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ブイヤベース+お米=パエリャ

数すくないわたしの得意料理といえるかもしれない。

以前からわりと頻繁につくっている料理がある。それは言わずと知れた代表的なスペイン料理、パエリャ。はじまりはひとり暮らしをしていた学生時代のこと。テレビのスペイン語講座で紹介されていたレシピだった。

いま思えばそれはレシピではなく、スペインでの作り方を紹介しただけだったのかもしれない。たしか番組内ではお米の分量を「パエリャ鍋に十字を描くように入れて浸りきらない程度」としていた。水もオリーブオイルも具材もほとんどが曖昧な分量。目分量で良いということか。

どうすれば良いのかわからず、とりあえず形からはじめた。

輸入雑貨店で小さなパエリャ鍋を買って、長粒米(インディカ米)を用意。最近のようにスパイスミックスなどは売られていなかった。ひとり暮らしの大学生にはサフランは高価だった。高価すぎるのでプランターでの栽培も試みたけれど、ほんのわずかしか収穫できなくて、いつの間にか栽培をやめてしまった。

当時はインターネット黎明期。クックパッドが登場する前のこと。料理本を立ち読みしたりして試行錯誤した。キッチンスペースの都合ですべてをパエリャ鍋で調理していたのだけど、具材の分量と火加減がむつかしかった。おおくの失敗作をくり返して、パエリャというよりビリヤニみたいな自分のスタイルができた。

数名の留学生に披露する機会があった。彼らの国籍はバラバラだったけど、日本人は味付けが薄いから・・・とかなんとか言って、みんな塩やスパイスをふりかけて食べてくれた。きっとわたしは関西出身だからとりわけ薄味だったのかな、ぐらいに軽く考えていた。単純に不味かったんだな。

20年ほど前にバルセロナに1週間あまり滞在した際、何軒かのレストランでパエリャを食べた。それぞれに味わいは違ったけれど、魚介の味がしっかりなじんで美味しかった。わたしのパエリャとは似ても似つかない、濃厚な深い味わいだった。

はじめて本場で食べたパエリャ。スペインの人びとにすればバルセロナは本場じゃないかもしれない。けれど、日本で試行錯誤していたわたしにとってはまさに本場。本場の味は出汁がきいていた。あの平べったいパエリャ鍋で、どうしてこの出汁がとれるのだろう、と思った。

いくつかスープの素をつかってみたり、またいろいろと試行錯誤。やがて自分で魚介のスープをつくったりもした。そう、足りなかったのはそのスープ。狭いキッチンでパエリャ鍋ひとつでつくっていたのが間違いだった。別の鍋でしっかりスープをつくって、そのスープでお米を炊けばよかったのだ。

いま、わが家ではその方法が定着している。

素材を変えればスープの味も変わる。季節ごとに旬のシーフードで楽しめる。だから、定期的にパエリャをつくるようになった。昨年5月の連休につくった”イカ様パエリャ”もそんな旬のシーフードのパエリャのひとつ。

◆◇◆

昨年のクリスマスイブに、妻がブイヤベース用のシーフードセットを買ってきた。パエリャ向きだと思ってとのこと。20年もいっしょにいるとよくわかってくれるものだ。たしかに材料はほとんど共通だ。

共通もなにも、もしかしてブイヤベースでお米を炊いたのがパエリャなんじゃないのか・・・と気がついた。どっちが先なのかわからないけど、魚介類の豊富な地中海沿岸だから、フランスとスペインで似たような料理があっても不思議ではない。

とにかくその時はブイヤベースのセットをつかってパエリャを調理した。その時のレシピを思い出して記録しておくことにする。

材料(4人分)
 赤エビ:6尾
 アサリ:約20個
 ムール貝:4個
 真鱈の切り身:3枚
 インディカ米:約2カップ
 ニンニク:2片
 玉ねぎ:1/2個
 トマト:1/3個
 スパイスミックス:1袋
 オリーブオイル:適量
 水:200グラム +α
 塩、コショウ、パセリ:適量

