少し時間軸を伸ばして労働環境をみてみる
経営破たんした旅行会社、てるみくらぶの内定者に対して、企業の争奪戦が起きているというニュースがありました。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/06/tellmeclub_n_15852282.html
私が就職活動をした2000年前後は就職氷河期と言われ、求人倍率はほぼ1倍。
大学を卒業しても、就職できない人はたくさんおり、フリーターは社会問題化していました。
そこからわずか15年あまり、新卒マーケットは大きく様変わりし、必要な人材数を確保できないという企業が増えてきたように思います。
もともと採用は景況感によって一年ごとに企業の方針が変わりやすく、ある年はたくさん採用したと思ったら、翌年はゼロ採用だったりと不安定なイメージがあります。
しかし、近年の人不足の流れは日本の人口構造の影響からくるため、今後人を採用したいと思ってもなかなかできない状態が続いていくと思われます。
厚生労働省人口動態統計のデータをみると、2000年に22歳を迎えた1978年生まれの子どもはおよそ170万人いました。それが、今年2018年の22歳、1998年生まれは120万人です。
およそ50万人減ってきています。
170万人の中から採用するのと120万人の中からとでは採用の厳しさが違って当然です。
ちなみに直近の2016年の出生数は98万人です。今後また20年をかけて、さらに現在の120万人から20万人近く新社会人は減っていくことになります。
一方で人不足にもう一つ大きなインパクトを与えるのが、日本の高齢化による労働力の減少です。
人口問題研究所の将来推計人口のデータをみると、生産年齢人口が今後一貫して減少を続けることがわかっています。(生産年齢人口とは15歳~65歳の人口です。)
2015年の生産年齢人口は7700万人ですが、わずか12年後の2030年には1000万人も減少すると予測されています。(そしてその後2060年には57%の4400万人まで減少します。)
その要因は、比較的人口の多い、かつ現在会社を支える50代、60代が引退していくことです。
今後社内で働くこの層の人たちが定年を迎えて人員補充の必要があっても、新卒者、転職者の採用で補っていくことがますます困難になっていくことが予想されます。
医療の世界では2025年、2040年はターニングポイントとされている年です。
まず、2025年ですが、この年に人口のボリュームゾーンである団塊の世代が後期高齢者に突入します。
ちょうど私の親世代があたるのですが、実は高齢者は75歳まではわりと元気な方が多く、医療や介護のお世話になりません。
しかし75歳を過ぎると急激にその比率(入院比率)が上がってくることがデータとしてわかっています。
私の親が75歳に達する2025年頃、わずか7,8年後に40-50歳になる子世代は親の介護と仕事の両立という問題に直面することになるでしょう。
国は医療費の増大を防ぐために、これ以上病院の病床数は増やさず、在宅医療へと舵をきっているため、高齢者の介護は在宅で家庭に頼る形が増えていくでしょう。(それにもかかわらず、医療介護人材の不足は解消の見込みが見えません、、、)
そのため、企業は既存の画一的な働き方を変えていく人事制度を整えたり、職務を見直したりということが必須になります。
そのような対応ができなければ、新規採用も難しい中、貴重な人材の流出につながっていくと思われます。
また、もう一つのターニングポイントである2040年ですが、この年は日本の死亡人口数が最大になる年です。(高齢者の比率が高まるため)
2040年の一年間で160万人が死ぬと予想されており、ちょうどこの年の出生数予測が60万人ですので、毎年100万人の人口が減っていく時代になると予想されています。
これは医療、介護問題だけではなく、企業活動としての視点からも深刻です。国内市場をターゲットにする企業は、市場が毎年100万人減っていく時代に突入することを意味します。
毎年一つの県ほどの人口が減っていくという時代に日本市場だけをマーケットにするのは厳しく、企業の数は減らざるを得ません。
このような急激な変化は私が生きてきた40年間とはまったく景色が違うものです。
人事としては、これから大きな発想の転換が求められると思います。
それは、過去の施策の延長で採用を、制度をチューニングしていくというものではなく、まったく違う前提や思想に立って、組織づくりの形を各企業ごとに模索していくことが必要になるのではないでしょうか。
また来月もよろしくお願いします!
2017/4/16 VOL82 sakaguchi yuto
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