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新しい関係性の中で、勝手に自分にプレッシャーをかけていたことに気づいた話

事業所を引っ越して、日常のリズムができ始めた。岩義さんは家では、家事はしない方だったけど、僕らが洗い物をしていると、「男なのに、感心!」と自ら皿洗いをしてくださった。これには、昔から岩義さんを知っている周りのスタッフが驚いていた。僕たちがいることで、新しい関係性の中から、岩義さんのこれまでとは違う姿も見えてきたようだった。

シマさんは、月に二回(旧暦の1日と15日)には、必ず御墓参りに行かれる。足腰が弱くなって、歩いて行くのは難しくなっていた。民宿が忙しい息子夫婦には少し気兼ねして、墓参りにも行けないこともあった。送迎の際に、立ち寄る。「父ちゃん、また来たよ。」墓参りの後のシマさんは、晴れ晴れとした表情と、「今日も墓参りに来れた。」という、安堵感に近い気持ちがあったように見えた。

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思いに寄り添う。その先に。

少しずつの変化はありながらも、何気無い日々が続いたある日、ご利用者の一人が、前触れもなく、体調を崩された。その日の業務日誌に、

ものすごく心配した。ものすごく不安だった。このことだけではないが、たからでの物事を通して、人からの意見や助言が、自分が攻撃されているように感じることがある。それに対して、自分もその物事に真剣に向き合って、判断しているのだと、反発する気持ちもある。色んなことで葛藤が多く、ストレスに感じる。こんなときこそ、冷静に落ち着いて謙虚に行動する必要がある。

と記録していた。勝手に何かを背負っている気持ちになっていたように思う。

それに対して、黒岩さんから、

『自分が責められているように感じる』って何故なんでしょう?何故、そのように自分は感じるのかを考えてみてください。それをせずに、今後冷静に謙虚に話が聞くことは難しいと思います。結果には必ず原因や背景があります。そこを素通りしないようにしましょう。

とのコメントが届いた。この頃の日誌には、呪文のように「仕事が楽しい。」と書いている。それは、上司だった花田さんの存在は大きかった。しかし、その花田さんが戻られて「疲れを気のせい」と強引に元気を出そうとしていた時、花田さんからこんなメールが届いた。

疲れは気のせいではありません。
ためても何にもなりません。
自分で管理するしかないのです。
それはあなただけではなく私だけではなく黒岩さんをはじめみんなです。
一人ではありません。頑張りましょう。

本当に支えられ、鍛えられた時期

僕なりに想いに寄り添うことを考えていた。でも、「年寄りのわがままだ。」と、それだけではうまくいかないことが多かった。そして今思い返すと、周りの人がその人に対して、そうであって欲しいということを、「〇〇さんらしさ」という形で、こちらの想い引き寄せていることも多かった気がする。

僕が人と向き合う時に心がけたいことがある。それは、一緒に納得解を探しあうということだ。ご利用者に対して、家族に対して、一緒に働く仲間に対して。相手も自分も、どこかで折り合いをつけていく。できないことが少しづつ増えていく中で、一緒に降りて行く。折り合いを付けられるようにサポートして行く。それを支えるのがサポートだったり、ケアだったりする。その人の想いや、強みに目を向けたがる僕だったけど、少しづつ、考え方にも変化はあったと思う。

テレビの取材

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