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深夜の電話➿☎️2023/10/20


夜、妹の夫から電話があった。

妹の夫はY君という。
妹はAちゃんという。

Y君は消沈した声で、どうしたらいいかわからず混乱しているという。
Aちゃんから聞いているし私は自分にも思い当たるふしがあった。

何があったのかというと、私が事あるごとに、「読むように」と渡してきた、マチズモ(マッチョイズム)について書かれた本や、男性学についての漫画を、Y君もいよいよ読み始めたのだ!

正確には、Aちゃんを通して手に取ったと言った方が正しい。
最初にAちゃんが読み、本に書かれていることがこれまで自分で考えてきたこととあまりに一致することに感動して一気に読んだ。夫であるY君にも読むように声をかけたが上の空で聞き流されることにしびれを切らし、ついにある晩、Y君に朗読して聞かせたのだという。読み聞かせ!

Y君がのろのろと重い腰をあげて漫画から読み始めた頃、AちゃんはY君に対して最早諦めかけていること、どうせ何も考えていないのだろうという風にしか見えないこと、行動する気がないことを、厳しい言葉でY君にぶつけるようになっていた。

妹がY君に厳しく当たるのには訳がある。
Y君は岐阜の田舎出身で、伝統的家父長制の中で育った。
両親はそれを疑問なく引き受けてきた世代で、これまた残念ながら疑問なく息子に引き継ごうとしている。
Y君が長男であることもそれに拍車をかけた。
伝統的家父長制に基づく発言を、息子であるY君と、まだ幼いその子どもにも浴びせており、それはもうなんと言うか「時代遅れ」なんて言葉では足りない、毒親でひどい虐待のように私には見える。

そのことについて、Aちゃんがいよいよ行動しなければと思ったのは、子どもが幼稚園に入り、義父母から子どもにかけられる言葉に耐え難いものを感じ始めたからだと思う。

先日、子どもが幼稚園に入って初めての運動会を見にやってきたY君の父は、子どもがかけっこに出て、ニ番でゴールする様子を見て、「来年は一番は狙えんな」と言ったらしい。
つまり、「走り方が変」で、「今回はたまたまニ番だった」けど、「みんなが成長するであろうからみんなの足が速くなり、きっと来年は負けてしまう」と言いたいらしい。

「 」部分は全部私が補ってみたが、万事意味不明だ。幼稚園の子どものかけっこにガチの勝負を見に来ている人がいるなんてΣ(・ω・ノ)ノびっくりだぜ。

父にそう言われたY君は同調した。調子を合わせただけじゃなく、本当にそうだと思ったらしい。
そのエピソードをY君が私に話した際、Y君は「『来年は一番は狙えんな』って、親父は言ってました」と素朴に報告していた。

Y君は、この『来年は一番は狙えんな』がアウトな発言だということ、少なくとも聞く側が気持ちよく聞くことのできない類いの言葉だということが、当時自分ではわからなかったらしい。
と、電話で私に言っていた。

このようにして、他にもあれこれ急にAちゃんが示し始めた「違和感」に驚き、自分がついていけていないことも、果たしてそれが(つまりAちゃんが)正しいのかもわからないと言う。
自分の至らなさと、考えてこなかったツケだとも言う。

それを聞いて、そこまで自己分析できているなら大したもんだと私は思った。あとは学べ。人間は学ぶことからしか変われないんだよ。

ところが、Y君はただ頷くだけじゃなく、「でも……でも……」と言う。

以下、「でも…」の内容。

  • ①「でも、Aちゃんの言い方が強くて。僕はそんな風にAちゃんに言ったことないのに」。

  • ②「でも、Aちゃんが本当に正しいとも言いきれないじゃないですか」。

  • ③「でも、こんなこと言うとがっかりされるかもしれないですけど、どんなにひどくても自分の親なんですよ」。

  • ④「でも、ジジババとして孫の成長を心配するのは当たり前じゃないですか」

  • ⑤「でも、男社会は上下関係なんで。男社会では劣ってたらいじめられるんですよ!」

~💡私はこんなふうに考えた~

①「でも、Aちゃんの言い方が強くて。僕はそんな風にAに言ったことないのに」について

Aちゃんこと私の妹は、Y君の「変な親でごめんね」という軽めの謝罪に対し、「親だけじゃないし」と言ったらしい。

笑!

