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在職老齢年金とは?働きながら年金をもらうときの留意点

定年を迎えたあとも、再雇用等で働き続ける60代は増えています。

会社で働きながら、年金を受給しようとすると、場合によっては年金がカットされてしまう仕組みがあることをご存知でしょうか?

老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これを「在職老齢年金」といいます。

在職老齢年金制度とはどんな仕組み?


在職老齢年金制度に関連があるのは、老齢厚生年金を受け取る権利があって、なおかつ給与を受け取っている人です。

簡単にいうと、給与と年金の合算額が高いと、老齢厚生年金がカットされる仕組みをいいます。

具体的には、老齢厚生年金の「基本月額」と「総報酬月額相当額」(賃金)の合計が50万円※を超える場合、超えた分の半額の年金が支給停止されます。
※2024(令和6)年度の場合。2023(令和5)年の支給停止調整額は48万円。

「基本月額」とは、老齢厚生年金の年額を12で割った額(加給年金は除く)です。
共済組合等からの老齢厚生年金も受け取っている場合は、日本年金機構と共済組合等からの全ての老齢厚生年金を合わせた年金額を12で割った額です。

「総報酬月額相当額」とは、毎月の賃金(標準報酬月額)+ 1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額を指します。


在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式(2024年度)

  • 基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円以下の場合
    → 全額支給

  • 基本月額と総報酬月額相当額との合計が50万円を超える場合
    → 基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2

毎月の賃金といっても、単純に給与支払い額を指すのではなく、「標準報酬月額」が基準となり、さらに直近1年間の標準賞与額の1/12が加算されるので、少々複雑です。

たとえば、基本月額が15万円で総報酬月額相当額を36万円とした場合、支給停止額は5000円となり、受け取れる老齢厚生年金は14万5000円となります(2024年度の場合)。

この制度の減額対象になるのは厚生年金のみ。基礎年金は影響しません。また、老齢厚生年金が全額支給停止になる場合以外は、加給年金は全額支給されます。

業務委託契約で働く個人事業主や不動産、株式配当などによる収入は、在職老齢年金の対象になりません。

ところで、在職老齢年金で一部でも支給停止されるのであれば、老齢厚生年金を繰り下げて年金額を増やそうと考える人もいるかもしれません。

繰り下げ受給を選べば、1か月ごとに0.7%増えることになります。

しかし、在職老齢年金によって支給停止される部分は、たとえ繰り下げたとしても増額の対象にはなりません。

70歳以降も会社で働く場合


70歳になると、厚生年金保険の被保険者ではなくなります。

そのため、厚生年金保険料が徴収されることはありません。

ところが、ひとつ気を付けなければならないことがあります。

それは、在職老齢年金に該当する場合は、70歳以降も支給停止の対象になるということ。

厚生年金保険料は徴収されませんが、「70歳以上被用者」として、算定や賞与支払届の手続きを行う必要があるのです(それで数字は把握されます)。

特に、高額の報酬を受けている役員の方などは注意したいところです。

 
在職老齢年金の見直しに向けた議論はこれまでも行われていますが、支給を抑える基準を引き上げたり、制度を廃止したりすれば、将来の標準的な給付水準が下がるという試算もあります。

制度の廃止となれば、高所得者の年金が増えることとなり、抵抗感のある人もいるかもしれません。

いずれにしても、60代以降に厚生年金保険に加入しながら働く場合は、在職老齢年金の仕組みを理解しておきましょう。

60代以降の年金と働き方の関係について知りたい方は、「1日1分読むだけで身につく定年前後の働き方大全」もぜひご参照ください!


 

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