宝塚歌劇団花組公演『舞姫-MAIHIME-』

今日は、宝塚歌劇団花組の公演『舞姫-MAIHIME-』のオンライン配信を鑑賞しました。会場は宝塚バウホールでした。

森鴎外の小説『舞姫』を舞台化し、2007年に初演された本作は、今回が2008年に続き3度目の上演となります。

日本の近代化への貢献とエリス(美羽愛)への愛の間で苦悩し、葛藤する太田豊太郎(聖乃あすか)の様子を、森鴎外の高雅な文体を踏まえつつより情感豊かに描き出すのが本作です。

今回は、何より聖乃の洗練された身のこなしが物語の魅力を高めるとともに、美羽のはかなさを湛えた表情の繊細さは、悲劇的な物語をより一層印象深いものにします。

これに、皆がみたらし団子を食べたいと言えば自分もそれに倣うような優柔不断な岩井直孝(泉まいら)、太田のことを絶えず気に掛ける旧友相沢謙吉(帆純まひろ)、融通の効かない堅物の黒沢玄三(紅羽真希)といった人物が個性豊かに描かれるとともに、一樹千尋の演じる次期首相の呼び声の高い天方伯や万里柚美が務めたエリスの母ローザなど、専科の実力派が作品の展開を要所要所で引き締めました。

さらに、花組の家族的な雰囲気は、軍人たちの最敬礼の様子をことさら誇張するといった演出を嫌味なものとせず、かえって明治時代における官界や軍の中での秩序のやかましさを巧みに表現することに成功していたと言えるでしょう。

冒頭こそ公演最終日ということもあってか一部の演者に疲れが見えたようではあったものの、序盤が終わるころには誰もが精彩を帯びた演技を披露し、見応えのある舞台を実現しました。

終演後の舞台あいさつで母の日の公演にちなんで一樹と万里への感謝の念を捧げる聖乃の姿からも、花組の朗らかな様子がよく伝わり、後味の良さを覚えるものでした。

改めて、近代日本の古典文学の持つ可能性が演技と歌唱によって示された、この日の花組公演『舞姫-MAIHIME-』でした。

<Executive Summary>
Stage Review: Takarazuka Revue's "MAIHIME" (Yusuke Suzumura)

The Hana Gumi of The Takarazuka Revue held a performance MAIHIME, staring by Asuka Seino, at the Takarazuka Bow Hall on 14th May 2023.

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