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仕事のこと3(はじめましてシリーズ)

こうやってnoteを始めたことをきっかけに、「これまでの自分」を振り返ってみると、自分のなかでもいろいろなことが整理されてきました。

自分がライターになりたい、と思ったのは、文章が得意だったこと(それ以外に、できることが思いつかなかった)ためですが、ニューヨークで独立してからは、ニューヨークに住んでいる、英語と日本語ができる、という理由で、いろんな仕事が入ってきました。国際交渉をしている政府高官からコメントをとるためにひたすら待つ、「立ち番」という仕事もやりましたし、ケーブル局で市況を読むような仕事もしました。生活が不安定だった頃は何でも引き受けましたが、いつしか、ストレス、お金、やりがい、自分の興味といったことを天秤にかけて取捨選択するうちに、今のスタイルができあがってきたように思います。

今、私がやっている「仕事」には、大きくわけて
①依頼をいただいてやる仕事
②自分のプロジェクトとしてやっている仕事

そして、①には、
A)自分の名前を使ってやる仕事
B)制作会社として引き受けている仕事
があります。

実際の作業には、以下のようなものがあります。

①A 依頼をいただいて、個人として受ける仕事
あ: 原稿を書く
雑誌やウェブ媒体の依頼を受けて書く仕事の場合は、取材・インタビュー記事、論評、レビュー、エッセイなど。取材記事の場合は、「〜〜さんにインタビューしてください」という具体的な仕事にアサインされることもあれば、「〜〜特集をやるのですが、何かないですか」と声をかけられることもあります。何か起きていることについて論評やエッセイを頼まれることもありますし、映画や本を評する仕事もあります。9割がたは日本語の仕事ですが、日本のアーティストや作り手について、英語で書くこともあります。

い:短いテキストを書く
コピー、本の帯に入れる文章を書く、コメントを寄せる、アンケートに答える、などなど。

う:翻訳する
英語のものを日本語にしたり、英語のものを日本語にしたり。自分の名前がつく仕事には、本や記事の翻訳があります。これまで、翻訳というクレジットで、2冊の本が出ています。

え:選ぶ
ポップアップや催事などの商品構成を決める。

お:話をする
企業さんや勉強会に呼んでいただいて講演をすることがあります。

①B 依頼をいただいて、制作会社として受ける仕事
あ:文章を書く
自分の名前が入らない文章も書きます。たとえばプレスリリース。会社やブランドが、何かを発表するときに配信するものです。商品の説明、コレクションのインスピレーション、そういったたぐいのものです。なにかについてリサーチをしてレポートを書く、という仕事もごくたまにですが、あります。こうした雇われ仕事から学ぶことも多々あります。自分の関心だけではたどり着かなかった新しい分野の知識を得ることもあります。

い:翻訳する
タイトルやコピーを翻訳する、字幕をチェックする、印刷物を翻訳する。制作会社としての翻訳仕事も多岐に渡ります。

う:プロデュース業
カタログなどの印刷物、広報用の動画などのプロダクションをお手伝いします。日本の企業がニューヨークで行うイベントを他がけることもあります。

え:仲介業
アメリカおよび日本の会社や個人(アーティストなど)の間に入ってプロジェクトを成立させる仕事。

お:コンサル業務
アメリカ企業の日本進出、日本企業の海外進出などについて、アドバイスを行う仕事


あ:本やzineを作る
今、本のプロジェクトが複数進行しています。連載をまとめよう、というやり方のもものありますし、苦手な書き下ろしもひとつ抱えています。zineは、自費出版で作っている小冊子で、旅をテーマに、これまで2冊を作りました。

い:話をする
本をプロモーションするために、東京や日本のその他の場所で、トーク・イベントを開催することがあります。それをしないと、なかなか本がみなさんに知ってもらえないので、こうしたイベントを企画するのですが、これはなかなか楽しい「仕事」です。行く先々で新しい人と出会ったり、それぞれの地域で起きていることを垣間見ることができるからです。一方で、トークツアーを金銭的に成立させるのはなかなか難しいことでもあります。
 トークが楽しくなってきたので、今、もうひとつ始めたプロジェクトに、#こんにちは未来 というポッドキャストがあります。ポッドキャストが好きすぎて、自分もやりたいと思うようになり、若林恵さんに持ちかけて始めたものです。


う:物を売る
zineを作ることになって、自分のサイトの中に、オンライン・ストアという物を立ち上げました。そこでは今、My Little New York Timesの限定表紙白バージョンと自分のzine、わずかですが、自分が見つけた商品も置いてあります。


今、こうして書いてみると、5年前にはまったく想像しなかった仕事内容です。こうやって少しずつ、偶発的な出会いや縁のおかげで、私の仕事スタイルは、微調整を繰り返しながら出来上がってきました。今のスタイルが最終型とは思いません。というのも、そのときそのときの自分の能力やコンディションによって、やるべきことことというのは常に変わるものだと思うからです。

同時に、自分の仕事のスタイルが、こういう展開になったには、自分の決定的な変えることのできない資質がいくつか関係しています。

1、我慢強くない ストレスに対する耐性が圧倒的に低い
若い頃には、ストレスの高い仕事をしていたこともありましたが、自分はストレスに対する耐性がどうやら人より低いらしい、と思うようになりました。実入りの良い仕事についてくるストレスに耐えかねて、「辞める」となって、多くの人に驚かれるようなことも多々ありました。一度しか生きられない人生なのだから、できればあまり我慢をせずに生きていきたいと思ってしまうのです。

2、長期的なビジョンを持つことができない
近い未来を描くことはできるのですが、遠くの未来を描くことができない。ですから、「子供を持ちたい」という夢とは無縁でしたし、若くして結婚したときも勢いで決めました。ライターになりながら、実際にオファーをいただくまで、「本を書く」という目標も現実のものとは捉えることができなかった。性分なのでしょうがありません。

3、毎日同じ生活ができない
会社員をやっていたときに一番辛かったのは「毎日が同じ」ということでした。もちろん、実際に職場でやっていることは毎日同じではなかったのですが、外に飛び出すことばかりを考えていた自分には向いてなかったんですね。今、こういう仕事をするようになって、日々、違う生活を送れることが奇跡のように思えますが、こういう資質のスタイルの良くないところは、大きなプロジェクトがなかなか前に進まない、ということです。これも性分なのでしょうがありません。

4、楽しいことを追いかけてしまう
できれば、毎日、「ああ楽しかった」と思いながら床につきたい。だからどこにいても、毎日、早く仕事を切り上げて遊びに行きたい。これが私の最大のモチベーションです。

自分はこういう人間に生まれてしまった、それを現実社会にすり合わせるうちに、こういう形になったのだと思います。

ところで、ひとつはっきり言っておかなければいけないのは、こういう生き方をしていると、お金のやりくりは簡単ではないということです。文章を書く、ということで生活するだけのお金を稼ぐことが簡単ではない時代にあって、違う仕事をすることで、書く時間を確保していますが、それでも、だいたいお金の計算は得意でないので、ときどきいろんな計算間違いをして、「ヤバい」となったりします。

ライターのお金事情については、またいろいろ思うことがあるので、 また別の機会に。


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