82歳のドラマー
好きなことに年齢なんて関係ない。
ドラムを無心に叩く彼の姿が、そう訴えていた。
彼と出会ったのは、ジャズバンドの生演奏が聴けるディナークルーズだった。
出演は、彼が属する沖縄で活躍中の「スーパーホンカーズ」というジャズバンドだ。
メンバーには若い方もチラホラいたが、平均年齢は60歳前後といったところだろうか。
その中でも一際注目を浴びていたのが、82歳のドラム奏者の彼だった。
82歳とは思えないほどの力強さと軽快なリズム感。失礼ではあるが、倒れてしまわないかと心配になるほど激しいパフォーマンスをすることもあった。
そんな彼がなぜあそこまで輝いて見えたのか。
それは年齢だけじゃない。
テクニックでもない。
じゃあ何かって。
それは、ドラムが好きだと言う彼の気持ちが痛いほど伝わったからだろう。
私の全身に立った鳥肌がそれを証明していた。
彼のソロが始まると、まるで会場は彼の空気そのものになって誰も邪魔ができない。
手拍子だって止まってしまうぐらいだ。
何かを好きな気持ち。
何かに一生懸命な姿。
これらに理由なんていらない。
わからないけど好きで、
わからないけど夢中になってしまう。
好きなことって、だいたいそういうものだと思う。
彼の姿はまさにそうだった。
理由もなくドラムを愛し、
気づけばソロの演奏が止められないほど
身も心もドラムに取られてしまっているようだった。
そんな彼を見て、私は決めた。
好きなこと、やりたいことに正直になろう。
真っ正面から向き合って、体当たりして。
挫けたっていい。上手くいかなくたっていい。
好きな気持ちに遅い早いもないし、
上手い下手もない。
だけど、その好きな気持ちが真っ直ぐであれば
必ず誰かの心を動かす。たとえどんな結果であってもだ。
何かを好きな気持ち。
それだけは生涯大切にしていこうと思った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?