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4期´冒険報告

黒さんが死んでしまったので、
オイがもう一度、彼を探しに出かけます。

黒さん死亡時の洞窟にオイが行ければフラグ回収です。

↓黒さん死亡時の状況
東の方に少し行った森の中の洞窟 付近の村の長
巨大トカゲ×2 → ウーズ →
 熟練のクロヤサギは超巨大トカゲの攻撃で、大きな傷を負った。
 熟練のクロヤサギは、死んでしまった……。

オイ2度目の、「はじめての冒険」

黒さんが冒険の最中に亡くなって13年、
生きていれば、もう43歳にもなろうという黒さんを
まだ諦め切れないオイが捜しに行きました。

以下SS(相変わらずサグ視点)↓↓***************

「オイ、考え直せ! あの時だって丸2年探しても見つからなかったんだろ!?」

今にも家を飛び出しそうなオイの腕を必死で掴む。

「今度はきっと見つかるもん!」

希望的な発言をしたオイは、どこか焦っているようにも見えた。

「どうしてそう思うんだ」

自分と、オイを落ち着かせるように、意識してゆっくり問いかける。

「……前は、ボク怪物やっつけてばっかりだったでしょ?
冒険の合間だけじゃクロの事あんまり探せなかったけど
最近は、遺跡とかを隅々まで調べて回る仕事があるんだって、聞いたもん!!」

「誰から?」

「う……」

押し黙ってしまったオイを見ながら、緑髪に青い帽子の少女を思い浮かべる。
今日はあの子のところへ遊びに行っていたはずだ。

そうでなくともオイの友達はほとんどが冒険者や元冒険者だ、
いつかこんな日が来たんだろう。

オイが、まだクロとやらの事を諦められずにいた事は、俺にもよく分かっていた。

小さくため息をつく。
と、俺を心配そうに見上げている小さな金色の瞳と目が合った。
先月5歳になったばかりの娘が、
ソファーの背もたれを握りしめながらこっちを見ている。

「ああ、なんでもないよ」

なるべく優しく微笑みかけてから、視線をオイへと戻す。

「オイ、俺はもう、お前を捜しには行けないんだぞ」

10年ほど前、オイの死亡通知を受けて、
思わず飛び出した自分をふり返る。

あの頃の俺は若かった。
いや、今だってまだまだ若いつもりではいるが、
27歳と38歳ではどうしても体力に差があるだろう。

なにより、今の俺には帰りを待つ家族が居る。
彼女や子供達をおいて行く事だけは、どうしてもできなかった。

「うん、大丈夫」

くるりと、オイがふり返る。

「ボクもう大人になったんだよ。絶対死なないで帰ってくる」

ようやく16になろうかと言う程度の見た目で
どこが大人なのかと言い返そうとして気付く。

成竜になったということか。

「あのね……」

子供達に聞かれたくないのか、小さな声で、囁くように話すオイ。

「みんなの前ではいっつもこの姿だから、気付いて無いと思うけど、
 ボクもう、羽を広げたらこの部屋より大きいんだよ」

「……は?」

慌てて記憶を辿る。
竜の姿に戻ったオイを見たのは、
オイが自力で家まで戻ってきたあの時が最初で最後だったわけだが
あの時はまだ俺一人でも十分引き摺って移動させられたサイズだったし
部屋の扉も……扉……。

……そうだ。
あの時既に羽をぎゅうぎゅう折りたたんでやっと扉が通ったんだっけか……。

つまり、この場で急にオイが竜の姿にもどったら、我が家は一瞬で倒壊か。
そんなことを考えながら、軽くため息をつく。

「けどお前……、人にその姿見せるの嫌なんだろ?」

「冒険者には変な人がいっぱいだから、
 ボクみたいなのもそんなに珍しく無いって言われたよ?」

だから誰にだよ……。

「あのね、狸とかね、猫とかも、冒険してるんだって!!」

「……」

余計な入れ知恵をしてくれた奴の事をひそかに恨みながら、
それでも、人前で竜に戻りたがらないであろうオイに
『絶対死なずに帰ってくる事』を無理矢理約束させて
俺は、息子と一緒に帰ってきたスーリアー達と入れ替わりに
オイに付き添って酒場に向かった。


