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You can!

「She can!」
ニコニコと、友人の夫はそう言った。
友人がトライしていることに対してのコメントだった。
友人は日本人女性で、夫さんは英語圏の白人男性。
短いのに、なんというパワーワードなんだろう。
未来という見えない時間に向かっている時に、疑いのない口調でこう言われたらどんなにか心強いはずだ。


その友人がトライしているのは、自宅での和菓子教室オープン。
日本の伝統和菓子作りに外国人の人気が高まっているらしく、
和菓子作りを習っている彼女も、外国人向けの教室に挑戦することにしたという。
教えることも初挑戦、英語のレッスンもまだまだこれから。
まずは教える練習台として、私は友人の家にお呼ばれした。


外国人じゃなくても、私は和菓子作りには縁がなかった。
キウイ入り大福餅と、3色団子、そして練り切りを2種類。
”初心者”の私は模擬生徒にはうってつけだったようで、
一から十まで、手取り足取りのデモ教室になった。

和菓子といえば、グルテンフリー。使うのは米粉や豆類だ。
大福の皮に使ったのは『もち粉』。
お団子は『白玉粉』。こちらの方がもっちりしていて、固くなりにくいらしい。
練り切りは白餡と『上新粉』をこねてこねて作った生地。

『もち粉』と『白玉粉』と『上新粉」の違いについてなど、考えたこともなかった。
白餡の原料は白インゲン豆。そうだったのか。

食紅を爪楊枝の先ぐらいチョンと載せて生地をこねたら見事に発色して驚いて、
和菓子職人のコツを真似たら練り切りがそれらしく仕上がって、また胸が躍った。

和菓子の繊細な細工や色使い。
季節を表現する花や葉のかたどり。

和菓子が”日本の伝統文化”ということに思いが及んでいなかったことに気づいてハッとした。
外国人の視線の先に日本文化があることで、
私たち日本人が忘れていたことを思い出すことが、近ごろ多いような気がする。


ところで、本題は「She can!」。
友人は、レシピを英語で説明するだけの英語力がないと言う。
日本語での説明もまだまだ、英語もまだまだ、と
自嘲する友人。
そこで夫さんは「She can!」とニコニコして私に言ったのだ。
canの未来が、もうそこに存在しているみたいだった。


「できるに決まってる。」
そう軽く言い切る人が毎日隣にいたら。

もしも毎日「You can!」と聞いていたら
もうそれはそのまま、その未来になるような気がする。
未来にcanが待っているのだと約束された気になったらもう、ただやり続けるだけだ。


私は絵を描くのが下手なのに、最近とても描きたい。
さっき自分で描いた絵を眺めながら、
「やっぱり上手くなるような気がしないなあ」とつぶやいた時、
「You can!」と隣の部屋から娘の声がした。
友人の家での出来事を話した後だったのだ。

そうだった。
canになるまで、やめなければいいんだ。

I can!

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