掃除と幹事は何かのオブリージュ? フリーライド問題の辛さ

小さい頃から「身の回りの整理整頓ができない」子供でした。小学校低学年の頃はいつも教室のあちこちに私物を放置してしまっていて、クラスメイトがそれを回収してくれるための専用のポストまで用意される在り様でした。そんな私だからこそ、その頃から、あるいはそれよりも以前から納得がいかない日本語表現があります。「きれい好き」です。きれいなこと、清潔であること、散らかっていないこと、は基本的にはほとんど全ての人にとって好ましい状態のはずです。私も、好きです。「きれい好き」と言われる人達と比べて、その愛が劣っているとは思えない。しかし、大きな違いは、彼ら彼女らは頻繁に掃除や整頓をするということです。私が思うに、いわゆるきれい好きの人達は、「きれいが好き」なのではなく「汚いのが耐えられない」のです。だから掃除をする。耐性が低く、我慢ができないのだと思われます。不潔さや乱雑さに対する不寛容とも言えるかもしれません。というようなことを結婚以来、きれい好きな配偶者に主張しては、繰り返しお互い精神の衛生を損なう人生でした。

きれい好きな人は、乱雑な状態に耐えられないので、率先して掃除をします。しかし、掃除をしたことで得られる便益、清潔な環境は、きれい好きではない人も等しく享受できます。いわゆるフリーライドですね。これが積極的に「汚い好き」であれば、衛生的な問題の影響を受けづらく子孫を残せる期待が高い(また道徳的に優れてる雰囲気もある)「きれい好き」軍対、エントロピー増大というより根源的な追い風を受けているであろう「汚い好き」軍の仁義なき戦いということで、シンプルな図式だったのでしょうが、現実はそうではりません。繰り返しますが「きれい好き」じゃなくてもきれいは好きです。

ということで、きれい好きな人は、言ってみれば若干趣味があわない人のためでもある作業を自分ばかりがやってることになります。掃除は掃除で楽しい面もあるかもしれませんが、一般的には、面倒くさい作業、という扱いだと思います。こうして不満を溜めつつ掃除を繰り返し、ついでにスキルも向上しちゃったりします。そうすると、得意な人がやればいい、とか、好きでやってる面もあるのでは、なんて見られ方もしだしかねません。自分だけが無償奉仕をさせられて嬉しい人というのはいない(か、いたとしても極めて例外的で稀な存在な)ので、調子にのったフリーライダーが増えないように牽制する必要なんかもでてきます。恐らくはそういう理由で、不機嫌そうな空気をまとうきれい好き、というのも珍しくないのではないかと思います。

こういう構造って、掃除ときれい好きの間にだけあるものじゃないと思うんですよね。最近よく考えるのが、飲み会などの「幹事」役です。私は誇り高き陰キャコミュ障の流れを汲む者ですので、基本的に幹事を担うことはありません。したがって、ここでも幹事の働きに対するフリーライダーのポジションにあります。

自然発生的に幹事役を務めてくれる人達の特徴として、状況の乱雑さ(グダグダ加減)に対する忌避感が強いということがあるんじゃないか、と思うわけです。だから、状況をましにするために手を挙げて状況をまとめてくれようとする。でも、まとめ役になってしまうと、その場である種の権力を持っているかの様に見えることがあります。(飲み会の幹事ぐらいで、権力なんていう言い方はいかにも大げさに過ぎますが)。一方で、相手が権力であれば人格を棚上げして噛みついても良い、という動作原理で動いている人というのがある程度の割合で存在していて、実態的な権力があるわけでもないしそもそもそのポジションを積極的に望んでいたわけでもないのに幹事役として動いている人とぶつかったりするわけです。

素直に権力志向が強いだけなのであれば、それこそ自分が幹事でもなんでも早い段階からやってくれれば良さそうなものなのですが、そういうタイプは権力構造に敏感ではあっても率先して責任をとりながらリーダーシップを発揮しようとすることはない気がします。

そういう人に足を引っ張られる幹事役を見るのは辛いことです。が、何より問題なのは、幹事の人から見ると、そういう人達と私の間に大した違いなどないということです。どちらも結局はフリーライダーなので。なので、こちらとしてはせめて幹事の意向に反対せず足を引っ張らないようにしよう、って思うわけですが、多分、これはこれで良くないんですよね。それってつまり「丸投げ」に他ならないので、乱雑な意見を取りまとめるだけじゃなくて本来的な意味での権力も責任もない状態で「何かを決める」っていう想像以上に重いタスクを押しつけてることになるわけです。どうしようもありません。なんとなく、常識的な人同士の関係であれば、失礼な態度をとらず感謝の気持ちを抱き、できればちょっとくらいは表明して本人に伝えたりできれば、それで解消する問題なじゃないか、っていう都合の良い期待がないわけでもないんですが、それって基本的には「お互い様」ってことがあってからこそだと思うんですよねぇ。私の場合は、自分が掃除したり幹事したりってことがほぼないので…… せめて他のジャンルで迷惑をかけてもらえるといいんですけどね。

ということで、本当に世界中のありとあらゆる幹事ときれい好きに感謝と謝罪を。

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