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光と影のサンタルチア

12月13日に北欧で行われる聖ルチア祭は、今はキリスト教に習合されていますが、恐らくはケルトに起源を持つ、冬至のお祭りだったと思われます。
聖ルチアに選ばれた少女を先頭に、少女や少年たちがロウソクの冠を被り、白いドレスに赤いベルトを巻いて、歌いながら行進します。
私はつい、丑の刻参りを連想してしまいました。

それはともかく、この時に歌われる歌が「サンタルチア」だということで、何とも違和感を覚えたものです。
有名なナポリ民謡であるこの曲は、タイトルこそ「聖ルチア」ですが、歌っている内容はナポリの港の美しさを讃えたものだからです。

光を意味するルチアを讃えるお祭りが、太陽の力が最も弱くなる冬至の日に行われるのは、北欧の暗く長い夜を思えば至極もっともなのですが、明るい陽光の降り注ぐナポリの「サンタルチア」は地名です。
堀内敬三の訳詞では、以下のようになります。(1番のみ)

月は高く 海に照り
風も絶え 波もなし
月は高く 海に照り
風も絶え 波もなし
来よや友よ 船は待てり
サンタルチア サンタルチア
来よや友よ 船は待てり
サンタルチア サンタルチア

今回イベントで冬至の儀式を行うことになり、構成に頭を悩ませた挙句、ルチア祭のスタイルを取り入れることにしました。
(イベント詳細については、こちらのブログ記事をご参照下さい)
調べてみたところ、北欧ではルチア祭に合わせた歌詞に変更していると分かりました。

wikipediaによれば、スウェーデン語の歌詞バージョンで有名なものは
Luciasången」別名「Sankta Lucia, ljusklara hägring」(聖ルチア、光の幻想)
Natten går tunga fjät」(ゆっくりと夜の散歩)
1970年代の幼児バージョン「Ute är mörkt och kallt」(外は暗くて寒い)
の3つとなっていますが、これらの歌詞が混ざったものなど、様々なバリエーションがあるようです。

とりあえず、見つかった歌詞を2つほど訳してみました。
英訳と機械翻訳を参考にしつつ意訳しましたが、誤訳もあるかも知れません。
なにぶん素人ですので、ご容赦下さいませ。

夜に庭と家のまわりを、ゆっくりと歩く
太陽が地球から離れるにつれ、影は暗く沈みこむ
我々の上で予言を触れ回る翼の夢
聖ルシアよ、あなたの白い蝋燭を点してください
呪文と闇の力を、あなたの光で照らしてください
祝福された炎の保護を、私たちにもたらしてください
我々の上で予言を触れ回る翼の夢
聖ルシアよ、あなたの白い蝋燭を点してください
我々の辿るべき道へと導く星は、
あなたの澄んだ炎、正しき巫女となる
我々の上で予言を触れ回る翼の夢
聖ルシアよ、あなたの白い蝋燭を点してください

これは「Natten går tunga fjät」(ゆっくりと夜の散歩)というバージョンかと思います。
運よく短調にアレンジされているものが見つかったので、イベントではこれを使うことにしました。
それにしても「翼の夢」って何だろう。
「天使の夢」なら、ヤコブの梯子のようなものかと納得がいくのですが。

外は暗くて寒い
すべての家で、火のついた蝋燭が
いたるところに輝いている
今誰かが来ている
私はそれが誰であるかを知っている
聖ルシア 聖ルシア
今誰かが来ている
私はそれが誰であるかを知っている
聖ルシア 聖ルシア
彼女は前へと歩きながら歌う
白い服を着た少女
頭に冠を被り、トレイを手にしている
今は嬉しいルシアの日
今は嬉しいルシアの日
クリスマスのことを思おう
クリスマスのことを思おう

これは「Ute är mörkt och kallt」(外は暗くて寒い)ですね。
悩んだのが「bär på en bricka」という一節。
brickaはレンガやレンガ状のもののことで、日本語の自動翻訳では「トレイを身に着けている」となっているのですが、レンガにしろトレイにしろ、どうも意味が分かりません。
が、ふと気付いたのが、聖ルチアのアトリビュートです。
拷問で両目を抉り出された聖ルチアは、絵画などでは眼球を乗せた皿を手にした姿で描かれたりします。
この「トレイ」は、眼球の乗った皿やお盆のことを差すのではないでしょうか。
幼児バージョンの歌とのことですが、全体的に結構怖い歌詞のような気がします。

それにしても、同じ曲なのにこうも歌詞が変わってしまうのは面白いです。
月に一度行っている「聖書読書会」でも、同じ曲でプロテスタントの賛美歌とカトリックの聖歌の歌詞が違うものを歌い比べたりしています。
良かったらアーカイブなど、ご覧になってみて下さいませ。

画像はMONT★SUCHT"Advent Jack in the box"

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