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【映画レビュー】ザ・インタープリター

国連本部を舞台にアフリカの独裁国家の大統領暗殺計画を描く。わかりにくいところもあるが、志が高くテーマは良いと思った。

主人公はニコール・キッドマン演じる国連本部に務める通訳。彼女の通訳する言語はアフリカのマイナー言語で、偶然その言語でアフリカの小国マトボ共和国の大統領暗殺計画が語られているのを聞いた事から、事件に巻き込まれていく。
一般的には大統領暗殺計画を聞かれた犯人が、計画の邪魔になる彼女をなき者にして暗殺を完遂しようとするストーリーになっていきそうなものだが、この映画はそういう単純なものではない。もっと複雑で、さまざまな要素が絡み合う。

この複雑さを上手く整理できていたら、きっとこの映画は素晴らしい名作になっていただろう。そう思わせる要素はあったのに、残念ながら複雑な関係の情報の交通整理ができていない。この人は誰なんだろう?どういう関係なんだろう?何が起こっているのだろう?とよくわからないまま色んな事が起こった印象だった。映画を全て見終わった今なら、それが何を意味していたのかわかる。でも、見ている途中では、きっと説明はしていたのだけど不十分というか、製作者側がわかっているだろうと思っている情報が見ている側に上手く伝わっていない部分は多かったという印象だ。そこが残念だった。

映画を見終わって、複雑なミステリーをすべて理解してしまうと、ミステリー以外の要素も含めて描こうとしているテーマは素晴らしかったと思う。アラブの春が混乱をもたらしただけで結局失敗に終わったと言われるように、独裁国家を倒せば必ず民主的で平和な国になるわけではない。そういう不安定な国の権力争いや、その混乱の中で国民それぞれに起こる悲劇や、個々人がそれにどう向き合うかなど、難しい問題を正面から描こうとしている志は感じる。だから国連本部が内部での撮影許可を初めて与えたというのも頷ける。実際ニュースなどでよく見るあの大会議場が舞台となっていて、なかなかのリアリティだ。

複雑なミステリーと、社会問題を含む人間ドラマと、ちょっとの恋愛。全てなかなかに良いものなので、あともう少し上手く情報整理ができていたらと悔やまれる。

『ザ・インタープリター』 3.0

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