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書評 #93|オシムの遺産(レガシー)彼らに授けたもうひとつの言葉

 深い洞察による本質を見抜く力。イビチャ・オシムを一言で表現することはおこがましい。その視点と思考力は宇宙のような無限の広がりを帯びる。しかし、周囲の人々の言葉を通じてオシムに触れ、そんな言葉が頭に反響している。

 考えること。その一つ一つに真剣に取り組むこと。サッカーに対して本気で取り組んでいたであろう、ジェフユナイテッドの選手たちはその真意を理解し、全身全霊をかける。論理的な精神論とも言うべきか。その二つが合わさって初めて、個人は本領を発揮できるのかもしれない。

 本質や目的を見据え、それを完遂するために行動する。これだけを読むと効率的かつ実利的にも映るが、「選手の創造性を奪うな」という言葉が象徴するように、人間の成長を最重要視していた。そして、成長のためには何が必要か。その行いが「楽しい」ことでないと、真の成長は果たせず、継続もしない。オシムは論理の人でもあり、感情の人でもあるのだ。

 人生に対し、真剣に身を捧げること。戦争や貧困など、それがしたくてもできない環境を見つめてきたオシムからの投げかけは重厚だ。
 
「サッカーは人生の縮図だ」
 
「サッカー」はそのまま「仕事」に置き換えることができる。だからこそ、人々はオシムの言葉と一挙手一投足に魅了されるのだろう。

 走ること。それは努力することか。努力することでしか未来は開かず、その努力は他者をも利することでないと幸せは生まれない。努力する目的。サッカーの魅力。努力しよう。サッカーを楽しもう。人生をも。


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