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「バズると飽きられる」の構造

ブランドを3年以上運営していると、ローンチ当初は分からなかったことがあれこれ見えてくるようになる。ぼんやりとブランドをやっているように見えて、実は私なりに色々と考えながら前に進んでいるのだ。

特にブランディングについて考える機会が増えた。といっても、教科書的な話ではなく、「ブランドとは何であるか」そして「çanomaはどうあるべきか」という、ブランドとしての根本的な問いを通して私は、何をするべきか、あるいは何をしないべきか、について決定するようにしている。

そういった問いを立て、それについて考える中で、世間的には好ましいとされていることが実は避けるべきことであるように感じることがままある。


例えば、「バズる」ということ。

意図的にであれ偶発的にであれ、モノを作って販売している人にとって、「バズる」というのは願ってやまない事象であることが多いのではないだろうか。有名人がSNSで紹介したおかげで、瞬く間に商品が飛ぶように売れる…少なくともデメリットはない、と感じるだろう。

私もよく、自身でブランドをやっている話をすると、「有名人に使ってもらってさぁ、一気に売れるようになるといいよねー!」といわれることがある。これはどういうわけか、初対面の人によくかけられる言葉だ。

ただ私は、今この「バズる」という現象こそ避けるべきだ、と考えている。その理由はバズった後に飽きられる可能性が高いからだ。結果としてそれによってブランドの寿命は短くなってしまう。

「バズるとすぐに飽きられる」という考えはある一部の人にとってはよく耳にするものかもしれないが、「なぜそうなるのか」についてはあまり議論されていないように思料する。だからその人たちにとっては猫も杓子も「バズはダメ」となる。私はそうは考えておらず、ある一定の状況下においてはバズが有効に働きうると思っている。その理由については後述する。


さて、なぜ「バズると飽きられる」のか。私はその理由を「評価と実態の乖離」だと考えている。

「評価」と「実態」は往々にして乖離する。ブランドは自分たちを正しく伝えられないし、人々はブランドの姿をうまく捉えられない。だからブランドは広告やPR、インフルエンサーを使い、人々はそれを信じたり信じなかったりする。

SNSにより発信の仕方によっては評価を簡単に上げられるようになった昨今、実態を伴わない状態で評価を先行させるブランドが増えた。ただし、そういった手法で上げられたブランドの評価で興味を持った人がその実態に触れた時に、その乖離にガッカリしてブランドから離れていってしまう。これが「飽きられる」の構造だ。

食べログやGoogleマップ上の評価がとても高い飲食店に期待して入ったらイマイチだった、という経験をしたことはないだろうか。きっとその店には2度と行かなくなるだろう。一旦は評価が高いことでとりあえず集客はできるが、リピート率は低く、評価も徐々に下がってくる。「評価と実態の乖離」のいい例だろう。

同じ乖離でも逆のパターン、つまり評価が実態を下回っている状態であれば好ましい状況を生み出す。バズにより評価が実態に追いつくことで集客ができ、さらにそこで顧客は満足しリピートが発生する。結果的に、飽きられることなく人気を継続できるのだ。これがバズっても大丈夫なパターンである。

ここでいう「実態」とはプロダクトやサービスの幅や質等を含めた、ブランドとして顧客に提供できるものの全体を指す。きちんと定義できるものではない抽象的な概念であるがゆえに、スルーされがちだが、ブランドを運営する人は自ブランドの「実態」をある程度客観的に把握しておくべきだと思料する。


桜のように咲き桜のように散る派手なブランドでひと稼ぎする場合を除いては、バズというのはこのようにブランドの寿命を縮め、意図しない方向にブランドを導いてしまう要因となるので、こちらでコントロールができるものではないが、実態が伴わないうちは避けるべきであろう。そして、バズが有益となるのは実態が評価を追い越した時である。この2つが目下の私の考えだ。


çanomaの実態が評価を超えるのはいつになるのだろうか。少なくとも今はそうではない。だから私は今、多くを語らずに、じっとその時が来るのを待っている。それまでは粛々と、実態の強化に努めるのみ。時間はかかるだろうし厳しい道のりだが、そんな道中すらも鼻歌まじりで歩んでいきたい。


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