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ファッション音痴が15万円払って服の呪いから解放されて生きやすくなった話。

こんにちは。

この記事は、自分のことを隠すように黒い服ばかり着ていた僕が、たくさんの人たちの助けを借りて、自分だけの本当の服を見つける物語です。服装を褒められることは、まるで生き方を肯定された気分になることがあります。僕も、誰かを褒めた時に同じような気持ちになってもらいたい。また、そういう人が増えたらいいなと思い書いてみました。

「クローゼットに洋服はたくさんあるのに着れる服がない人」「どこか自分の服が着せられている感覚がある人」は、面白く読んでいただけるかもしれません。アラサーの中肉中背が過ごした記録です。


1.黒い服だけで生きてきた

「服を変えると人生って、めっちゃ上手くいきますよ」

静かなカフェの片隅で、目の前の友人が熱く語ってくる。店内に響きわたるような声で話すものだから、少し落ち着かせてから話をきいた。

どうやら、ファッションのプロの人に自分に似合う洋服を選んでもらったらしい。いままで自分がしっくりこなかったことの解像度があがって、QOLが爆上がりしたらしい。

「衣・食・住」
社会で生きていく上で、必要不可欠なもののこと。食べないと倒れてしまうし、住むところがないと働けないし、服を着て出かけないと、ただちに捕まる。その必要不可欠なものを、ひとつずつ最適化していくことで、日々の暮らしを豊かなものになっていく、と、おそらくその人から言われたことを、そのまま教えてくれた。

そんな「悪・即・斬」みたいな響きで言われても・・・。と、あんまり実感がなかった僕だが、無意識に影響を受けたんだろう。全身真っ黒い服で生きていた僕は、その帰り道、GUに寄り、青いカーディガンと、青いカラージーンズを買った。

とある年末。
後輩に忘年会をしましょうと誘われ、後輩宅に手土産を抱えて伺った。

インターホンを押して、出迎えてくれる後輩。その後に投げかけられる言葉をきっかけに、後に15万円を払い、スタイリストについてもらうことになるなんて、この時は知らない。

後輩が僕をみて一言。

「なんか・・・今日・・全身、青いですね・・・」

そう、これは些細なボタンのかけ間違い。というのも、冬の服は乾きにくい。結果、洗濯のローテーションが乱れ、手元にある服で、外に着ていけそうな服は、購入した青い服のみ。僕に着させたのです、冬の天気が。よかれと思って、全身青い服を着ていたんです。

ちなみに、その後輩の後ろに控えていた、さらに下の後輩も「おい、そんなこと言うなって」と、小声でツッコんでいたのを、僕は聞き逃さなかった。

あぁ、透明になりたい・・・。今すぐに。でもそんなことできるはずもない。

その夜、僕は気づかれずに、青いカーディガンを脱ぎ、少し肌寒いままやり過ごしたのです。

「ファッションの正解ってなんだろう。」

そう考えたとき、ある人物のことを思い出しました。マーク・ザッカーバーグ。Facebook(現:Meta)のCEO。当時、彼は、同じTシャツを20枚持っていて、毎日それを着ているらしい。

そう考えると、僕もそれでいいじゃないか。何を色気をだして、青いカーディガンなんて買ってしまったんだろう。服だけじゃなく、気持ちまでブルーになってしまったじゃないか。おしゃれぶるな、と。

私は、自分を責めはじめ、なんとか正当化しようと思っていたその夜、友人からLINEがきた。カフェでファッションのことを熱弁していた友人だ。そのLINEには、こう表示されていた。

「パーソナルカラー診断に行くんだけど、一緒に行かない?」

パーソナルカラー診断とは、自身が持っている肌や瞳の色から、生まれ持っている「似合う色」を知る診断のこと。

眺めていたスマホの画面からクローゼットに目を向ける。
漆黒の闇に吸い込まれそうになるくらい、黒い服が並んでいる。「元気の押し売り」と言われていたベッキーはテレビにでるとき、黒い服を着ないと言っていたのを思い出す。(ちなみにベッキーは、今は黒い服も着ている)

もしかしたら、僕にも、似合う色があるのかもしれない・・・。

気づいたら「行く」という二文字を送信していた。

2.君の色の名は?

