Yumeno
どこかの世界、いつかの街で暮らす、彼女とボクの日常を描いた連作です。 実はファンタジーでラブストーリーでもあります。
MAGNET MACROLINKで開催されていた、第24回「三題噺」短編コンテスト投稿作品。 https://www.magnet-novels.com/novels/63940 お題:「コーヒー」「グラス」「寂しい」 ================================ 「……んのバカヤローッ」 そんな、嫁入り前の娘が口にするには少しばかりお行儀の悪い言葉を吐き出した代わりに、私はこの日3杯目のビールの残りを一息に飲み干した。 今夜は、彼氏と久しぶ
MAGNET MACROLINKで開催されていた、第23回「三題噺」短編コンテスト投稿作品。 https://www.magnet-novels.com/novels/63483 お題:「ギャル」「蕎麦」「秋葉原」 ================================ 「うーん……」 「どったの、ゆーりん? 便秘?」 五限と六限の間の休み時間。 放課後を前に騒つく教室の自分の席でスマホ片手にブツブツ言っていた私に、目の前に立っていたちえりがとんでもない
私のおじいちゃんは、一言でいうとお茶目な人物で、昔っからとにかく新しい物好きのイタズラ好きだったようだ。 いわく、ビデオゲームが発売された時もいの一番に買ってくると、子供そっちのけで熱中していたとか。 いわく、まだCDどころかフロッピーディスクすらない時代から、パソコン一式を買い込んでは本を片手にプログラミングをしていたとか。 そういうエピソードには、事欠かない人物である。 『ん? これちゃんとうつっとるんか?』 そして、そのおじいちゃんがいま、私の目の前にある
「はぁ~! マンプクだぁ~」 言うやいなや、彼女が後ろに倒れ込み、畳の上で大の字になった。 こんなお行儀の悪いことができるのも、部屋食のある旅館ならでは。なので彼女との旅はもっぱら旅館泊だ。 「そういや、マンプクってどう書くか知ってる?」 所狭しと並んでいた、地のものをふんだんに使った料理の空き皿を眺めながら、ふとそんなことを彼女に問いかける。 「モッチロン! 満たされるに、お腹でしょ?」 「うん。でもね、もうひとつあるんだよ」 興味をそそられたのか上半身を起こした彼
Day 3 - AM 08:19 - 彼女の朝は、ときどき早い。 もっとも、『彼女にしては』の注釈付きだけども。 「それは仕事? 趣味のほう?」 「わはっ?!」 今朝は久しぶりに気持ちのいい目覚めだっだ。 天気もよかったのでそのままベランダに出て無心で筆を走らせていたボクは、その声を聞くまで彼女が後ろに立ったのも気付かず、間の抜けた声をあげながら振り返るハメになった。 「ぁー、びっくったー……おはよう」 「ん、おはよ」 とうの彼女は右手を上
Day 2 - PM 11:48 - 彼女の朝だけではなく、夜もだいたい遅い。 もっとも、朝が遅いぶん昼夜逆転しているだけとも言う。というか、きっとそっちが正しい。 健康には良くないなぁとは思うものの、ものづくりに携わる人間として気持ちは分からなくもないので、いまだにあまり強くは言えないでいる。 「はい、どうぞ」 「お、ありがっとー」 先ほどから彼女が噛り付いているデスクの隅に、邪魔にならないようにタンブラーを置く。中身は、淹れたての珈琲。興が乗ってい
Day 1 - AM 10:03 - 彼女の朝は、だいたい遅い。 根っからの夜行性なので、夜が更けるとともにエンジンがかかり、空が白むに連れて回転数が落ちてくるタイプだ。 もっとも、ボクらのような仕事をしている場合は、夜行性というのはそんなに珍しいことではない。 かく言うボクも、普通の勤め人ならとっくに仕事を始めているような時間に目が覚めたわけなので、あまり人のことは言えないのだが。 一足先に起きたボクは、アクビを嚙み殺しながら洗面所へ向かう。 手早く