならとっくに仕事を始めているような時間に目が覚めたわけなので、あまり人のことは言えないの

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モノかき彼女と絵描きのボク _ Day 2

  Day 2 - PM 11:48 -

 彼女の朝だけではなく、夜もだいたい遅い。
 もっとも、朝が遅いぶん昼夜逆転しているだけとも言う。というか、きっとそっちが正しい。
 健康には良くないなぁとは思うものの、ものづくりに携わる人間として気持ちは分からなくもないので、いまだにあまり強くは言えないでいる。

「はい、どうぞ」
「お、ありがっとー」

 先ほどから彼女が噛り付いているデスクの

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モノかき彼女と絵描きのボク _ Day 3

  Day 3 - AM 08:19 -
 
 彼女の朝は、ときどき早い。
 もっとも、『彼女にしては』の注釈付きだけども。
  
「それは仕事? 趣味のほう?」
「わはっ?!」

 今朝は久しぶりに気持ちのいい目覚めだっだ。
 天気もよかったのでそのままベランダに出て無心で筆を走らせていたボクは、その声を聞くまで彼女が後ろに立ったのも気付かず、間の抜けた声をあげながら振り返るハメになった。

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