とある会議室。
僕は、友人とともに、パーソナルカラー診断を受けていた。

まずは、友人が椅子に座るように、スタイリストさんに促される。
座ると目の前には、全身の姿見が置かれていて、スタイリストさんが、ドレープと呼ばれる色とりどりの布を、首まわりに当てて、チェックしていく。

色によって、肌の血色が良くみえたり、悪く見えたりするらしいが、正直よくわからない。

「もともと、肌の色の問題もあるのでは?」と、僕は少し意地悪な質問をした。

スタイリストさんは、僕の質問に答えるために、ご自身に青色の布を首にあてて見せる。すると、スタイリストさんの顔色が少し悪そうに見える。(ほんとうに)つぎに黄色の布を首にあててみせると、顔に生気が戻ったように思えた。

どうやら、スタイリストさんは、イエローベース(イエベ)と呼ばれるカラータイプらしく、顔まわりに黄みがかった色が似合うタイプとのこと。(さらに、春と秋と、二つタイプがある)

友人は、ブルーベース(ブルベ)。ブルーベースは、顔まわりに黄みが入っていない色が似合うタイプとのこと。(こちらは、夏と冬の二つタイプがある)

なるほど。こいつはいい。これなら自分の似合う色を確かにみつけられる。

僕の出番になった。
友人と同様、首に様々な色の布をあてていく。

「金髪よりも、銀髪が得意ですね」

スタイリストさんが、言う。
なるほど。いつか髪を染めるときは、銀髪にします。と心でつぶやいた。

「クリスマスカラーが得意ですね」

スタイリストさんが言う。
なるほど、クリスマスカラー。ポケモンでいうとレッド・グリーンが似合うってことね、ふむふむ。テンションが上がってきて、心でつぶいちゃう。

「パーソナルカラーは、ブルベ冬ですね」

スタイリストさんが言う。
なるほど、なるほど。ブルベ冬!・・・うん!よくわからないけど、なんか夏よりも、冬みたいな感じがしましたよ、自分のこと。クリスマスカラーが似合うって言ってたし、うんうん。それで・・・僕に似合う色は・・・?

「ユースケさんが得意な色は、黒ですね」


・・・く・・・・ろ・・っ!

そうスタイリストさんが告げると、僕の首にあてていた布をゆっくりと外す。そしてその布の影から現れたのは、黒色のシャツ。そう、僕は診断にいくこの日も、黒いシャツを着てきていたのです。他にも似合う色があるかもしれない。そんな思いで勇気をもって踏み込んだ結果・・・なんということでしょう。似合う色は、なんと、「黒」だったのです・・・。

「黒色、おまえだったのか、いつも俺をかっこよくしてくれていたのは」

まるでそれは、まだ会ったことがない君を探すように、目の前の人よりも、存在するかわからない理想の人を求めて奔走するような行為。そうして走り回った結果、僕は、とある神社の階段ですれ違い、思わず声をかけるのです。「君の色の名は?」と。

気づいたら僕は、自分の両手で、自分の肩を抱きしめていたのです。あぁ、君だったのか、と。(大袈裟)

診断が終わり、小さな冊子をもらう。そこには、得意な色、避けた方がいい色の一覧が記されていた。僕は、お礼を言い、診断の料金を支払った。そのとき、友人は次回の約束を取り付けていた。

僕も申し込もうとするが、そのスタイリストさんは、メンズは受け付けていないとのこと。そのかわりに、別のスタイリストの方を紹介していただけることになった。

3.パーソナルスタイリストとの出会い

後日、池袋のカフェ。

紹介されたスタイリストさんとともに、コーヒーを飲みながら、僕が答えたアンケートを眺めていた。

もともと、今回の依頼を受けてくれるかどうかを判断したいとのことだった。人と人との相性を重視していること、または、悩んでいる内容などを整理して、もっといいスタイリストを紹介できるかもしれないなど、様々な可能性を探ってくれるためだそうだ。

アンケートは苦手だ。いわゆるヒアリングシート。質問項目が書かれており、それに関してコメントをかいていく。

常に言語化できているわけではないし、むしろ、このもやもやした気持ちに言葉があるなら教えてほしいと思って来ているのに、なぜ既に悩みが言語化できていることが前提なのだろうと思うことがある。

事前に送られてきたヒアリングシートと向き合いながら、ウンウンとうなりながらも、項目を埋めていく。その中にひとつに、どうしても書けない項目があった。

「ファッションについて、悩んでいることを教えてください」

そもそも、僕は、ファッションの何に悩んでいるのだろう・・・?

