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ヤギをもっと。寄付ではなく投資【ヤ銀行Vol.12】

ネパールで、ヤギを通したソーシャルビジネスを。

これまで、活動の当時を振り返りながら書いてきた。初めて読むよ、という方は、ぜひこちらのダイジェストをどうぞ。

ヤギの赤ちゃんが生まれて、なるほど、こうすればヤギも増えていくし、支援できる人も増えていく。小さな活動が、きっと大きくなっていくんだ、そんな希望を持てたのが、ヤギの赤ちゃんの誕生だった。

それから何に取り組んだのかと言うと、「もっと多くのヤギを農家さんに届けるために、多くの人からお金を集める」ということ。

一番最初は、ヤギおよそ100頭から始めた。ヤギ小屋で元気に餌を食べるヤギさん達。自分としては、その光景だけでも、当時はとても大きなことだった。ゼロから初めて、なんだか一つの到達地点にいたような感覚。

それでも、もっと多くの人に知ってもらいたいし、もっと多くの人が関わってくれれば、より多くの農村部の方々の助けになれる、そう思っていた。

集めるのは、支援ではなく、投資だ

それまでの途上国支援の活動は、

「ネパールは貧しくて、こんなに困っている人がいる。自分たちはこういう活動をやっているので、支援をお願いします。」

ざっくり言うと、こんな感じだったと思う。これをしていると、単発での寄付もそこまで大きなものではないし、何回も何回も、支援をしていただけるわけではない。

自分が実現したいのは、そういうことなのだろうか。事業として、どうやったら続くのだろう。

そこで、今回のヤ銀行。支援ではない、投資だ。

例えば10万円のお金を頂いたとする。
それでヤギを買って育てる。
そのヤギは、毎年2頭ずつ子どもを産んでいく。
そのうち半分は農家さんにお渡しして支援していくが、
もう半分は2年くらい成長して大きくなったら、お肉として売る。
その売れたお金は、投資いただいた方に返していく。
支援したお金が、戻ってくる。

そんな仕組み。

これをすれば、なにか途上国の助けになりたい、でもそんなにお金を寄付し続けられない、という方にとっても、少し関わるきっかけになるのではないか、そんなふうに思った。

これを日本でいろんな人に話すと、もちろんネパールの課題とか貧困とか、そういう話にもなるけれど、それに加えて、「ヤギの話」をものすごくすることになる。

ヤギの生命力、ヤギはいくらなのか、どれくらいネパール人はヤギを食べるのか。

そんなことを通して、どれくらいお金が戻ってくる確率があるのか、そんなことを話をしていた。支援ではなく投資と話をしているからこそ、当然。
そのときの感覚としては、何か物を売っているわけでもなくって、純粋にヤギの話をしていて、しかもそれがうまくいけば、ネパール農村部の人を助けることができる。そんなある種明るい未来をイメージしながら、話をしたり、話を聞いてもらうことができた。

それまでの活動ではつながりが薄かった方々とも、このヤギさんのお陰でつながったり話をすることができたし、国際協力や支援の活動が、なんだか暗いものではなく、明るく捉えられるようになった。ヤギさんのおかげだと思う。

ソーシャルビジネスは、捉え方と意志だ

このヤ銀行の活動を通して、学んだことはこれだと思う。というか、そのときはばしっと、そう学びを掴み取ったわけではないけれど、時間がたっていま振り返ると、このヤ銀行の活動を通して、これを学んだんだと思う。

ソーシャルビジネス
持続可能なビジネスモデル

当時サラリーマンの経験しかない自分にとって、「ビジネスモデル」という言葉は、なんだかとても浮ついていてというか、実態のつかみにくいもので、ただただその言葉になんとなくの距離を感じて、ちょっと扱いすらずらいもの、みたいな感覚があった。自信も特になかった。

それをベースにして、「なんだかすごいビジネスモデルじゃないと、社会課題を解決できないし、そんなアイデアはなかなか浮かばない」そんな感覚があった。周りの人との話でもそうだし、学校とかで聞くときにも、「ビジネスモデルのアイデア」みたいな形で、なんだか誰かが創造的に思いつく秀逸なアイデア、のような雰囲気があった。

でも実際にこのヤ銀行を通して感じたことは、そんな大それたアイデアうんぬんではなくって、もっと地道で、誰が困っていて、誰がそれにお金を払いたくて、誰が供給できるのか。ただのシンプルな関係図を整理する、ということだった。
ヤギがほしい人、買いたい人、あげられる人。
これを見えるようにして、つないでいく。ビジネスモデルなんて、それくらいシンプルにまずは捉えていいんだと思えた。

その上で、どうやって社会課題を解決するのか、ソーシャルビジネスにするのか。ここは、もう、「意志」なんだと思う。

ビジネスを通して、
「自分のお金を増やしたい」のか、
「何かの問題解決につなげたい」のか。
この違い。もちろん、どっちだって良い。

そのときに、何かの問題解決に繋げたいという気持ちがあれば、それを具現化することで、その事業はきっとソーシャルビジネスになる。自分の意志でできるんだ、と。

ヤ銀行でいくと、お金を投資してもらって、ヤギを買って増やして、そしてヤギを売れば、お金は手元に残る。これだけしていれば、自分のお金を増やすことができる。わざわざ、ヤギを農家さんにプレゼントしなくてもいい。

でも、ここでヤギを農家さんにプレゼントすることで、農家さんの所得向上に貢献できる。プレゼントするにも、手続きとかネットワークとか、そりゃもちろんいろいろ動かないといけないけど、できない話じゃない。

やっぱり、ソーシャルビジネスにするには、意志があればできる。そう思えた。

考えるべきは、仕事をいかに創るか

ヤ銀行で大きく学んだことは、そこだと思う。
ソーシャルなことは意志でできるとすれば、その出発点にたつためには、
・事業を創る
・仕事を創る
・ビジネスモデルを創る
それが大事なんだと、改めて整理ができた。

「ソーシャルビジネス」という言葉を持ち出して、自分で勝手に難しくして、難しいからできなくてもしょうがない、みたいな世界に持ち込んで。。
そういうことじゃない。

現場を見て、何が必要か、誰がお金を払えるか、それを観察したり対話をしたりして見出していく。
そして、仕事として続く状態を整える。

それが、できれば、意志を持って社会の課題解決に貢献していくことができる。

ヤ銀行の活動を通して、学んだことは、これが一番大きい。

ヤギさんのその後

振り返りもここまでにして、ヤギの話に。
100頭いたヤギ、その後はどうなったのか。
これについては、次のnoteにて。

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