見出し画像

北風と太陽

 翌日、なんともなかったかのように
彼らは私と接してくれた。照れるわけでもなく、むしろ堂々と感じさせる素振りだった。
私は、最初は、腕を組み警戒していたが、
彼らの態度をみて、距離を縮めた。
 外気は、マイナスを記録しており、
狭い窓ガラスからその寒い風を吹かしている。
 距離感。喧嘩をしたあとの距離感が難しい。
寒い風が邪魔をする。だが彼らは、
すっと私の隣に座り、目玉焼きハムを
頬張った。私は、あっけに感じたが、
それは、シコりがないことを暗示していた。
 北風と太陽の逸話の通り、暖かく対応すれば、コートを掛け、冷たく対応すれば、彼らも
腕を組むだろう。暖かく直ぐに対応するのは
難しいが、向こうからのサインで平気ならば、
こちらも対応するだけだった。
頭のなかで深く試行錯誤するよりも、
態度がすべてを暖かく溶かすという
例だった。
 コードはもう絡まっていない。
固まってもいない。
私も同じ目玉焼きハムをほうばった。
なかなかの味でニンマリした。
別の意味でも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?