人からかっこよく思われたい。ちやほやされたい。自分に自信が持ちたい。本当にそうなんだろうか。

きっかけは、後輩が言った一言。つまり、自分が良いと思ったものと、他人が良いと思ったものの、ズレ。だけど、「好き」とか「良い」とかという主観的な思いをコントロールすることなんてできるんだろうか・・・。

「ファッションって、センスっていう便利な言葉で片付けられちゃうような気がしてて、その摩訶不思議な実態が知りたいんですよね」

僕は、思わず口に出していた。

思い返せば、服について指摘されてきたことが山ほどある。

大学生のころ、制服から、私服で登校するようになって、服の着回しに困った。何を着ていっていいのか、わからない。最終的に僕は、マネキンがきている服を一式買って、それを着ていくことにした。

しかし、マネキンが着ているときは、あんなに輝いてみえたコーディネートも、自分が袖を通した瞬間、別物にみえた。姿見で自分をみたとき、本当にこの服が着たかったのかな、とモヤモヤした気持ちになった。

最終的に僕は、”そういうコスプレ”をしていることにしよう、と自分を守るためにいいわけをしながら大学生活を終えた。

社会人になり、デートの待ち合わせの場所に向かったとき、当時付き合っていた彼女に言われた言葉がある。

「もう、そういう服は着ちゃいけないかもね」

そのとき、僕が着ていたのは、襟の部分に、毛皮のファーがついているデニムジャケット。その日は、映画を見に行く予定だったが、服を買いに行くことになった。僕は、その日にうちに、デニムジャケットを捨てた。気に入っていたのに。

自分が着たいと思う服は、自分には似合わない。

そんな呪いを生み出して、これまで生きてきたことを、池袋のカフェで僕は話していた。もはや、ファッションの話というより、生き方の話になっていた。

僕ばかりがたくさん話してしまい、気づけばコーヒーカップが空になった。すると、スタイリストさんが口火をきった。

「ユースケさんが悩んでいることは、理論を身につければ解決できると思いますよ」

その理論とは、骨格スタイル診断のこと。人の骨格から、その人の似合う服をみつける診断のことだ。

マネキン服を一式買っても似合わなかったのは、そもそも、マネキンと同じ骨格をしていないと再現できないから、ということらしい。

僕の骨格タイプの診断をし、得意なアイテムや素材などを見極め、ショッピング同行して買い物をし、二ヶ月毎日コーディネートを考え、それを言語化し報告する。それをすることで、いま悩んでいることは解決できるとのこと。

スタイリストさんは、一度こちらで持ち帰って考えてもいいと、言ってくれている。

15万円か・・・。絶妙な金額だなぁ・・・。

二ヶ月で15万円。さらにここに、ショッピング同行で買う洋服の金額が乗っかってくる。

当時の僕からしたら、正直言って、高い金額だ。だけど、きっと人生が変わるような予感がしていた。

友人が言った、服を変えると人生めちゃうまくいく、という実感のなかった言葉が、輪郭を帯びていく。

僕は、持ち帰らなくても大丈夫です。やります。という言葉をその場で伝えた。

4.スタイリストとの日々

パーソナルスタイリストについてもらって、一ヶ月が経っていた。

骨格診断の結果は、ウェーブ骨格タイプ。デコルテが薄く、身体の重心が比較的下の方にある、骨格タイプだ。

細かい柄が得意で、柔らかい素材などを選ぶとスタイルアップする。実際に様々な特徴の服を試着してわかるのだが、大柄の模様の服は、服に着られている感じがするし、無地の服は、身体が薄いせいか、印象に残らない。

