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『奇天烈相談ダイヤル』感想:和風怪異版『Papers, Please』。あらゆる情報から「怪異」を暴く、気持ちよさ抜群のアドベンチャーゲーム

「その怪現象が、怪異の仕業か、はたまたただの思い過ごしか」
そんな「怪異について」判断を行う、電話相談員となるゲーム。

それが『奇天烈相談ダイヤル』です。

巷に跋扈する怪現象。都市伝説から妖怪まで、それらに遭遇したり、悩まされたりする人からの相談を受け、その原因が「本当に怪異か」それとも「怪異ではない」かを判定するのが、このゲームの目的です。

ゲームの根本は、有名アドベンチャーゲーム『Papers, Please』的。
提示された情報をもとに、怪異かどうかの正否を判断します。

ちょっと油断すると見落としてしまうくらい多くの情報があり、プレイヤーは自らの脳で情報を記憶し、判断を行います。

この相談内容は怪異だ! と確信したのに失敗だったときのあの「あれ!? どこか見落とした!?」という感覚。まさに『Papers, Please』を遊んだときと同じ感覚でした。



物語

1994年の冬。
主人公の女子大生、ミサコは、奇天烈相談ダイヤルのCMを見て、その事務所で新人相談員として働きます。

ゲームボーイ風なレトロ感がまた良い

奇天烈相談ダイヤル。
ゲーム開始時にCMが流れるのですが、何らかの怪現象を体験した人が、「これは怪異かも」と思ったときに電話する場所。それが奇天烈相談ダイヤルです。

その日からお試しで1週間働くことに。
先輩相談員・オーモリの資料面でのサポートもあり、一人で怪異相談に対応することとなりました。
直後、電話が鳴り始めます。いよいよゲーム本番です。



相談対応

電話に出ると、相談者とのテレビ電話が始まります。

そして表示される無数の質問項目。

プレイヤーはこれらの質問を駆使し、無駄なく、時間内に相談内容が怪異かそうでないかを特定します。

ゲームはこの相談対応を何人も繰り返していく、というシステムとなっており、ここがこのゲームの魅力の肝となっています。

名前を聞いたり…
性別を聞いたりします。

いくつかの質問を行うことで、怪異疑いの怪現象の詳細が徐々に明らかになっていきます。

特に、怪異の名前が分かっている場合はかなり楽。
怪異の名前を資料で検索し、その資料の情報と相談者の話の内容が一致しているかどうかを照らし合わせることが出来ます。

今回の相談者は、「赤いはんてん」という怪異に悩まされているようでした。

遭遇した時間も資料通り
遭遇した場所も資料通り
言われたことも資料通り

いくつかの質問を行っても、資料と相違ないかどうかを慎重に見極めた後、いよいよ判定に入ります。

最終ジャッジ、いわゆるPapers, Pleaseで通過させるかさせないかのジャッジ

結果はその場で判明します。
正しければ納得され、間違っていれば違うと言われてしまいます。

一番ほっとする瞬間

もし、相談者が怪異の名前を知らなかったり、わからなかったら。
そのときは、出没した場所や時間、見た目、持ち物、どのような言葉をかけられたか、などの情報をもとに、怪異を推測します。

これを繰り返し、1日の相談ノルマを達成すれば終了。
それを1週間繰り返すことでエンディングを迎えます。


夜間に出没する怪異や午前0字0分0秒に出没する怪異、学校に出没する怪異やエレベーターに出没する怪異、頭部が欠損している怪異や六本足の怪異、その他にも持ち物や決まり文句、襲われた人の特徴など、様々な情報を確認し、資料をもとに推理する。
基本的に、このシステムが全てです。

ゲーム性としてはシンプルであり、Papers, Please以外にも、例えば最近だと『8番出口』を楽しめたのであれば十分に楽しめるかと思います。
3D空間とテキストの違いはありますが、ゲーム根本の仕組みは「得られた情報の中で見落としはないか」という、プレイヤーの認知力の部分を発揮するというものとなっています。
何度も確認して見落としが無いと思ったらどこか見落として混乱する体験、また何度も確認して明らかな異変(このゲームでは情報の相違)を見つけたときの気持ちよさを楽しんだ体験があれば、きっと楽しめるでしょう。

そして、何より良いのが舞台が1994年のおそらく日本というところ。
Papers, Pleaseでは架空の国家が舞台でしたが、日本が舞台ということで、聞いたことのある怪異・都市伝説が出てくるところが思わずニヤリとします。
やはり、現実でも聞いたことのある情報がゲームに出てくるのは没入感が違いますし、まるで知り合いがゲームに出演しているような不思議な感覚になります。

都市伝説は都市伝説として、ネット上を漂っている概念のような印象だったのが、こうやってゲームにテキストとして登場すると、概念が具体化されたようにも感じますね。今まで触れることの出来なかった抽象的なものを手づかみするような気持ちになり、何とも面白い体験でした。

そしてその他にも、なんと「怪異そのもの」から電話がかかってくることも。
その感覚は、ぜひプレイして体験してみてほしいです。

このゲームでメタ的に面白いのは、資料と完全に合致している場合のみ怪異として判定し、どこか違いがあれば怪異ではないと判定すること。
だから、例え生首を持っていても、日本刀を持っていても、それも含めた全ての情報が資料と合致しなければ怪異ではないということ。
いや、生首を持っていて怪異じゃないという人間に遭遇したら、むしろそっちのほうが怖いんですが……。

少年の姿をしているということで、口裂け女の資料と合致していないため怪異では無いと確定。
いや、ハサミを持ってる時点で十分危険人物なんですが……。

『Papers, Please』のディストピア閉塞的世界観もまた面白かったけど、その仕組みをモチーフに、日本的で、おしゃべりなおばちゃんがいて、都市伝説をテーマとする色付けがされるとこうも別角度の魅力があふれるのかとびっくりした本作。

私はまだ全然やりこめていませんが、怪異の数は資料上100種いるようで。
どうやらそれを集めることで何か明らかになる情報もあるっぽく、やりこみたくなることこの上ないです。

そして驚くべきことにこのゲーム、無料なんです。
『Papers, Please』が1,200円であることを考えると、1,000円くらいにしてもいいと思える内容なんですが、なんとも太っ腹。
しかもsteamではなくブラウザ、DL版でも遊べるので、必ずしもハイスペックゲーミングPCでなくても良いのは素晴らしい。スマホでも遊べるようです。


Papers, Pleaseをモチーフにしつつ、日本特有のアレンジを加えて独自進化した奇天烈相談ダイヤル。
非常に良いゲームでしたし、サクッと遊べる軽めのタイトル。
なんなら、複数人で画面を見ながらワイワイ遊ぶのも良いかもしれませんね。

シンプルな仕組みながらついつい遊んでしまう魅力を持つ奇天烈相談ダイヤル、ぜひ遊んでみてください。


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