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ダニエルキムの成功の循環モデルとシステムコーチング


今回は、MIT教授のダニエル・キムさんが提唱した成功の循環モデルについてご紹介したいと思います。

システムコーチングを行う際、このモデルは一つの思想的背景になっています。

上記リンク先のヒューマンバリューという会社が、このモデルをベースにした組織診断ツールを提供しており、私も時々利用させていただいています。

リンク先の解説を見ていただければと思うのですが、このモデルは、

結果の質→関係の質→思考の質→行動の質→結果の質(一番目に戻る)

という順番に影響が及んでいくことを提唱しています。

よい結果を出している組織には共通して、この影響のサイクルがよい方向で回っているということを、多くの事例を統計的に分析して明らかにしたということがこのモデルの大きな価値だと考えています。

よいサイクルとは、結果を出そうと思ったときに、「行動」を変えようとするのではなく、組織の「関係」に働きかけることで実現できるとします。

一方で、仕事で結果を出したいと思う際にとりがちなアプローチは、結果に直接結びつく「行動」にフォーカスすることです。

私も営業マン時代は、ここを徹底して詰めることを習慣化しました。

たとえば、1件の成約をとるためには、10件の社長あるいは決裁者との商談が必要で、そのためには200件の電話によるアプローチが必要。そして、その200件を電話するために必要な時間は3時間で、月~金の何時に電話の時間を確保する、、、、という具合です。

必要な行動をしなければ必要な結果はついてこないということを突き詰めて、曖昧なままなんとなく行動しないということです。

多くの営業マンは、ここが徹底できておらず、なんとなく営業して、なんとなく結果が出ないままでいることが多いものです。

自分が取り組んでいる行動を本当に見える化して、必要な改善行動をとり続けることが、結果を出すためにとても大事なことです。

でなければ、何が悪かったかわからず、同じ問題を抱え続けることになります。

私は社会人の早い段階でこの経験ができたことをとても感謝しています。

ただ、これは何をすべきかが明確で、やりきれば結果が出る際には有効なのですが、必要(だと考えた)行動をとっているにもかかわらず、結果がついてこないという時には副作用があります。

必要な電話、必要なアポイントを必死でとっているにもかかわらず、結果がついてこない。

こうした時に、行動が足りないので200件の電話を300件にしようというように、同じ方向性のアクセルばかり強め続けると、疲弊したり、閉塞感が漂い、人は燃え尽きることがあります。

また、気をつけなければいけないことは、こうして結果が出ない際に、悪者探しが起きることです。

「商品が悪いから売れないんだ」「営業マンの努力が足りないからだ」など誰が悪いのかという「個人」への攻撃が始まってしまうと、組織の関係性は疲弊していきます。

そうすると、循環モデルにあるように「関係」の先にある「思考」、いわばやる気や挑戦心が落ち、ますます「行動」の質が下がって結果が出ないということにつながっていきます。

この考え方自体をお話すると、多くの方に共感いただけるのですが、では、「個人の行動をマネジメントするのではなく、よい関係づくりをしよう」といっても、それで本当に結果が出るのか心許ないというのもやはりあるのではないでしょうか。

私はこのモデルは、マネジメントの価値観の転換も要求されていると感じています。

ニュアンスをお伝えするのが難しいのですが、私の解釈では「計画的」にマネジメントする、そして目標や予算を決めて、目標との差を埋めるアプローチで仕事をするというマインドを捨てることを要求しているように思います。

顧客や競合、市場の変化が早く、どうするとよいのかがどんどん変わる中で、上司や専門家が、「ああしろ」、「こうしろ」と指示することが限界にきている。そのような組織が増えているように思います。

どこかの段階で、会社の方向性、今とるべき答えが組織のメンバー全員の智慧の中から生成的に生まれてくる組織づくりが必要になっているのではないでしょうか。

その際に、関係の質を上げるとは、今の組織はどんな状態なのかを皆が自覚し、何が「この組織にとっていい組織なのか」を皆で話して創っていくというマネジメントの覚悟をすること、そして取り組みを地道に始めていくということなのではと考えています。

その一歩として、冒頭紹介したヒューマンバリューさんのような組織診断ツールを受け、皆で結果を議論するところからスタートするのもおすすめです。

答えを誰かが決めるのではなく、答えをつくり続けられる土壌を整えるのは、時間がかかります。ですが、この視点に立つということを通じてはじめて、このモデルが有効に活用されていくのだろうと考えています。

また来月もよろしくお願いいたします。

2016/1/31 VOL68                                                                                              sakaguchi yuto

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