それをもとに、ショッピング同行をし、様々なアイテムを購入してきた。

例えば、「RED CARD」というスキニーデニムがある。このデニムは、伸縮性がよく、適度な締めつけで美脚シルエットをだせる優れものである。ウェーブタイプは、下重心ぎみなので、スキニーパンツを履くと、全身のシルエットをすっきりさせることができる。なので、このデニムと出会えたことで、いままで潜在的に思っていた、もっさり感が払拭された。

ただ、いいものは、値段も高い・・・。他のアイテムも含め、6点ほど購入して総額10万円ほど購入して帰ってきた。(途中隠れて返品しようかと、一瞬思った)

そして、自前のアイテムの写真をすべて送り、購入したアイテムを含めて、一旦コーディネートを出してもらった。そのとき、コーディネートから溢れたアイテムは、一生着ることがないと思い、処分した。

それから地獄の日々がはじまった。

毎朝、その日着る服を着用し、写真に撮って送る。これが本当に、地味にしんどい・・・。

「シャツはインしてください」
「ストールでうまくスタイルアップできています」
「重ね着で立体感がでてますね」

などなど、毎日一言コメントが届く。ボディビルダーの大会で、ポジティブな掛け声がかかるように。

そのとき印象的なことがあったのだが、「痩せてみえる」「太ってみえる」みたいな言葉を、スタイリストがつかっていないことに気づいた。

それについて質問をしてみたら、意外な返答が返ってきた。そもそも、痩せてみえることも、太ってみえることも、人によって受け取り方が変わるとのこと。スレンダーにみせたい人もあれば、グラマーにみせたい人もいるので、その言葉は避けているらしい。

また、「似合う」ことも「似合わない」ことも、手段として使うことがあるらしい。

「似合う」ということは、その場に溶け込むこと、つまり、調和することを指すらしい。対して「似合わない」ことは、個性の強調、と捉えることができる。

それらはすべて、相手に「どう思われたいか」「どう自分を表したいか」によるものなので、手段に過ぎない。と答えてもらった。

「自分が着たいと思う服は、自分には似合わない。」

あのとき、僕が発した言葉が、伏線回収されることになった。つまり、これは、自分が潜在的に思っていた、個性のこと。似合わないと思っていたけど、その部分がこだわりにすぎなかったということがわかったのだ。

このころになってくると、僕の学びは止まらなくなっていた。

それからは、すれ違う人に対して、瞬時に骨格タイプの分析と、ファッションにコメントをする、千本ノックのようなことをして、さらなる経験を積んでいたのです。(なにしてるの?)

表参道ヒルズの前の坂道を登りながら、すれ違い様に心の中でつぶやいていく。

「着丈が長い」
「洋服の重心が低い」
「もっと大柄の模様のがいい」
「アイテムを足して立体感をだして」

などなど・・・。(ホント、なにしてるの?)

僕は別に、アパレル関係者でもないし、服飾系の人でもないけど、とにかく熱中していたのです。

ここまでくると、アパレルのショップ店員さんに話しかけられるのも、苦じゃなくなっていました。

昔は、とにかく話しかけてほしくなかったし、自分の自信のなさから「あぁ、この人、こういう服を買う人なんだ」なんて思われてるんじゃないかと、被害妄想に陥ることがほとんどだった。

少し話が変わるけど、こういった知識をつければつけるほど、ブランドのアパレル店員さんの接客は本当に難易度が高いと思う。

もし、本当にお客さんの問題を解決しようと思ったら、自社商品だけで解決するなんて、本当に難しいだろうなと思った。

実際に店舗を回ってみた感想として、流通しているメンズ服のほとんどは、ストレートタイプが得意なものが多い印象をもった。もし僕が店員だとしたら、別の骨格タイプの人の課題を解決しようとしても、なかなか難しい。それこそ、別のブランドも扱えたら・・・、と考えてしまうかもしれない。

現場の店員さんにそこまで求められているかわからないし、もしかしたら、様々なブランドを提案できる、フロア店員さんもいるかもしれない。

ヒット商品がでて、それを横展開するためだけに用意された色ちがいの服を眺めながら、本当に似合う服はどこにあるんだと思っていた。

理論を身につけたからわかる、本当に自分に合う服がない。良くない完璧主義な自分が顔を出してきたのです。

「行き過ぎた投資は、やがて浪費にかわるだろう」

本来であれば、工夫して着こなしをつくっていくのが目的だったのに、
とにかく僕は、自分の骨格に合う服を探すことに、お金を多く費やしていた。(あまりに似合う服がなくて、服飾大学に入ろうかと思ったのですが、やめた)

