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夢の終わりは始まりで ~羽生結弦~

この人は、想像の全てを超えていく。
羽生結弦のことだ。

今日おこなわれたスケートカナダのフリーで、彼は素晴らしい演技と世界最高得点で優勝を決めた。その時に思い浮かんだのが、冒頭の一文だった。彼はいつだって「終わりはまだここじゃない」ということを示してくれる。

「フィギュアスケートに恋して その3」で書いたように、2011年からずっと彼の演技を見続けてきた。同時代を生きていることが奇跡のように思われる程の、素晴らしい結果を残し続けている選手ではあるけれど…決してその道のりは順風満帆なものではない。度重なる怪我や病に立ちはだかるライバル達、見ているこちらの方が弱気で不安になってしまうような壁が何度も何度も何度も現れる。だけど彼はいつも、いつだって前を向いて。現状を認識した上で最善の手は何かを考え尽くし、実行する。言葉にすれば簡単だが、行なうには途轍もない意志力が必要なはずだ。しかし彼はやり遂げる、そうやって幾度だって壁を越えてきた。

今回も、そうだ。

昨シーズンの世界選手権ではジャンプの申し子のような後輩選手、ネイサン・チェンに後塵を拝することになった。フィギュアスケートはピーク年齢の短い競技と言われている。男子の場合は一般的には23歳頃がピークだという話だ。そう考えると今からまさにピークに向かおうとする若手選手と、ピークを過ぎて故障も抱えた選手…条件だけ見ればいくらか不利なようにも思える。「彼ならば、きっと…」いくらそう信じていても、ここ数シーズンは怪我に泣かされる姿も見ている。不安は去らない。

また二度も五輪を連覇した身だ。この過酷な競技では、一度金メダルを手にしただけで引退する選手も多い。いつ引退を宣言されても、決しておかしくはないのだ。普通ならば… ファンであるからこそ、競技を知っているからこそ、不安も湧いてくる。彼を心から信じたいけれど、身体が資本のこの世界は時に残酷だ。現に、最初にこの競技に引きずり込んだロシアの王者は、翌シーズンに入ってすぐ、股関節の故障で引退を余儀なくされた。

だから心の何処かに予防線を張りたい、あまり期待し過ぎると辛い…という気持ちもあったりする。

 

だけど彼は、そんな不安の全てを今日蹴散らしてみせた。
最高の結果と共に。

「羽生結弦という人間にどれだけの事ができるのか、見てみろよ」と告げてくるような、圧巻の演技だった。凡人である一ファンのささやかな怯えなど吹き飛ばし、今日も羽生結弦が羽生結弦であることを証明してみせた。

どれ程の怪我も病も、彼の信念を阻めない。彼はあらゆるものを乗り越えて、想いを貫き歩み続ける。例えそれが、自分自身の為にしていることであっても…その姿は人の持つ可能性というものを、観客にこれでもかと見せつける。 自分にとって彼は「知恵を絞り創意工夫し、努力を重ねることに意味はあるのだ」と信じさせてくれる人だ。凡人たる自分はその頂きにまでは決して辿り着けないとしても、それでも彼の生き様は前を向いて歩み続ける背を押すのだ。彼ほどの人がそれだけの努力をしているのだから、「いわんや凡人をや」である。

平昌が終わった後、夢の終わりのような気持ちになった。しかし夢の終わりは、新たな始まりだった。今日また、彼は新たな夢をひとつ紡いだ。


という訳で、みんな今日9時からのスケートカナダの男子フリー見てね!(壮大な番宣だったという…?)



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羽生結弦、それは人をポエマーにする男…
お茶の間ファンとしてゆるゆる応援するわ、と思っていても。どうしてもアツくなってしまうのをやめられません…。


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ユルリラム
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