G113/04 洞窟探検

「ただいまぁー」

パタンと扉の音を響かせて、オイが元気に帰ってきた。

「おー、おかえり」

まるで、ちょっと散歩にでも行って来たかのような口ぶりに
ほんの少し苦笑しつつ答える。

「怪我は?」

とことこと軽やかな足取りでやってくるオイを
良く観察しながら声をかけると

「うんとね。足ちょっとすりむいちゃった」

と返事が返ってきた。

最初の頃のように怪我を隠すそぶりもなく、
素直に太腿の脇に付いた何かの爪がかすったような痕を見せるオイ。

これなら消毒だけで十分そうだ。

まずは水洗いしてこいと、オイを風呂場へ連れて行く。

先月も、元冒険者とはいえ、10年以上ぶりの冒険で、
4連戦だったと言うのに無傷で帰ってきたことにも驚いたが、
今日も擦り傷1つとは……。

確かに、オイの身体能力はあの頃よりずっと上がったのかも知れない。
それでも、オイの2度目の冒険者生活はまだ始まったばかりだ。

いつ、また血まみれの姿で帰ってくるか分からない。
そうなった時に慌てず対処できるよう、心の準備だけはしておこう。
可愛い子供達の前で、取り乱したりする事のないように……。


G113/05 遺跡探検

狼男の群れに、下っ端インプの群れ2つめで敗退……って
今日冒険3日目でしたよね?(汗)

1戦目から大きな被害を受けつつも、先に進むPT……(汗)

オイも、致命的な攻撃をかろうじて持ちこたえたと書かれていました。

が、

今回のオイは不死+人外体力で頑張ってもらっているので
文中では案外元気そうですみません(汗)

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バターでじっくり炒められた玉ねぎの香ばしい香り、
それに、ほんの少し甘く漂うハチミツの風味、
部屋には、食欲をそそるカレーの香りが漂っていた。

「ほらこれ、騙されたと思って食べてみろよ」

絶対美味いからさ、と付け足しながら、俺はスーリアーに小皿を手渡す。
彼女は、ほんの少し眉を動かしてから、その小皿のカレーを味見した。

「……」

「どうだ?」

「……悪く無い…」

覗き込むと、
彼女の表情は、そっけない言葉とはまるで裏腹に弛んでいた。

「だろ?」

スーリアーの反応に満足して、勝ち誇ったように頷く。

自分でも悲しいほどにエプロン姿が板についてきた今日この頃だが
それでも、彼女のこういう表情が見られるなら
1日がかりでカレーを作るのだって悪く無い。

目の前には、カレーの入った鍋が2つあった。
辛い物が好きなスーリアーと、辛い物が苦手なオイのために
こういった料理は途中から2つに分けて作る事にしている。

遺跡はそう遠くない森の中だ。
そろそろ帰ってきてもいい頃合だと思うんだが……。

バターン!!

「おわぁっ!」

突然けたたましく響いた扉の音。
思わず飛び上がった俺とは対照的に
スーリアーが変わらぬ表情で扉へと視線をやった。

「うわぁぁぁぁぁんっ! サグぅぅぅぅぅ!!」

「ど、ど、どうした…」

飛びついてきたオイを思わず撫でると、
そのあちこちに出血痕があった。

思わず傷を確認する。

しかし、傷口はどれも既に血が止まっており、
治りかかっているように見えるものもあった。

今日受けた傷だよな……これ……。

オイは本当に…自分達とは
違う次元の生き物だ……って事か……。

「……3人も死んじゃった……」

耳元で、相当凹んだ様子のオイの声がする。

「あー……。。。そうか……」

返す言葉が見つからないまま、俺はその頭をなるべく優しく撫でる。

「……ボク、今度は、守れると思ったのに……」

そういえば、以前オイと同じPTの仲間が亡くなった時
こいつはあまり落ち込んだ様子も見せなかったが……。

この10年で、オイは俺達人間の事を、
たとえ良く知らない相手でもその死を悼めるほどに
愛してくれるようになったんだろうか。

それとも、単に成長するにしたがって情緒が豊かになったのか?

ふと顔を上げると、こちらをまっすぐ見つめているスーリアーと目が合った。

あれ?いや、成長といえば、人間に化けているときの見た目も、
随分成長して、その、こんな風に抱きつかれたら……。

「い、いや、これは――」

反射的に何か言い訳をしそうになって、スーリアーの後ろに
べったりとしがみ付いているチェーン君の姿が目に入った。
そして、その後ろにもう一人、
同じようにチェーン君にしがみ付く、俺の息子、ファル。

と、足元を見れば、俺とスーリアーの間では娘のフィーが
難しい顔をして俺達を見上げていた。

「わかった! フィーはこっちね!!」

きらんと小さな金色の瞳を輝かせると、
フィーは俺にしがみ付くオイにしがみ付いてきた。

「みゃうっ」

オイが小さな悲鳴を上げる。

フィーが傷口でも触っただろうか。

そもそも、これだけ血まみれの相手に、
うちの娘はよく遠慮もなく飛びつくものだ……。

一瞬でも、血まみれのオイを子供達が怖がったら……などと
考えた自分がバカらしい。

「ほら、怪我の治療するぞ」

「うん」

俺の言葉に、オイがうっすら涙目で頷いた。


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