野球の歴史から考える「ファイターズの特製ユニフォーム」の持つ意味

5月13日(土)から18日(木)まで、プロ野球の北海道日本ハムファイターズは、新庄剛志監督が手掛けた特製のユニフォームを着用して公式戦を行っています[1]。

このユニフォームは上半身は黒を基調とし、ズボンは右足が黒、左足は赤を使用しており、開襟シャツ様の襟のある意匠が特徴です。

開襟シャツ様のユニフォームは現在の日本のプロ野球では珍しいだけに、注目を集める一着となっています。

こうした様子を目にして思い浮かぶのが1976年に大リーグのシカゴ・ホワイトソックスが導入した襟付きのユニフォームです。

ホワイトソックスの事例では、本拠地での試合は白地に藍色の襟の付いたユニフォームを、相手球団の球場の試合では上下ともに藍色のユニフォームに襟が付されていました。

このような特徴的なユニフォームが実現したのは、当時球団を所有していたビル・ヴェックが「サーカス王」として知られたP. T. バーナムに因んで「球界のバーナム」と呼ばれ、当時の常識からすると斬新な各種の取り組みを行ったからでした。

ヴェックについては、セントルイス・ブラウンズを経営していた1951年に歴代で最も身長の低いエディ・ゲーデルを出場させたり、ホワイトソックスでも1979年に「ディスコ破壊の夕べ」と題する企画を行うなど、野球という競技そのものに加えて観客の耳目を惹きつけるための工夫を重ねたことでも知られます。

経営者と指導者という違いがあるとしても、新庄監督も来場者を楽しませるという考えから特製ユニフォームを製作したことは、ヴェックの取り組みと同工異曲であると言えます。

もちろん、ヴェックの場合は「ディスコ破壊の夕べ」の際に観客がグランドに入り込んで警察が出動することになるなど、問題も抱えていました。また、新庄監督もファイターズの成績が振るわない中で奇抜とも言えるユニフォームを製作したことが一部の人たちの顰蹙するところとなっています。

それでも、二人とも野球の試合が持つ更なる可能性を追求しているという点で先駆的な試みを行っていることは大いに評価されるべきです。

その意味で、新庄監督の特製ユニフォームと、その製作と着用を認めたファイターズは、野球の歴史に重要な成果を残したと言えるのです。

[1]新庄剛志監督プロデュース 《NEW AGE GAMES produced by SHINJO》開催! 本人デザインユニフォームの着用・販売決定. 北海道日本ハムファイターズ, 2023年2月21日, https://www.fighters.co.jp/news/detail/202300277701.html (2023年5月17日閲覧).

<Executive Summary>
Is Mr. Tsuyoshi Shinjo "Japan's Bill Veeck"? (Yusuke Suzumura)

The Hokkaido Nipponham Fighters introduces a special uniform produced by Manager Tsuyoshi Shinjo on 13th 18th May 2023. It seems that Mr. Shinjo's challenge is similar with that of Bill Veeck, former owner of the St Louis Browns and Chicago White Sox, who aimed to expand a possibility of a game of baseball with new and creative idea.

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