桜、満開、肩車

桜の花が年々色あせていく

と母は言った

桜も歳を取るのかね?

母は
満開の桜を見上げ
小さく笑った

母の付添の病院帰り
川沿いの桜並木

母は背中も丸まって
小さくなってしまった

二人で見る桜も
両手で数えるほどの年になった

小さい頃、父さんがあんたを肩車してね…

桜を見るたびに
母はその話をする

父も母もまだ若く
私も幼く
桜の花も鮮やかだった

その桜の木の下で
父は私を肩車してくれた

顔の前に近づいた桜の花に
私は手を伸ばした

そんな私を母は
眩しそうに見あげていた

我が家の花見といえば
この川沿いの桜並木

私が小さい頃からの
いや
私が生まれる前から

立ち止まっては見上げ
見上げては立ち止まる母と二人
家までの道を
ゆっくりと歩く
午後

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