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くまモンに学ぶ仕事の流儀(6)勇気をもってアップデートする

第2章 拡散まで
その3   勇気をもってアップデートする

くまモンが好き、という人の中には、イラストのくまモンにはそれほど興味はないが着ぐるみになった姿が大好き、という人も多いと思います。
もふもふの感触や、絶妙なぽっちゃり体型、やんちゃな動きやキレのあるダンス、そして見る角度によって表情が違う(ように見える)立体的な顔など。

ただ、そんなくまモンには、実は、今の姿になるまでに2回のアップデートをした歴史があります。

デビュー時は、ファンの間では「黒歴史」と呼ばれるかなり悲惨な姿。ただ、さすがにこれはマズイと思われたのか、早々に作り直されⅡ型となりました。今オフィシャルな場でⅠ型が紹介されることはほとんどありません。

Ⅱ型は、今とほぼ同じ姿で、フォルムが微妙に丸い、足が長い、口が大きい?という程度。今も画像検索すると姿を確認することができますし、熊本県の公式の記録にも登場するので、基本的には今と同じ、という扱いになっているようです。

しかし、Ⅱ型での活動期間は1年程度で、早々にⅢ型へとバージョンアップを遂げます。これはかなりの勇気のいる英断だったのではないでしょうか。
というのも、Ⅱ型の時点で「ちゃんと」かわいい姿になっていますし、この頃に大阪での活動が成果を結びはじめるので、このまま突き進むこともできたはずです。
下世話な話ですが、着ぐるみは1体60万〜100万円程度かかります。活動頻度を考えれば1体では済まないので数体を作成します。その予算も税金となれば簡単な手続きではなかっただろうと想像するのですが、それでも、このままじゃダメだ!と作り直しを決めたのです。そして不動の人気を獲得し、ゆるキャラ界の先頭を突っ走ることになります。

▶︎本日のポイント
先日も書いたのですが、やはり魂は細部に宿ります。
まず私自身が、Ⅱ型を見て、かわいいとは思いますが、今のような熱心なファンになることはなかったでしょう。同じ感覚の人は多いはずです。
細部が大事というのは、デザインにおいてももちろんのこと、サービス業のおもてなしにも同じことが言えます。
例えば日本旅館において、提供する料理や部屋の設えに、日本文化の微細な心を織り込んで演出できるか、お客様の微妙な表情の違いを嗅ぎ取って対応できるか、など、顧客にとっては、その些細なおもてなしがなによりも強く印象に残ることもよくあります。
ある程度成功しているものに対して変更を加えるのは、やらなくてもいいだけに腰が重くなるし、かえって失敗したら、と思うと勇気がいる作業です。ですが、その一歩が、より高みへと押し上げてくれる可能性をもつことを、Ⅱ型のくまモンを見るたびに思い出します。

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