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対立の渦中にとどまり、その炎を観察するというアプローチ

「対立の炎にとどまる」という本があります。
つい先日まで数ヶ月にわたる読書会に参加していました。

この本は、人種や民族間のような大きなものから、企業組織内の人間関係の対立にいたるまで、人と人との間で起きる対立の渦に入り、当事者同士の対話を促し解消させてきたアーノルド・ミンデルさんという方の著書です。

私たちは普段、仕事でも、家庭生活においても、対立はよくないものと考えて避ける傾向があります。

「相手が嫌な気持ちになるかも」「相手を怒らせてしまうかも」と躊躇して対立を未然に防ぐこともありますし、ひとたび出した意見が衝突すると、
その場の居心地の悪さから逃げたくて、「もうやめにしよう」と話を打ち切るということが少なくありません。

しかし、ミンデルはこの対立の炎が起きたときに、それをあわてて消そうとしたり、避けたりするのではなく、「炎の中に座す」ことを勧めています。

対立の渦中にとどまり、よくよくその炎を観察することが、その対立の中にある大事な意味に気づくことにつながるからです。

私もそうですが、対立の渦中にいると、その場が緊迫感に包まれますので
当事者は自分の頭がかーっとなって、冷静に自分の気持ちを考えたり、
表現したりということが難しくなります。

そのため、当事者同士が主張していることが本当の意味で聴かれ合わない、
届かないことが多くあります。

怒り、悲しみ、不満の声を出したとしても、相手がそれを受け取めてくれず、むしろ反射的に言い返すことが起き続けるため、その場がエスカレートしていきます。

結果として一方が我慢できず、話し合いを拒否して強硬手段に出るということもあります。世界で今起きている戦争もそうですし、組織や家庭内で一方的に指示、命令で物事を決めてしまうということも同じ種類のものです。

強硬手段は、短期的に対立を終わらせますが、同時に将来的な対立の火種となっていきます。

本の中に、主流派と非主流派という表現がありますが、一方的に非主流派に押し切られてしまった人たちの、遺恨を返そうとう強いエネルギーが未来に帰ってくるからです。

そのため、対立の場でそれぞれが意見を出したときに、ちゃんと立ち止まって、その意見の背景にある気持ちを聞き切る、相手に、複数人の話し合いであればその場に、ちゃんと届けるというリテラシーが必要になります。

そうして、なぜ対立が起きていたのかということの「意味」に場が気付いていくということを促す、そういう在り方をミンデルは、この本の中でエルダーシップと言って紹介しています。

現代の組織運営にも非常に役に立つ示唆に富む本だと思います。
是非、ご興味あれば手に取られてみてください。

来月もよろしくお願いいたします。

2023/5/30 VOL150                                                                                      sakaguchi yuto

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