書いている今は、Aちゃんあっぱれ笑笑! と思うのだが、電話で切々と訴えるY君の声を聞いている時は、『Aちゃん! なんてヒドイの……🥺』と思ったから、本人から直接話を聞くのは本当に大事だなと思える。
私は常々自分が妹の側に立っていることを基本的には当然のこととしているが、Y君の切なる声も聞いて、どっちの気持ちも体験してみるのはY君を憎みすぎないという点において私にとってめちゃくちゃ大事なことだった。

上記のような発言から、Y君の、意見の幼さと、思慮が足りない点が見て取れると思うが、憎めないキャラであることも確かで……。
それだから妹もこれまで受け流してきたのかもしれない。泳がせてきたというか🐟️

私だってそうだ。時々目の前でぶちかまされるY君の変な発言にぎょっとしつつも、違和感を示すことをしてこなかった。(だって機嫌よくしゃべってるのになんかかわいそうじゃん。)
恐い義理の姉だと思われてもいけない……と思った。それで、必要な際はそのつどAちゃんがY君を注意していた。

②「でも、Aちゃんが本当に正しいとも言いきれないじゃないですか」について。

これは、私も揺れるところだ。「学んでほしい」と言いつつ、この考え方を押し付けることになるのではないか、と思った。
フェミニズムについて考える時も同じことで揺れる。男女不平等を感じてないのならその人はもう放っといていいのではないか? その人の世界には不平等はないのかもしれないのだし……。
Aちゃんが一番目の子どもを産んで4年、私は4年間、AちゃんとY君の二人に「学ぶ」ことを求めて本を渡し続けてきたのだが、それだってずいぶんお節介だとは思っている。これまで読まれずにいた本のことを時々思っては、勝手に落ち込んだり諦めたりしていた。
それが、急に猛スピードでAちゃんにヒットして実を結んだから、私は喜びよりも、いいのかな……?こんなに影響力を持ってしまって、と思っている。
宗教みたいじゃない? 私が妹を闇の力で動かしているみたいじゃない???←→でもお前は学べよ!学べよ夫よ!!!

③「でも、こんなこと言うとがっかりされるかもしれないですけど、どんなにひどくても自分の親なんですよ」
④「でも、ジジババとして孫の成長を心配するのは当たり前じゃないですか」について。

私にはこれはDVか虐待のサバイバーの言葉に聞こえてしかたがない。Y君が両親から受けたのは虐待に近いものだと個人的には思っている。
「親」でも「ジジババ」でも、本人が望んでないことをたとえ「よかれと思って」であっても、言ってはいけないんだよ、とY君には話しておいた➿わかったかどうかはわからない。

⑤「でも、男社会は上下関係なんで。男社会では劣ってたらいじめられるんですよ!」について

出た出た出た!わかってるようで全然わかってなかったー!
現在、みんなで「男社会」なるものを改善していこうとしていて、そういうものを見直そうとしている。職場はもしかしたら男社会の上下関係が強く残っていて、Y君の日々の実感としてはそこから解放されない気がしているかもしれないけど、みんなはよくなる方へいこうとしてる。どっちに行きたいか? と考えた時、男社会の上下関係なんか無い方に行きたいじゃん。だから、どっちに自分や子どもを合わせるか?と考えた時、現状じゃなくて、目指したい方に合わせたいじゃん。
それに、「劣っていたらいじめられる」のだとすると、「あなたは劣っている人のことをいじめるんですか?」ということになる。けど、私はY君がそんな風にするとは思えない。たとえ相手が「劣っていた」としても、いじめないと思う。そもそも、「劣っている」なんて思わないんじゃないかな?
なりたい方に向かっていきたいし、Y君もそうしたいと思っているんじゃないかな?

ということを話しました。ええ、話しましたとも。熱弁。

Y君は神妙に聞いていたけど、どこまで伝わったかはわからない。
でも、自分から求めて電話をしてきたから。そんなことは初めてだったから。結局、いくら周りが言っても、自分から欲しないと何も始まらないのだと思う。

もう夜中の0:30で、2時間近く話していたことになる。

すごいなーよかったよなーと私は感動していた。
周りにこんなことを話せる人や、わかる人はいないのだと言う。なかなかいないよね。
よく私にかけてくれたね➿

よかったなーやっと始まったんだな。

今回、みんなで読み始めた本はこちら:

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