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書評 #71|女子サッカー140年史:闘いはピッチとその外にもあり

 「女性がサッカーをすること」は戦いの歴史であり、それは現在進行形であることが伝わる。

 何と戦っているか。それは社会のルールであり、そのルールから利する、主に社会的実権を握っている男性ということになる。既得権益はもちろんのこと、男性の視点から定められた「女性の理想像」への抵抗。男女を問わず、人間としての本質を守る戦い。そう表現すると大袈裟に聞こえるが、決してそんなことはない。性別による制約を超越し、理想の自分を追い求める人生を。他人と競い合わないように育てられた女性の闘争心を喚起することにも触れられる。社会の成り立ちや教育も含めて、想像以上に根源的な問題であることを理解できた。

 しかし、男子と女子のサッカーは異質であることも事実だ。男子は多大なる投資を享受してきたことは間違いなく、さらなる地位の向上を目指し、女子も必要な投資を授かるべきだ。ただし、その行為の適性を測る基準は何であるべきか。最終的には市場経済が決めるのだろうが、投資によって持続可能な需要が生まれるのか、生まれないのか。

 特定の対象に対する市場規模は突き詰めれば、人々の主観や価値観に準ずる。男子と女子のサッカーは同じ競技ではあるが、まつわる全てが同水準となることも不自然な印象を否めない。男性にしか表現できない魅力があり、その逆もまた同様。そして、その状況は地域や時期によっても異なるだろう。

 注目度の高い女子ワールドカップを開催する間隔を狭めることはできないのだろうか。そんな浅はかな考えしか思い浮かばない。私見を述べることも僭越な気がする。しかし、多くの人々が事実に眼を向けること。思いを巡らせるだけでも、女子サッカーの未来に注がれる光量は高まるのだろう。是正と創意工夫。女子サッカーに明るい未来を。


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