上記のシーフード(赤エビ、アサリ、ムール貝、真鱈)がブイヤベース用のセットで売られていたもの。スパイスミックスは2人用のパエリャミックス。シーフードから出汁がとれるのでスパイスミックスはこれでじゅうぶん。

下ごしらえ(野菜):ニンニクと玉ねぎをみじん切りに、トマトをサイコロ状に切っておく。

下ごしらえ(スープ):お湯を200グラムをわかして、スパイスミックスを入れて混ぜる。

下ごしらえ(アサリとムール貝):アサリは必要であれば砂抜き。ムール貝は”ヒゲ”をむしり取る。

手順1:深めのフライパンにオリーブオイルを敷く。赤エビがおおいので小さなお鍋よりもフライパンのサイズがおすすめ。

手順2:フライパンを加熱しはじめてすぐにアサリと赤エビを入れる。程なくしてオリーブオイルを追加(下の写真参照)。油がはねないように。エビは適宜ひっくり返す。

まだちょっとオイルが足りない状態。お湯をくわえても良い。

手順3:オイルがぐつぐつしはじめたらムール貝を入れる。エビの頭をつぶすとより出汁がとれる。弱火に。

手順4:アサリが開きだしたら、別のコンロでパエリャ鍋に火をかける。オリーブオイルを敷いてニンニクを少量入れる。ニンニクがきつね色になったら、残りのニンニク、玉ねぎ、トマトを入れて炒める。弱火にして真鱈投入。両面に焦げ目がつくぐらいに。

タラの切り身はくずれてしまいがちなのでエビたちとは一緒にしないほうが良い。
野菜と一緒にローストするような感じがおすすめ。

手順5:パエリャ鍋にスープを投入。そしてお米を十字になるように入れる。これは先に書いたとおり、テレビで観たやりかた。カトリックの国らしさが出ていて気に入っている。わたしはクリスチャンではないけど、スペイン文化を尊重するつもりでいつもこうしている。

このぐらいの十字のお米をひろげるとぎりぎりスープに浸ってくれる。この感覚は、試行錯誤で覚えるしかないかも。

手順6:しばらくしたら、フライパンの火をとめて、アサリとムール貝とエビの茹で汁をパエリャ鍋にうつす。

茹で汁をパエリャ鍋に移した直後。そのまま弱火で。

手順7:ちょくちょくお米の硬さをみながら待つ。だいたい15分ぐらいか。好みにあわせて湯量を調節。一部でおこげができるぐらいが理想。好みで塩コショウ、パセリを振る。

手順8:フライパンから赤エビ、アサリ、ムール貝をパエリャ鍋に移す。エビとムール貝はバランスよくトッピングすると映える。完成!好みでレモンを絞ったりしても美味しい。

エビとムール貝を規則的に並べるとカッコ良い。この見た目だけで本格的に見える。

今回つかったブイヤベースのセットは具材だけだったけれど、スープの素がついてくるセットだとスパイスミックスは不要かもしれない。ネットでいくつかブイヤベースのレシピを探してみたら、サフランを入れるとある。魚介のスープにサフランということは、やっぱりほぼパエリャだ。

ブイヤベースは、もともと漁師メシだったいうのをどこかで聞いた。売り物にならない魚を大鍋にぶち込んでつくったワイルドな料理だったと。そういえば、冒頭のテレビのスペイン語講座ではパエリャは男の料理と紹介されていた。ルーツはおなじなのかもしれない。

スペインの男性はそれぞれ独自のレシピを持っているらしい。そんなところにも惹かれてパエリャをつくり始めたのを思い出す。

前半に書いたように、パエリャは旬の具材をつかって出汁をとるのが楽しい。今回のブイヤベースのセットだと真鱈が旬の食材か。最後に、数年前の夏につくったワタリガニのパエリャの写真を載せておく。これはとっても美味だった。またチャンスを狙わないと。

活きガニの入手が意外とむつかしいワタリガニ。漁師メシが由来のものはたいてい鮮度が命(管見)。


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