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平野形成の原因を探る②【都道府県シリーズ第2周:山形県 小国町編no.1-2】

山形県南西部の小国町(おぐにまち)は大部分は山間地域ですが、市街地一帯は平野部になっています。
平野と言っても谷が土砂で埋め立てられてできた細長い平野です。
一般的に山間地域の河川は急流なので、土砂は溜まりにくく平野はできにくい。

ではどうして平野ができたのでしょうか?
前回は「下流域で堰き止めが発生し、現在の平野部が一時的に湖沼になったのではないか?」と仮説を立て、下流部の地形と地質を確認しました。

今回は「堰き止め」を起こす原因となる土砂崩れを起こしやすい地形を探していきたいと思います。


平野部周辺は〇〇地帯だった

前回話したような「断層活動による隆起」以外で堰き止めが起こる原因は、「土砂崩れによる土砂流出」です。
また堰き止めの原因がどうあれ、ある程度短期間に土砂が流出するような地域でなければ、平坦面は形成されません。

小国町市街地周辺の地形図:スーパー地形より抜粋

まずは全体を見ます。
周囲の山地のうち、このスケールで気になる地形が認められるのは南西北西の山地です。
「えぐられている」かのように見える谷地形が目立っています。
まずは南西の山地を拡大して詳しく見てみましょう。

小国町市街地周辺の地形図②:スーパー地形画像に筆者一部加筆

赤点線で囲みました。
小さいので分かりにくいかも知れませんが、上の図と見比べてみてください。大きく分けると河川(横川)を挟んだ北と南に分けられます。

まずは北の山地を拡大します。

小国町市街地周辺の地形図③:スーパー地形より抜粋

どうでしょうか?
「えぐられている」様子が見えるでしょうか?

小国町市街地周辺の地形図④:スーパー地形画像に筆者一部加筆

赤点線が緩やかな地形急傾斜な地形の境界です。
斜面は大局的に矢印の方向に傾斜しており、長い年月の間に、この方向に土砂が流出したと考えられます。

それにしても赤点線の西側は、ずいぶんと緩やかな地形ですよね。
さらに拡大すると細かい凹凸があり、シワ状の特徴的な地形もあります。

始めに言ってしまいますが、ここは地すべり地形です。
と言っても、それは現状で活発に活動するようなものではなく、「かつての巨大地すべりの残骸」と考えられます。

なお川(横川)を挟んだ南の山地も大きな地すべり地形が並んでいます。

つまり小国町市街地の西の山は、大地すべり地帯だったのです。

念のため確認

自慢ではないですが、私の「地すべり地形を見る目」は確かです(笑)
ですので十中百九そうだと思いますが、念のため「地すべり地形分布図」で確認してみましょう。

地すべり地形分布図は様々な手段で閲覧できるのでしょうが、私はいつも防災科学技術研究所のJ-SHIS Mapを使っています。
これは地震時の震度分布図の閲覧が本来の目的のようですが、私はもっぱら「地すべり地形分布図」目当てです(笑)
グーグルマップのようにマウスで自在に拡大縮小でき、場所の検索もできるので便利です♬

小国町市街地周辺の地形図⑤:「J-SHIS Map」の画像に筆者一部加筆

まずはコチラ。
「J-SHIS Map」は国土地理院地形図をベースにしています。
小国町市街地の平野部をざっと点線で囲みました。
これに「地すべり地形」を表示させると・・

小国町周辺の地すべり地形分布:「J-SHIS Map」の画像に筆者一部加筆

うわ・・凄いですね・・・。
赤点線で囲ったのが、上で話した大地すべり地帯です。
しかしここだけではなく、周辺一帯にも大小様々な地すべり地形があります。

小国町周辺の地すべり地形分布:「J-SHIS Map」より抜粋

北の山地を拡大したのがコチラです。
この図では斜面の一番下までを「地すべり地形」として図示していますが、私は違うと思います。
と言ってもこの図が間違っているということではありません。
おそらくこの図は最近判読されたものではなく、精度の荒い地形図をもとにしたもので、疑わしい場所も含めて広めにとっているのでしょう。

と言うことで、今回はここまで。
次回は「地すべりの残骸」を詳しく見つつ、そこから感じられる「人間社会の栄枯盛衰」についてお話しします。

お読みいただき、ありがとうございました。

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