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くまモンに学ぶ仕事の流儀(4)ターゲットを定める

第2章 拡散まで
その1 大阪で活動すること〜狙いを定める

そんなこんなで誕生したくまモンは、2010年に活動を開始します。
最初に活動のメインにしたのは大阪でした。
当時のくまモンの使命は、九州新幹線全線開業のPRだったので、(熊本県全体のPRキャラクターになったのは2011年)主な集客源となるのはたしかに大阪なのですが、とはいえ、活動の拠点を他の都道府県に置く例はあまりないのではないでしょうか。
たいていはPRキャラクターと言いながら地元のイベントに顔を出したり、パンフレットの隅にイラストを載せたりするところから始まります。
それに意味がないとは言いいませんが、県民を盛り上げたいのか、PRがしたいのか、県産品を売り込みたいのか、まずはキャラクターを知ってもらいたいのか、
路線が定まっていない活動は結果に繋がりません。
その迷いを断ち、大阪に狙いを絞ったところにも、熊本県が本質的に考え、動いている様子が伺えます。

さらに、大阪なら「冗談が通じる」というところもポイントだったようです。
街中に謎のポスターを貼り、くまモンが町を練り歩く。名刺を1万枚配る、というミッションを掲げて、その途中知事がまるで公式会見のように「くまモン失踪」を伝え、情報を呼びかける。場合によっては批判を受けそうなやり方ですが、相手が大阪市民だったことで、炎上することなく成功につながったのではないか、と言われています。

▶︎本日のポイント
商品開発やプロジェクトには、必ずコンセプトが必要です。
つまり、誰に何を届けたくてやるのか?目的とターゲットを明確にする。
そして今やろうとしていることはそれに沿っているか、常に確認し続ける。
と同時に、ストーリーにそぐわないものは「やらない」という選択も必要になります。
それは開発の際にも、PRの際にも同じです。
誰にどうなってほしくて商品を作るのか。
誰に何を伝えたくてPRをするのか。
それがブレた途端、せっかくのいい技術も、いい情報も、かわいいキャラクターも力が分散して相手(市場)に届かないのです。
特に今の時代、ニーズを満たすマーケットはごく限られていて、多くは飽和状態の中をいかにくぐり抜けて相手に届けるか、を考えなければなりません。
その時に大切なのは、自分達のリソースをいかに結集させ、メインターゲットとなる人々の共感を生むか、ではないでしょうか。
ただ、行政の場合はそれが難しいこともよくわかります。
基本的に県民すべてのために活動するのが行政であり、ターゲットを絞ること自体が苦手なはずです。
だからキャラクターを使ったPRも、一貫性がなかったり全方位的な内容になってしまっているケースが多い。
熊本県庁職員の皆さんも、おそらくマーケティング思考、デザイン思考は苦手だったのではないでしょうか。
それを克服した背景には、何度も小山薫堂さんの本を読んだ、なんていう地道な努力もあったようですし、きっと関係者の方々同士で「このイベントで伝えたいことってなんだ?」「そもそもくまモンの存在意義ってなんだ?」「本当にこれでいいのか?」といったことを頻繁に確認し合っているのでは、と想像します。

くまモンの部下であり、くまモンを支えた人たちの書いた著書も何冊かあります。成功の裏に何があったのか。知事の凄さもわかります。


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