原爆投下から77年目に際し改めて大きな役割を果たした広島平和記念式典での平和宣言

本日、1945年8月6日に広島に原子爆弾が投下されてから77年目を迎えました。原爆の犠牲となった人々の慰霊のため、広島平和記念公園では広島平和記念式典が行われました。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で過去2年間は見送られていた一般席が設置された今回の式典では、広島市の松井一實市長が平和宣言を読み上げ、ロシアによるウクライナ侵攻において為政者が国民を戦争の道具とすることや核兵器保有5カ国が表面的には核不拡散や核兵器の不使用を強調しつつ実際には核兵器廃絶への努力を行わないことを非難するとともに、為政者に「核のボタン」を預けることがもたらす状況が人々に破滅をもたらすことを指摘し、来年広島市で開催される主要7カ国首脳会議に参加する核保有国に核兵器廃絶に主体的に取り組むことと、日本政府が核兵器拡散防止条約再検討会議で積極的な役割を果たすことを求めました[1]。

かねてより本欄が指摘するように、こうした一連の要請は、核兵器が抑止力を持つと考えられる限り現実的ではなく、米国の「核の傘」の下にある日本政府にとっても、直ちに受け入れることは難しいものです[2]。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻において、ロシアは核兵器の使用を示唆することで米国の積極的な介入を防ぐ一方、米国はロシアに対して有効な対策を講じられていないという事実は、米国の国内事情の影響があるとしても、核の抑止力を巡る議論が現実の戦争の前では効力を失っている可能性を推察させます。

その意味で、目の前ので起きている状況の変化にもかかわらず従来の考えに固執して事態を見誤ることがあるとすれば、為政者に核のボタンを預けることの危険性を訴えた今回の平和宣言は、現在の国際情勢のありようを象徴的に描き出していると言えるでしょう。

従って、一面において核廃絶という理想を追求しつつ他面において核の抑止力を巡る最新の動向を踏まえた今回の平和宣言は、例年以上にわれわれが注意を払って読み進めるべきものとなります。

このように、今年も、広島市は果たすべき責務を適切に遂行しているのです。

[1]平和宣言【令和4年(2022年)】. 広島市, 2022年8月6日, https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/atomicbomb-peace/179784.html (2022年8月6日閲覧).
[2]鈴村裕輔, 広島への原爆投下から76年目に際し広島平和記念式典における平和話宣言の意味を考える. 2021年8月7日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/0462365bea2b2899f0f6985d875789b2?frame_id=435622 (2022年8月6日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the Peace Declaration by the City of Hiroshima at the Hiroshima Peace Memorial Ceremony of 2022? (Yusuke Suzumura)

The 6th August 2022 is the 77th anniversary of the atomic bombing of Hiroshima and Mr. Kazumi Matsui, the Mayor of the City of Hiroshima, declared the Peace Declaration. In this time we examine a meaning of the declaration.

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