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自分の中のアンコンシャス・バイアスに気づいた話【前編】

5月10日に担当した翻訳本が刊行されました。

この本を編集する中で、自分で無意識な偏見を持ったまま編集をしてしまっていたことに気付かされることがありました。

その問題となった原稿の一部を抜粋します。これは女性初のIBMのCEOになったジニー・ロメッティの言葉です。

ジニー・ロメッティ「どんな場面でも学ぶ機会はある――私は常にそう考えてきたわ。そして実際、その原動力になったのが好奇心でした。多くの人が私にこう尋ねます。『今、あなたが人を雇うとしたら、その人に何を求めますか?』それに対して私は、一番大きな要素は好奇心だと答えるでしょうね」
『HOW TO LEAD』ディヴィッド・ルーベンシュタイン

これだけ見て違和感がある人はどのくらいいるでしょうか。何が問題なのか説明する前に、この本を編集した際の経緯からお話します。

すごい豪華なビジネス書と思ったけれど

この原書を最初に見たとき、ジェフ・ベゾス、フィル・ナイト、ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットなど、そうそうたる経営者の名前が並んでいてすごい豪華な本だと思いました。初めて読んだときは、ビジネス書だろうと思って読んだのですが、読み終わって全く違う印象を受けました。「これはビジネス書というより人生の熱い話だな・・・?なんか読んだら元気出た」

何より、全く名前をしらなかった多くの女性のリーダーたちの話が心にささりました。これは私が女性だから特に共感できたということもあると思います。インド人の移民で初めて女性のCEOになったインドラ・ヌーイ、IBMの初の女性CEOジニー・ロメッティ、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のメリンダ・ゲイツなど、「こんな人がいたんだ…」と彼女たちの強さと行動力に驚きの連続でした。またドキュメンタリー映画を見てファンになったルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)が載っているのも感激でした。

インタビューされる人は31人いますが、その中で9人が女性です。3分の1いかないこの人数を多いと思うか少ないと思うか、人によって感じ方は違うでしょう。私は、この人数は、著者のルーベンシュタインがある程度バランスを意識したものではないかと思いました。このインタビューは、もともとブルームバーグTVによる番組なのですが、他にも著名な人はたくさんいます。

ビジネス書読まない人にも届けたい

今回、自分自身がいちばん感動したところ、「性格、性別、人種、性的指向など、多様なタイプのリーダーがアメリカにはいるということ」、それを日本の読者に伝えたいと思いました。日本のリーダー、政治家や企業の経営者、社長でイメージするのは年配の男性という先入観がありましたが、アメリカではそうではないというのが(知ってたつもりでいたけれど)衝撃でした。

普通に編集したら、日本のリーダーに憧れているようなバリバリのビジネスパーソンが読むような本になりそうと思ったけれど、そうしたくないと思いました。そういう人だけでなく、「わたしがリーダーになるなんて考えたこともない」ような人にも読んでもらいたいと思ったのです。
私自身も、「リーダーになるなんて考えたこともない」ような人ですが、この本を読んで「どうして自分はリーダーになることを考えたこともなかったのだろうか」と思うようになりました。

とは言っても、この本に載っている人たちはケタ違いにすごい人たちです。さらにアメリカという国への信頼、「努力すれば報われる」「アメリカはもっと良くなる」という気持ちが今の日本の状況と大きく違うと感じます。

日本の読者に少しでも身近に感じてもらうにはどうしたらよいか。原書と日本の読者の橋渡しをしてくれるような日本版解説を、どなたかにお願いしたいと思いました。

昔読んだ『働く女子と罪悪感』という本を読み返し、この著者でありジャーナリストの浜田敬子さんに日本版解説をお願いしようと思い立ちました。ここに載っている多くの女性リーダーは、女性初の何かになった方がほとんどです。「女性初」のリーダーは、「ロールモデルになること」を受け入れ、後進のために道を切り開くことを続けています。女性初の「AERA」編集長になり、今はフリーのジャーナリストとして活動されている浜田さんの姿が、このインタビューに出てきた方たちとかぶって見えました。舞台は違えど、インタビューに出てくるリーダーたちの気持ちを理解した上で、日本の読者にも寄り添えるのではと思いました。

浜田さんから指摘がなければ気づかなかったこと

お手紙をお送りし、幸いにもこの本にご興味を持っていただき、お引き受けいただくことができました。

「よかった〜」と一安心して翻訳原稿をお渡ししている間に、浜田さんからとある指摘をいただきました。そのときお渡しした原稿の一部が、冒頭の引用です。

ジニー・ロメッティ
「どんな場面でも学ぶ機会はある――私は常にそう考えてきたわ。そして実際、その原動力になったのが好奇心でした。多くの人が私にこう尋ねます。『今、あなたが人を雇うとしたら、その人に何を求めますか?』それに対して私は、一番大きな要素は好奇心だと答えるでしょうね」
『HOW TO LEAD』ディヴィッド・ルーベンシュタイン

この言葉を見て、どう思いますか?
何か違和感がありますか?それとも特に気になるところはないでしょうか?

私は全く違和感を持ちませんでした。

でも、浜田さんに指摘を受けて初めて、自分の中にアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)があったことに気付きました。

長くなったのと、本当にこの引用に違和感がないか考える時間をとるために、続きは後半のnoteへ 。

本はこちら⇩

浜田さんの『働く女子と罪悪感』が文庫化したそうです!


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