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【映画レビュー】映画ネメシス 黄金螺旋の謎

それはそれはヒドい出来だったドラマ版『ネメシス』。当初から映画化は決定事項だったようで、それでもドラマの評判が芳しくないので映画化までに時間を要したものの、結局映画化された。
という認識だったのだけど、映画版を見てみると意外にもそれなりの面白さになっていて驚いた。

ドラマ版の個人的な感想としては、めちゃくちゃ良いキャストを揃えて、面白そうな雰囲気の映像で、中身が超クソドラマって感じだった。新鮮で高級な食材を揃えて、見た目も豪華でおいしそうで、食べてみたらゲロまずい料理って感じ。特に良くないと思ったのは、コミカル部分が絶望的に面白くない事と、ミステリーが下手くそなところ。映画版ではその二つがかなり改善されていた。改善というか、そういう部分を切り捨てたという印象だろうか。

ドラマ版を見ていない人でも楽しめるほど親切に前置きしたようにも感じなかったので、ドラマ版を見た人のための映画版なのだろう。そう考えると、ドラマ版のコミカル部分を楽しんでいた人はきっとシリアスに寄り過ぎた映画版に不満を感じただろう。キャラクター同士の交わりが少なく、事件を描く事に時間を割きすぎた感もある。だからドラマ版が大好きだったような人は不満を感じただろう。
キャラクター同士の交わりはもう少しあった方が良かったと思う。ドラマ版の最終回の、全員集合して力を合わせるみたいな盛り上がりがなかったのは残念だった。ただ、クソつまらない軽妙なやりとりみたいなものをバサッと切り捨てて、映画らしいシリアスな雰囲気にしたのは良かったと思う。ドラマ版の鼻白む感じがなく、セリフがまともだった。

事件部分も、謎解き要素を捨ててSFっぽい非現実に振り切ったのは良かった。ドラマ版は謎解き探偵ものに見せてミステリーの基本を無視したような稚拙な表現も多く、それがかなり不満だった。映画版のように、はっきりとリアルさを無視した不思議な感じの方が下手なのがバレなくて良い。特に前半の、『バニラスカイ』みたいな夢と現実が入り乱れている表現は良かったと思う。同じシーンを繰り返しすぎてはいたけど。
後半の事件を解決していく辺りでは、情報を上手く整理できていないごちゃついた感じや、動機など色んな説明不足を感じた。並行して進んでいたサブストーリーの依頼が全くメインストーリーと絡んでいない、稚拙な部分もある。でもまあ、ドラマよりずっと良いので、まぁよくやってる方だと感じた。

ただ、黒幕についてはっきり描写しなかったのは良くない。まぁわかるんだけど、誰なのかわかるんだけど、やっぱり映画の終わらせ方としてちゃんと決着をつけるべき部分だと思う。続編を作る気なら黒幕の存在をもっとぼかすべきだし、あそこまで明らかにしておいて描かない意味がわからない。本人がうやむやにしようと決める、という結末は構わない。葛藤して、うやむやにしようと決意する様子をちゃんと描いて欲しかった。

まぁ、散々だったドラマ版を成仏させたんじゃないかな。この出来なら、映画として悪くないって思えた作品だった。

『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』 2.5

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