夢を追いかけて、幾年月過ぎたかな。
数えるのも馬鹿馬鹿しくなるくらいだね。
手に持ったF4サイズのスケッチブック。
風景画が３点描かれている。
その全てがこの池の畔のベンチからの画だ。
水面に映える桜かツツジ。
どっちだろう。
甘い描写に思わず懐かしさを覚える。

夢を叶えて、毎日が楽しいですか？
あなたのお名前はちらほらと見かけます。
手に持ったF４サイズのスケッチブック。
今はもう端末を駆使しているのかな。
まるで別人かのような作風になったね。
水面に写す革新的。
ため息一つ。
あの頃の画はとても魅力的だった。

夢を待ち続けて、何回目の春だろう。
除夜の鐘が鳴る日に祈るのもうんざりだね。
手に持ったF４サイズのスケッチブック。
東京のビル群は上手く描けますか？
雑多する街の賑わいを表現できていますか？
水面に映る私の顔はひどい。
賢く生きるよ。
古い約束を涙とともに流していこう。

田舎を飛び出て上京したあなた。
取りに戻ると置いていった。
F4サイズのスケッチブック。
大切にしていたのにね。大切にされていたのに。
私共々、忘れられたのね。

来年の桜は、誰かと一緒に。