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”きょうだい”である私

世の中にはいろいろな家族がいて、
きょうだいとの関係もそれぞれだと思う。

私は重度知的障害を抱える1つ上の兄がいる。
物心ついた時から兄は”障害者”だった。
だから私は割と成長するまで自分の家族構成が”普通”だと思ってた。

実はこれって、とても幸せで恵まれたことだったんだと、
アラサーで結婚をした今、思う。

親と私ときょうだい

まず、親にはとても感謝しているし、尊敬している。
いわゆる「ヤングケアラー」のような兄の面倒を見ることは強要せず、
私は私、兄は兄として育ててくれたし、兄にも普通に叱るし、私にも叱る。

高校も大学も、自分の仕事も好きにさせてくれた。

結婚を決めた時、正直兄のことが気がかりで、
親も年取って面倒を見れなくなるから躊躇したけど、
「あなたはあなたの人生を歩みなさい、こっちは心配しなくていい」
そう言ってくれたから、地元を離れて沖縄に嫁いだ今がある。

ただ、これも一概に素晴らしい、良かったとは言えなかったのかもしれない。
それに気づいたのは本当にここ数年の話だ。

無意識に「我慢をすること」が自分の性格になっていた。
子供の頃に、癇癪を起こす兄を見ながら、
「自分は親を困らせないようにしよう」とか、
「兄が大変だから私の希望は飲み込もう」とか。
そういう小さい我慢が積み重なっていた。

結果、好きな人が私に与えてくれる愛情を素直に受け止めきれないし、
どこかで気を遣って甘えたり、強請ることを我慢している自分がいることに気付いた。

親も私があまり我儘や自分の希望を押し通すことをしなかったから、
この子は大丈夫だろうと思って、割と放置をしていた(任せていた)のかもしれない。

そして、兄とまともな「兄妹喧嘩」をしたことがないので、
昔から人と争うことや言い合いをすることは得意じゃない。
殴りあったり、泣きながら喧嘩している姿が、小さいことの私には心から羨ましかった。
喧嘩する相手がいるだけいい、言い返して、仲直りができるだけ幸せだと。

周囲と私ときょうだい

次に、私は割と周囲の人間には恵まれていたと思う。
同じ幼稚園、小学校に通っていた兄を見ても、
私と紐づけることはせず、私は私として仲良くしてくれた。
そして、兄のことも無視や遠ざけたりせず、「私の兄」として接してくれた。

それなのに、中学、高校、大学とだんだんと自分の兄を知る人が周囲から少なくなるにつれ、私は自分から兄の話はしなくなった。

今思えば、私の兄を見たことがない、知らない人に対して、
自分の兄が障害者であることを伝えると、少し妙な空気が流れることがあったから。
これが面倒くさいし、私の心の中でその人のことを軽蔑してしまうから言いたくなかったんだと思う。

だから家族の話になっても、それとなくかわしたり、
やんわり嘘を混ぜっこんだりしていた。
特に自分が内心「この人とは”一生”は関わらないな」と思った人には。
自分が心を許した人にだけ、何かしらのタイミングで伝えている。

今の夫にこの話をするのも迷った。
なので付き合った当初はそれとなく交わしていたし、
あまり聞いてこないから言わなかった。

ただ、とあるテレビ番組で障害者にフォーカスした特集があった際に、
何の偏見もない発言(忘れたけど)を聞いて、ポロリとカミングアウトしたのを覚えている。
一瞬あの妙な空気だったから、まずったと思ったけど、
受け入れてくれたので安心したのを覚えている。

「きょうだい」として思うこと

不思議なもので、”障害を持っている当人”と”その親”には、
フォーカスしたり、援助が明確に設けられている。

ただ、「きょうだい」に対する支援や情報は極端に少ない。
きょうだいのほとんどは所謂”健常者”だと思うので、
きっと支援は必要ないって思われているのかもしれない。

きょうだいへの支援で本当に必要なのは「情報」だと思う。
わかりやすい、情報。
そして共感できて、支え合って、情報交換できる仲間なのかな。

大人になったきょうだいが直面する問題って結構多い。

  • 自分のパートナーへのカミングアウト

  • 親の高齢化

  • 自分の人生の選択幅

私はこの3つに悩んで、夜な夜な泣いたことがある。
きょうだいだって自分の人生がある。
でも家族を突き放すことはできない。

このことで何回も親と話し合った。
それでもやっぱり、親が亡くなったときの不安は尽きない。

私の兄は今、平日だけ施設で生活をしている。
私の一人暮らしの時よりいい部屋だし、
同じ境遇の仲間がいて家にいるより伸び伸びしているように見えた。
親が亡くなった時には、この施設に永住するように、
今親と施設が準備を進めているらしい。

世の中のアラサーきょうだいはどうしてるんだろう。
率直な疑問はコレだ。
情報交換ができたら、同じ境遇で人生を歩んでいる人がいると知ったら、
きっと私の心の支えになるんだと思う。

というわけで、何かそういうことができないか模索したい。

そして年始に帰省するので、親と今後と私の考えについて話したい。



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