こうして、もはや何を目指しているのかわからなくなったころ、パーソナルカラー診断に一緒にいった友人とお茶をすることになった。すると、

「顔タイプ診断ってのがあるらしいよ」

どうやら、顔からその人の似合う服がわかる診断があるらしい。さっそくパーソナルを担当しているスタイリストさんに聞いてみると「知らない」と返信。

それもそのはず、当時、顔タイプ診断の協会が立ち上がったばかりで、知っている人は、まだまだ少なかったのです。

なので、顔タイプ診断ができる場所がそもそもない。学びが止まらなくなっていた僕は、単身、「診断」ではなく、顔タイプ診断の「講座」に申し込むことにしたのです。

5.診断結果から見つけた、新しい解釈

気づいたら、銀座にいた。
銀座なんて、ほとんど来たことがない。ハイブランドの店舗が立ち並ぶ様を横目に、とある教室に入った。

前から二番目の席に座り、テキストが配られた。顔タイプ診断の講義。顔の輪郭やパーツの特徴、バランスなどから分析することで、似合う服がわかるというもの。

自分の写真をとって、ものさしで測ったり、持ち寄った雑誌から、どの服が似合うかなどを、話し合ったりした。

ただ、とても難しかったのは、僕以外、全員女性だったこと・・・。

男性の僕からすると、女性のアイテム数は、果てしなく数が多い。また、かける言葉ひとつ間違えてしまうと、誤解が生じてしまうこともある。言葉を選びながら会話をしていた。

ちなみに、わたしの顔タイプは、ソフトエレガント。
大人顔の、顔のパーツに直線と曲線をあわせもつ顔タイプ。シンプルでキレイめなコーディネートが得意なタイプだ。

でも、シンプルな服が得意って、骨格診断だと、ストレートさんだよな・・・。僕は、ウェーブタイプだし、理論を合わせると、なんと矛盾が生じる。複数の理論をどうやって優先して、何を採用したらいいんだろうか・・・。

完全な情報過多になっている僕がいた。

半年前まで、ファッションの「ファ」の字も知らなかった僕が、インプットしすぎたせいで、完全に混乱状態。

いままでは、与えられたおもちゃで遊ぶように、知識を得て、それを単純に実践することがだけが楽しくて楽しくて仕方なかった。だけど、ここに来て逆に、その知識が、僕を悩ませていた。

最後に講師の方がアドバイスをしてくれた。

それは、自分の顔の写真を切り抜いて、雑誌のコーディネートに重ねてみるといいとのこと。

「もはや、理論関係ないじゃん!」と心の中でツッコミをいれたのですが、そもそも、理論は手段であって目的ではないこと。ファッションで解決できる幸福を実現することが目的であることを見失ってはいけない。

たしかに・・・。

そうすると、僕の中にひとつの答えが浮かんだ。

「肌」をよく魅せるのがパーソナルカラー診断。「服」をよく魅せるのが骨格スタイル診断。「自分のイメージ」をよく魅せるのが顔タイプ診断。

自分の中で、ひとつの解釈がでたことで、初期に思っていた呪いからはすっかり解放され、その日の講座を終えた。

6.ひとりだちの時

その後、二ヶ月が経ち、パーソナルスタイリストの期間が終わる。独り立ちの日です。

正直、終わってから、ダイエットみたいに、元の服装に戻るんじゃないかと思ったのですが、意外と、元に戻ることはなかった。

服は手元にあるし、それに服の収納も、コーディネートに大きく関わっていることを実感した。

「こんなに服を持っているのに、着れる服がない」と思った方は、収納から見直してみるといいと思う。

また、アイテムをひとつ絞るだけでも、着回しはしやすくなることが分かった。マーク・ザッカーバーグのリトル版。他人からみて印象に残りにくい、パンツを黒に固定すれば、トップスの着回しで、十分に印象を変えることができる。

