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【第3輪】銭湯から煙突が消える?! ノスタルジックを環境・景観から哲学する

こんにちは。

ユウト・ザ・フロントと申します。

銭湯のシンボル

こう聞いて、読者の皆さんは何を思い浮かべたでしょうか。

のれん?
ケロリン?
サウナ?
牛乳?

このようなものが浮かんだでしょうか。

そんなあなたは、銭湯の中に入りすぎです。銭湯の一大台シンボルは、銭湯の外にあります。

脳内銭湯で、外の世界へ飛び出してみてください。

そして、上を見て。



そう!煙突!

銭湯の中に入るまでもなく、そこに銭湯の存在を告げる煙突。

まさにシンボル。

しかし、現代では、銭湯の煙突たちが消えていっています。

一体何が起こっているのか。

ノスタルジックなシンボルとしての煙突は、今後どう守っていけばいいのか。

こんな問題を、本記事では考えていきます。


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こんにちは。

稲荷湯3代目のまもるです。

ここからは、僕が銭湯の煙突の役割をお伝えします。

昔、といっても、戦後に銭湯の需要が高まった際には、薪を燃やしてお風呂のお湯を沸かしていました。

煙突ができた理由は、薪を燃やした際の排ガスを高い位置から出すことで、それが地表に落ちてくるまでの濃度を薄めるためらしいです。

現在では、重油やガスを使ってお湯を沸かしている銭湯が多いため、煙突が形だけ残っているところも多いです。

また、当時は今のような高層ビルはなく、銭湯の煙突が街の中で一番高い建造物だったと聞いています。

そんな意味で、銭湯の煙突は地域のランドマーク的な役割もあったのだろうと、僕は考えてます。

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ちょっと稲荷湯の話をします。

神田の稲荷湯も、17~18年前までは薪を燃していたため、煙突はあります。

稲荷湯煙突

(写真中央の建築物が煙突です。)

近隣の方の木材や、菖蒲湯で使った菖蒲を燃すこともあったようです。祖父の時代には、神田の稲荷湯から富士山が見えたと聞いています。

そのことから分かるように、当時では銭湯の煙突が街で一番高い建築物であり、街の中心となっていました。

ですが、だんだんと神田・大手町には高層ビルが立ち始め、煙突よりも高い建物も造られるようになりました。

すると、排ガスが近隣のビルについては迷惑だ、という話が浮上しました。全国的にもダイオキシンなどの大気汚染が問題になっていたことから、稲荷湯も薪からガスへと変えました。

当時のランドマークであった煙突は、現在、高層ビル群の中に影を薄めています。稲荷湯のお客さんでも煙突の存在を知ってらっしゃる方はいるのかな。

でも、ふと上を見上げてみると、そこにあり、わたしたちを高いところから見守ってくれているのかな、とたまに感じます。

稲荷湯煙突2


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銭湯の歴史は、煙突の歴史。

しかし、ここ最近、銭湯の煙突を見る機会が減った気がしませんか?

煙突が減っている理由は主に2つです。

①老朽化


コンクリートの耐用年数。

これは状況によって変化しますが、50年ほどは維持されるケースが多いです。

しかし、銭湯の歴史は長く、同様に煙突の歴史も長いのです。

2年前の大型台風で、銭湯の煙突が折れて倒壊するという事故が起きました。

歴史を感じさせるノスタルジックな見た目の裏には、当然危険も孕んでいることがお分かりいただけるでしょう。

そのため、安全管理的な文脈で、銭湯の煙突はどんどん姿を消していっているのです。

②そもそもガス or 重油ボイラーになった


前述の通り、かつては多くの銭湯が薪を使用して、湯を沸かしていました。

しかし、現代では、ガス or 重油ボイラーが主流です。

その理由は以下の3つが考えられます。

・薪を燃やす時間拘束が無くなる。
・温度管理が自動で行える。
・燃料費が安定しており管理が楽。


元々、銭湯は薪を使用する前提だったため、戦前では「23m」と煙突高さが、燃焼の効率性などの観点から、定められていました。

この高さこそが、煙突がシンボルたる理由でしょう。

しかし、ガス or 重油であれば、ここまでの高さは要らないのです。

このように、安全のため、そして燃料の変化のため、煙突は徐々に姿を消していっているのです。

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煙突の絶滅は、今後避けられないのでしょうか。

環境の観点から、また町づくりの観点から、行政の渡辺さん(仮称)にお話を伺います。


ユウト:こんにちは。

渡辺さん:本日は宜しくお願いします。

ユウト:さて、今回は「銭湯の煙突」に関して、行政側にやっていただきたいことについて考えてきましたので、その是非を伺いたいと思っています。

渡辺さん:はい。分かりました。

ユウト:個人的には「煙突の補修」を行政が支援するメリットは①環境②町並みの二つだと思っています。

まず、環境なのですが、燃料を再生可能エネルギーなどで賄える仕組みを導入し、それに伴い、煙突等の補修にも経済的な支援が行われるという施策はどうでしょう。

渡辺さん:まず、現在の話で言うと、銭湯という特定のジャンルでのそうした支援は行政で行なってはいないと思います。

ただ、中小企業に対し、省エネ診断を行なったり、その上で再生可能エネルギーに代替していただけた場合の支援などは行われていると認識しています。

詳しくは、エコサポート2021をご覧ください。

ユウト:なるほど。続いて、町並みに関してなのですが、ノスタルジックな風景としての銭湯の煙突は、東京という町のアイデンティティの一つだと思っています。

その上で、景観的な観点から、煙突の補修を支えるという考えは行政側には無いのでしょうか。

渡辺さん:どちらかと言うと、防災的観点の方が行政では強いと思います。

老朽化による事故を防ぐ。その上で、町並みを守っていくという動きは生まれるかもしれません。

ユウト:確かに、まずは人の命を優先に考えたいですね。この度は、お忙しい中、お時間をとっていただき、ありがとうございました。

渡辺さん:こちらこそありがとうございました。

むすびにかえて


遠くから見ても、その根本には温かい空間が広がっていると分かる。

これが銭湯の煙突の良さです。

確かに世界の流れは変えられませんが、向かい風の中でも工夫を凝らしてきたのが人類の歴史です。

この記事を読んで、「煙突のノスタルジック・・・好きかも!」と少しでも思ってくれたそこのあなた。

あの大事なシンボルを守っていくために、僕たちと一緒に(ゆる〜く)考えていきましょう。

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