書店を散歩しながら思ったことをつらつらと


連休最終日。日が傾き始めると頭のスイッチが通常モードに切り替わるのを拒否して気分が鬱々となる。カレンダーに準じた生活パターンの人たちが陥るというサザエさん症候群である。
連休と言っても2日だけれど。

ひとたび出勤してしまえば時間に追われ忙殺されてる間に退勤時間になるので、出勤するまでがしんどい。前の職場にいた頃は、毎朝腹痛と頭痛のコンボで吐きそうになりながら出勤していた。胃に穴が開きかけていたかもしれない。その頃に比べたら落ち着いている。


今日は気分転換に近所のスーパーの中にある小型の書店へ行ってみた。パズル誌とデアゴスティーニなどのワンテーマ系だけで雑誌コーナーの大半を占めている。ここのスーパーは近いし安いのでよく利用するけれど、客層的にはそれが最適解だろうなと思う。実際、お年寄りが多いし、2年前の改装で全体的に陳列が低くなった。わたしの職場もそれに近い。もう少しファミリー層が多いけれど、レジにいていちばんよく売るのはパズル誌と佐伯泰英と運転免許認知機能検査だ。

職場以外の書店に行くと、静けさにホッとする。わたしのお気に入りの書店は、耳を澄ますとやっと聞こえるくらいのボリュームでジャズが流れ、店のあちこちに椅子が置かれていて自由に本を手に取って読める。流行りのカフェ併設店ではなく、一日中過ごしても飽きない店。何より、店に入ったときの匂いが好きだ。特有の、紙とインクと、あと何か形容し難い匂い。商業施設の中の書店では嗅ぐことのできない匂い。そこで働きたいと思ったこともあったけれど、その店への愛が強すぎて働くには向いていないと判断した。今でも癒しを求めてふらりと足が向く。

椅子はなくても、静かで居心地のいい書店は以前はいくらでもあった。駅ビルの中にも、駅前の通りにも当たり前に存在していたし、チェーン店ではない個人経営の古本屋もあった。
隣の市は、去年の夏に市内の書店が全滅した。ただでさえ高齢化が進む田舎。うちに流れてきたお客様に話を聞くと、「遠くなっちゃったからなかなか本屋に来れなくて」とか「足(車)がないから子供が来てる時じゃないと本を買いに来れないの」とよく言われる。ネットで買えばいいじゃないかと言われるかもしれないが、ネットで買うという手段を持たない人もまだ少なくないのだ。

名の知られた大きな書店ですらどんどん閉店していく昨今。わたしの職場は目と鼻の先に競合店ができた割には踏ん張っているけれど、来年にはどうなっているかわからない。

本との「偶然の出会い」を得られる場所が減っていくのは悲しい。イチ書店員として何ができるだろう、とぼんやり考えながら、肉豆腐を作っている。



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