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楽しみは、水曜日の午後にとっておこう

桔梗信玄餅がめっちゃ好きだ。といっても、お土産でもらったものを3回ぐらいしか食べたことがないので、本当は「めっちゃ好き」なんて言ってはいけないのだろう。うん、厚かましいと思う。なんかごめん、うすっぺらくて。それでも「桔梗信玄餅買ってきました」と言われると、ナイス、と心の中でガッツポーズをしてしまう。


まず、あの風呂敷を模したビニールの包み紙につつんでいるのがいい。それから、つまようじにもちゃんと箸袋ならぬ、つまようじ袋が丁寧についているところも。これは何かに似ている…そうだ、お弁当箱だ。学生の頃、お弁当はこんな感じで布につつんであって、あの袋の結び目を解く瞬間が、ひそかに好きだった。


そんなわくわくした気持ちとともにビニールミニ風呂敷をぺりぺり解くと、信玄餅の入った小さなパックと、醤油さしのような容器に入った黒蜜が。パックのふたをあけると、きな粉にまみれたぷるんとしたお餅。それに、黒蜜をかけてつまようじでつついて食べると、あっちゅー間にお腹の中。この小さなパックでは全然満足できない。もうきな粉がまわりにどれだけ飛び散ってもいい。黒蜜がこれでもかっていうほどお餅にかかって、食べにくくなってもいい。もう少しわたしに信玄餅を食べさせてはくれないだろうか、と最後の餅をつつくたびに思った。


で、なぜ急に信玄餅の話をしたのかというと、ローソンでこんな商品を見つけたからだ。

桔梗信玄餅揚げパン!


おほーっ!絶対美味しいやつですやん!!と目を輝かせた。パッケージもあの模様が再現されていて惹かれる。隣に置いてあった信玄餅メロンパンとほんの一瞬迷ったけど、揚げパンにふんだんにふりかけられたきな粉のビジュアルがメロンパンよりも美味しそうに見えたので、そっちを手にとった。



今日は帰ったら22時を過ぎるし食べるのは無理なので、いつ食べようかと考えたのだが、どうせならゆっくりおやつに楽しみたい。ということで、明後日の仕事が休みの日に食べることにした。


あまりにも楽しみだったので、隣にいた若い子に「明日わたし休みで信玄餅の揚げパンを食べるんです」とうっかり言ってしまった。


「何言ってんだ、このおばさんは」と思われそうなのに、その若い子(ニョロニョロちゃん)は心のやさしい子で、「信玄餅の揚げパンなんてあるんですか、いいですねえ、揚げパンとか間違いないですよねえ」とニコニコしながら言ってくれたのが、嬉しかった。


次の日、午前中から眼科に行って帰ったら、もう14時を回っていた。あまりにも外が冷たかったので、ココアをつくり、早速袋を開けた。その途端、ああ、なんだかすごく香ばしいきな粉の香りが、空中を舞うではないか。


一口食べると、揚げパンとはいえそんなにギトギトした感じがなく、生地は思ったよりふわふわしていてやわらかい。なんだかドーナツっぽい味がするなあと思ったら、「ドーナツ生地を揚げてます」と小さくパッケージに書かれていた。きな粉とドーナツ生地の揚げパン、最高の組み合わせ。


揚げパンのなかには、甘い黒蜜と白いゼリーぽいものがサンドされていて、きな粉の香りとともに、信玄餅さながらの食感も思う存分堪能しながら、ゆっくり味わって食べたはずなのに、やっぱりあっちゅー間にお腹の中におさまった。

ふわふわ、やわらか


そういえば信玄餅の由来は、「武田信玄が出陣の際、非常食として持って行ったお餅」といういわれが一説にあるらしい。あんな戦場で戦っていた束の間に、彼は鎧を着て、ぺこちゃんのような顔で信玄餅を食べていたのだろうか。それがまた数少ない楽しみだったのだろうか。


「美味しさは値段だ」と思う時もあるけれど、こうやって仕事がお休みの日に、ゆっくり甘い揚げパンを食べて、ココアを飲んで、武将のペコちゃん顔を思い浮かべていると、「美味しさって値段じゃなく、心の余裕かもしれない」と思ったりもする。


160円の揚げパンで素直に喜べる安上がりな自分で、なんか良かったなあ、と思った。





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