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あなたの人間関係をスムーズにするコツ~『「気がきく人」が大事にしている、ちょっとしたこと』を読んで

Clubhouse「耳で読むビジネス書」で紹介された七條千恵美さんの新刊。元CAで接客マナー講師の著者が自らの経験から「気がきく人」の考え方、習慣、実践方法を「7つのルール」として紹介している。本書ではその一部を紹介する。

相手に対する「期待」を手放す~押しつけない

気がきく人は「押しつけない」。私たちは人に何かをしてあげた時、つい「褒められたい」、「感謝してもらいたい」と思ってしまいがちだが、気がきく人は決して押しつけないという。「どうして気がついてくれないの?」という承認欲求を抑え、相手にベクトルを向けている。

あくまでもさりげなく、「ついでに」、「私も必要だったから」というスタンスで。筆者は本書の中で、仕事の時家に来て子供に食事を作ってくれたママ友が、筆者の分まで作ってくれていたこと、また、何も言わずに掃除機掛けまで済ませてくれていたこと、また別のママ友が「ついでだから」と買い物を買って出てくれたこと、などのエピソードを紹介している。

相手の立場に立つ~よく見て、よく聞く

気がきく人は相手の言葉の裏にある感情、本音に気づく。例えばメールを受領していたのに返信していなかったというような場合、「恐れ入ります。〇月〇日にお送りしたメールの件ですがご確認いただけましたでしょうか?」と再度メールを受け取ることがあるが、この時に気のきく人は
・受領の連絡を怠ってしまったことへの反省
・相手に気を揉ませてしまったことへの反省
・確認のご連絡をいただいたことへの感謝
・今後の対応を改善することについて

ここまで思いを巡らせ、返信する。発せられた言葉やメールに書かれた文字にある「隠された本音(ちゃんと受け取ってくれたのだろうか?いつ返事をくれるだろうか?)」に気づき、反省、感謝の言葉を発している。

また、よく人に何かの件で相談をした時、相談に乗ってくれたことに対するお礼はするが、その後の事後報告までする人は少ないという。筆者は以前、親身に情報提供してくれた人に対し、結果報告をしたところ、「普通は事後報告までしてくれる人は少ない」と大変感謝されたという。「相談に応じてくれた後のフォロー」も忘れずにしたいものだ。また、気がきく人は「事後報告してくれる人は少ないのにも関わらずしてくれた」というような、些細なことも見逃さず褒めている。人は自分のした「ちょっとしたこと」も拾って褒めてくれると嬉しいものだ。

想像力を働かせる

あなたは遅刻した時、どんなことが頭を巡るだろうか?相手の心象を悪くしないようなもっともらしい理由?どのタイミングで連絡すべきかということ?本当に気がきく人は、まず相手が遅刻により、待つ時間を有効に使えるような配慮をするという。そのためには「到着時間の目安」をまず伝えると良い。それにより、相手はその場で待つべきか、別の場所でお茶を飲んだり本を読んだりして待つなど、時間を有効活用できる。

また、仕事のメールで送付済み文書や契約書などの変更を伝える、というような場合、気がきく人は相手に配慮した伝え方をしている。短時間で訂正箇所がわかるよう、メール本文に箇条書きにするなど、相手に探す時間を使わせない工夫をしている。

アンケートや締切のあるものはすぐに返事を出すことも相手の立場に立った行動だ。返事が早く揃えば、相手もその分早く次のアクションに移ることができる。締切前か後に関わらず、可能なものはできるだけ早く提出しよう。ちなみに、筆者はそうした書類はもらったその場で処理したり、写メを撮ることで忘れないようにしているという。

いずれも些細なことかもしれないが、やるとやらないでは相手の負担が全く違ってくる。「相手の状況」に想像力を働かせよう。

周囲の人に心を寄せる

気がきく人は「次の人のために」という発想が常にある。例えばトイレや洗面台を使った時、「次の人のために」できるだけ快適な状態でその場を去りたいものだ。トイレットペーパーは切れていないか、洗面台は水浸しになっていないか、など。
仕事における「引継書」も同じ発想だという。後任者が困らないように、情報がすぐ見つかるように、配慮した引継書は見る方も頭にスッと入ってくるし、後任者にとってはその気遣いが嬉しいものだ。

また、気がきく人は周囲の人のピンチに気づいて、手を差し伸べることもできる。私は今朝、立ち寄ったカフェのレジで手持ちのお金(ジョギング帰りで20ドル札1枚しかポケットになかった)が50セントほど足りなかった。少々気恥ずかしい思いでコーヒーのサイズを「M⇒S」に変更しようとしたところ、隣の見ず知らずのご婦人がサッと1ドル札を差し伸べてくれた。結果として丁寧にお断りしたのだが、「いいの?私にも、よくあることだからいいわよ」とニコリ。その気持ちと行動が嬉しかった。以前、通勤電車で咳が止まらなくなった私に対して、キャンディーをくれたご婦人の話を書いたが、こういうところはアメリカ人はさり気なくて、上手だ。見習いたい。

「一人ぼっち」を作らないのも周囲の人に心を寄せることだ。新しく職場に来た人、転校生、新しいメンバー等々、あなたの「もう慣れましたか?」「わからないことはありませんか?」の一言がどんなに力になるか想像してみよう。

ユーモアは全てを解決する

人には誰でも失敗はある。そんな時に気遣いができる人は相手に負担を感じさせないよう、ユーモアで上手に相手の心を和ませることができる。本書では筆者がCA時代に、強風による影響で目的の空港でない場所に着いたことをお詫びした際に、お客様から「いいんだよ、本当はあまり行きたくなかった出張だからね。」といたずらっぽく笑って返してもらったこと、機内食サービスで本来二種あるはずの選択肢がなくなってしまったことをお詫びした際に、「僕はどっちの食事でもいいですよ!雑食だから何でも食べます(笑)」とやはりユーモアで返されて救われたというエピソードを紹介している。

とっさの時、このように気持ちの余裕をもった返しができるかどうかは人間力が試されるが、こういうやり取りができると人間関係もずっと平和になるだろう。

また、ミスをしてしまったり、自信をなくしている相手に対し、自らの失敗談を話して和ませる、ということも書かれている。自分にとっては過去の「黒歴史」でも、それが誰かを勇気づけることになるかもしれないと思うと、人生全てネタであり、無駄は一つもないことがわかる。実際に筆者の七條さんご自身もCA時代は様々な失敗を繰り返してきたそうだが、そうした経験を基に「正解」がわかり、こうして本やノウハウとなって生きているという。

「誰にでもできる」けどしていないこと

本書は筆者の「『気がきく人』がひとり増えるだけでも、その周囲にいる人が幸せになる」という思いから書かれている。わが身を振り返ってみると、それなりに「気を遣って」行動してきた「つもり」であったが、何かをやって「感謝されたい」と考えてしまったこと、相手の言葉の言外を読まないで反応してしまったこと、自分のとる行動で、相手が受ける影響を深く考えていなかったこと、など反省する点が多々ある。

本書に書かれていることは副題にもある通り、「誰でもできるけど多くの人がしていない」ことばかりである。7つのルールに共通するのは「相手目線に立って」行動すること。サービス提供者であってもなくても、自分の取る行動により、相手がどう感じるか、どういう影響を受けるか(助かるか、困るか)、という視点で考えると良いのだと思う。人間関係は仕事にもプライベートにもすべてに影響する。ならばその関係性は良い方がいいし、そのきっかけを「自分から作れる」のなら、それに越したことはない。そんな人にお薦めの一冊である。


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