たとえば、アウターも、トレンドをみていると、流行色やアイテムなど、影響を受けるのは、ほとんどが、トップス。つまり、コートなどのアウターは、それほど影響を受けない。だから、シンプルで長くつかえるものをアウターは選んだほうがいい。

などなど、有限な資金の中で、創意工夫するようになり、思考の筋肉がついてきていた。

それじゃ、いまの僕が理論ごりごりの服のチョイスをしているかと言えば、そんなことはない。

「守破離」という言葉で表すとするなら、理論や真似によって「守」をまもり、いまは、それにとらわれず、「破」の段階のような気がしている。

身も蓋もない話になってしまうかもしれないが、、結局のところ「自分が着たい服を着たらいい」

だけど、「自分の着たい服という軸」だけで生活すると、スウェットで出かけちゃうかもしれない。TPOって言葉があるように、一緒にいる人のため、または、その場の雰囲気にふさわしくいるために、「他人が思っているの軸」というものに、寄り添うことができると、さらにスタイルアップすると思う。

7.借り物の感覚からの払拭

日常にも変化があった。

学生時代に、一社だけ、アパレルの会社を就活で受けたことがあった。よくそのブランドの服を着ていたし、練習のつもりでエントリーしたんです。「一次面接、私服で来てください」と連絡があったんです。忘れもしない、集団面積の最初の質問。

「では、今、身につけている服を、なぜ着てきたのかを教えてください」

御社に入りたいから、御社の服を着てきた。それが僕の一番手間にある引き出しの答えだった。でも、そんなこと言えるはずもなく、ユーモアに包むこともできなかった。

それこそ、大学生のコスプレ。
「真面目に生活している大学生って、こんな格好でしょ?」
「奇抜な服の色よりも、白とか黒とか来てる人のほうが、大人しそうに見えません?」
「そういう出過ぎない杭の学生が、あなたたちは好きなんでしょ?」

僕の順番になるまでの間、そんなことをぐるぐる考えていた。

「自分が、その服を良くて選んだ」という言葉は、どんなに探してもなかった。

今は、自分が身にまとっているものを、自分が選んだという理由をもって、これを着ている。

Youtubeで流れてくるマンガ広告みたいに「これで人生が変わりました!」なんて大げさなことはあんまり言いたくはないんだけど。

自分が着ているのものに、借り物をまとっているような感覚はなくなっていた。

「上も下も無地を着ていいのは、イケメンだけだよ」

ある日、テレビの女性芸能人が言っているのが聞こえてきた。

この言葉にもきっと様々な意図があると思うけど、もし昔の僕なら、またひとつ呪いを増やしていたと思う。だけどいまの僕は「そういう選択肢もあるよね」と、その言葉をちゃんと聞くことができるようになっていた。

そういうひとつひとつの服への呪いを手放しながら、あまり無理をせずに生きている。

最後に、とある日の出来事を少し聞いてほしい。学びはじめてから、数年後、こんなことを言われた。

「ユースケさんっておしゃれですよね」

いきなり祝福の鐘を鳴らされたような衝撃。
おめでとうと、周りから拍手されているような多幸感。
心臓をわしづかみにされて、そのまま右にひねられ右打ちされた感覚。

めちゃめちゃうれしかった・・・。

褒めてくれた方は、僕からみたら、すごくおしゃれさんで、その人から褒められたことが、何よりもうれしかった。

自分もいつか、誰かを褒めたときに、同じように思ってもらえるような人になりたいというのが、新しい目的になった。

8.さいごに

ここまで、どれだけの人が読んでいるかわかりませんが、長文をご覧いただきありがとうございました。

気づけば、10,000字を超える記事になってしまいました。

15万円という金額は決して安くはないのですが、歯の矯正と同じで、一度身につけてしまえば、ずっと使えることができるし、高くない買い物だったと思います。

きっかけをくれた友人、出会ってくれたスタイリストさん。また、この記事には登場していないのですが、骨格理論を熟知した美容師さん、メイクアップアーティストさんなどなど、学びたいという思いから出会ってくれてありがとうございました。

大量生産、大量消費の時代が終わって、本当にいいものを自分が選んでいく時代になっていくと思います。

この記事を読んでくださった皆様が、ずっと付き合っていきたいと思うお洋服に出会えますように。

おしまい。

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