G7広島サミットにおける日本の情報発信力はいかに評価されるか

今回の主要国(G7)首脳会議は、ウクライナ問題を中心にG7各国が連携を強化できたこと、あるいは人類最初の被爆地である広島県広島市において、核軍縮の第一歩となるべき核兵器不拡散の徹底を主眼とする「広島ビジョン」が発表されたことなど、近年の会議に比べて多くの成果が得られました。

また、いわゆるグローバルサウスとの関係についても一定の前進が見られたことは、今後の国際社会の動向を考える上でも重要でした。

それとともに、今回のG7サミットは、情報の発信という点で国際社会の成長の著しさを感じさせるものでした。

例えば、当初はオンライン形式で参加する予定であったウクライナのゼレンスキー大統領は、訪日して直接会議に参加して以降、G7や他の出席国の首脳との会談や訪問先の様子をTwitterなどに頻繁に投稿し、存在感の高さを示しました。

とりわけ、離日の際に関係各国への謝意を記した投稿を行ったこと[1]は、適時性を重視したウクライナ当局の、情報発信の周到さを推察させました。

あるいは、G7サミット中は存在感に欠けると思われた英国のスナク首相も、自らのTwitterアカウントにおいて、「日本、ありがとう」とG7広島サミットでの様子を収めた映像と自らの談話により構成された投稿を固定ツイートとしています。

さらに、議長国である日本については、外務省や首相官邸が文字と写真を中心とする情報の発信を行う中で、岸田文雄首相のSNSアカウントで一日の活動をまとめた動画や関連の写真が積極的に公開されました。

もちろん、投稿に用いられた映像や画像は岸田首相ではなく首相官邸の職員が中心となって取集し、製作したものです。そして、岸田首相の意を体しつつ、より効果的な文言が選ばれ、投稿されています。

従って、岸田首相の意向を踏まえてはいても、岸田首相自身が投稿の内容に関わる割合は低いものになります。

それでも、日本が前回の議長国であった2016年の伊勢志摩サミットの場合と比べれば、情報の発信の頻度と内容の充実ぶりは飛躍的な発展を遂げています。

その意味で、この7年間の情報の発信の方法の多様化と容易化、さらに積極的に情報を提供することが最終的に自らの取り組みへの理解の度合いを高め、支持を強めるという基本的な事柄への理解と、そのための手段としてのSNSの存在感の高まりが実感されます。

もちろん、今回は日本での開催であったため、迅速な除法の発信のために必要な人員を確保することが出来たと言えるでしょうし、今後の首相の外遊の際に同様の対応を求めることは難しいかも知れません。

しかし、7年に一度の重要な機会を捉えて確実な成長を見せた日本の情報発信力なのですから、これからも今回の経験を活かして、開催場所など様々な制約の中でも確実な情報の発信を行うことは不可能ではないでしょう。

夜遅くまで情報の発信に従事した関係者の努力に敬意を表するとともに、今後の取り組みが大いに注目されます。

[1]Володимир Зеленський. "G7, partners, Ukraine. A busy day of diplomacy to bring 🇺🇦 victory closer. During the day, I met with 🇨🇦 Prime Minister @JustinTrudeau, 🇮🇩 President @jokowi
, 🇰🇷 President @President_KR, 🇺🇸 President @POTUS and 🇯🇵 Prime Minister @kishida230. I participated in the G7+Ukraine Summit and "Towards a Peaceful, Stable and Prosperous World" working session involving #G7 countries, Ukraine and partners. I visited the Hiroshima Peace Memorial Museum and addressed the people of 🇯🇵. The topic of Ukraine is principal. It is necessary. I am grateful to all partners of 🇺🇦. I am grateful to the Prime Minister of Japan for the invitation to participate in the Summit. Glory to Ukraine!". 11:27 PM, 21st May 2023, https://twitter.com/ZelenskyyUa/status/1660291196030271490 (accessed on 23rd May 2023).
[2]Rishi Sunak. "Japan - thank you." 5:17 PM, 22nd May 2023, https://twitter.com/RishiSunak/status/1660560546465193984 (accessed on 23rd May 2023).

<Executive Summary>
How Can We Evaluate Japan's Information Dispatch at the G7 Hiroshima Summit? (Yusuke Suzumura)

In the G7 Hiroshima Summit, Japanese Government and Prime Minister Fumio Kishida tried their best to dispatch information to international society. On this occasion, we evaluate their efforts and the possibility to enhance theier capability.

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