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【ドラッグストア編】使い方注意!薬学博士・現役製薬研究者が選ぶキケンなお薬!

今回は私の専門分野、薬に関してのお話です。

中でも今回はドラッグストアなどでカンタンに手に入ってしまう危険な薬に関する記事です。

使い方さえ間違わなければ大丈夫なものがほとんどですが、一歩間違えれば深刻な副作用に見舞われます。

ドラッグストアで買った薬を漫然と使うのはおすすめしないです。一週間ほど薬を飲んでも改善しない場合は必ず病院に行き、正しい診断を受けてから正しい薬を処方してもらいましょう。

 

①ロキソプロフェン含有薬(商品名ロキソニン)

 麻薬性鎮痛剤を除くと、とても強力な部類に入る鎮痛剤です。特に偏頭痛持ちの人などは、病院でもらう処方薬よりも効いたという人も多いです。ほかには結構痛みを伴う歯の手術などでも使われます。

 はっきり言って便利な薬です。きちんとメリットとデメリットを知った上で、一時的な痛みに使う分には重宝する薬でしょう。

 ただその効果の分だけ副作用があります。副作用は胃・十二指腸潰瘍です。

 国内の臨床研究の結果です。ロキソニンを2週間飲んだ人と飲まなかった人の胃・十二指腸潰瘍の発生率を内視鏡(胃カメラ)で調べました。その結果、飲まなかった人の胃・十二指腸潰瘍発生率は約3%だったのに対して、ロキソニンを飲んだ人はなんと30%の人に潰瘍が見られたのです。間違っても痛いからといって、お腹の痛みにロキソニンを使わないように。マジでヤバいことになります。

 ちなみにこの胃・十二指腸潰瘍の副作用は、アスピリン(バファリン)やイブプロフェンなど(一般的にこれらのことをNSAIDsといいます)でも同様に発生します。鎮痛剤の慢性的な常用は避けましょう。あくまで一時的な使用にとどめておきましょう。長引く痛みは重大な病気のサインかも知れません。病院に行くこともご検討ください。

 

②コデイン・ジヒドロコデイン・リン酸ジヒドロコデイン含有薬(おもに風邪薬・咳止めなど)

 麻薬性鎮咳薬(咳止め)になります。たくさん飲むと鎮痛効果もあります。よく風邪薬に入っています。

 この薬のデメリットは、まず確実に便秘になります。麻薬性鎮痛薬は、内臓にあるoddi筋という筋肉を収縮させる働きがあります。結果として、胃・小腸・大腸の動きが悪くなってしまうのです。その結果、便秘になります。もともと便秘気味の人は注意してください。最悪、腸閉塞が起こり、放っておくと死に至ります。またこの薬はたくさん飲むと、嘔吐、呼吸抑制(最悪死にます)、依存性、離脱症状、鎮静効果などの深刻な副作用が発生します。何度もいいますが、用法用量を守って短期的に使う分には大丈夫ですが、麻薬性だからと変な使い方をしないようにお気をつけ下さい(笑)。

 ちなみに風邪をひいたとき、ドラッグストアの風邪薬を飲む人もいるかと思いますが、個人的にはあまりおすすめしません。風邪薬に何が入っているかというと、主に咳止め、解熱剤、アレルギー薬(鼻水を止める)、痛み止めくらいです。風邪に効く成分はまったく入っておりませんので(笑)。病院に行きましょう。

 

③エフェドリン・メチルエフェドリン含有薬(おもに風邪薬・咳止め)

 これも風邪薬などによく入っています。もともと気管支を拡張させる効果があり、そのおかげで痰がからんでいても呼吸が楽になる効果があります。

 ただこの薬は弱い覚せい剤としての効果もあります。たくさん飲むことで、ジヒドロコデイン同様依存性が発生することもありますし、心臓・血管系へのダメージもありますので出来れば避けた方がベターです。

 

④ブロムワレリル尿素(一部の風邪薬や鎮静剤)

 これはなかなか危険な薬です。

 このブロムワレリル尿素は、もともとは鎮静剤(抗不安薬や睡眠薬)として利用されていた時期がありました。しかし、多量に飲むことにより致死的であることと、より安全なベンゾジアゼンピン系薬剤の登場により処方薬としては使われなくなりました。そのせいなのかなんなのか、アブナイ薬の代表格なのにも関わらず普通のドラッグストアで売られているのが信じられません...。この薬は鎮静作用があること、依存性があること、強い眠気があること、さらにアルコールとの併用で副作用の発生確率が上がることから、特に避けるべき薬です。

 

⑤ジフェンヒドラミン(主に風邪薬、抗アレルギー薬)

 鼻水・くしゃみによく効く薬です。昔ながらの薬ですが、効果と即効性に優れています。これも用法用量を守って短期的に使う分には問題ありません。ただ副作用として、かなりの頻度で強い眠気、口渇、消化管の不調が発生します。また体質によりますが、数倍飲んだだけで知覚(とくに強い倦怠感を感じます)がおかしくなり、まっすぐ歩くことも出来なくなる場合もあります。ちなみにこの眠くなる副作用を逆に利用した薬がドリエルです。ドリエルよりジフェンヒドラミン(商品名レスタミン)を買ったほうが安いです笑。ですが、臨床試験によると、ドリエルの睡眠導入剤としての作用は3日くらいで効かなくなってしまいます。

 いずれにしても眠気が起こるので、自転車や車を運転する人はけっして飲まないようにしてくださいね。

 

⑥ファモチジン(胃酸分泌抑制薬)

 言わずと知れたガスターです。胃酸の分泌を抑制することで、胃の壁へのダメージを減らし、胃痛を緩和する薬ですね。

 昔は胃潰瘍になると手術しかなかった時代もありましたが、このファモチジンの登場で胃潰瘍が薬で治る時代になりました。そんな革命的な薬がこのファモチジンです。

 効果はすばらしいです。ある研究によると、服用後15分で効果を実感できるとのことです。また用法用量を守って使う限り、目立った副作用もほぼないです。実は私もよくお世話になってます。

 ただ以下の三点だけ注意喚起させてください。

注意点①:慢性的に使いすぎないことです。胃痛に限りませんが、日常の些細な不調・症状には思わぬ大きな病気が隠れていることもあります。最悪胃がんなんてこともあります。長引く胃痛は必ず胃カメラを受けていただき、重大な疾患が隠れていないことを確認してください。

注意点②:胃が痛いときに飲む薬という印象があると思います。しかし、実は胃が痛いには2種類あります。

 一つは胃酸が胃の壁を攻撃して胃痛になるケース、二つ目は食べ過ぎて胃痛になるケースです。

 前者の場合、空腹時に胃が痛みます。この場合、ファモチジンが胃酸を抑制して、胃の壁のダメージが軽減されて症状が治まります。正しい使い方です。

 ただ後者の場合はファモチジンで胃痛は悪化します。なぜならば、食べ過ぎで胃が痛いというのは、胃の中に食べ物が多すぎることが原因だからです。そんなときに胃酸を抑制するファモチジンを飲んでしまうと、胃酸が抑制されたせいでさらに消化が遅くなって食べ物が胃の中に残り続け、胃痛・吐き気が悪化してしまうのです。食べ過ぎの胃痛には別の薬(消化剤)が置いてありますのでそちらをお使いくださいね。

注意点③:ファモチジンを飲んで胃酸を抑制すると、当然消化は悪くなります。このようなとき消化の悪いもの(野菜や一部の果物など繊維質なもの)を食べると、まれに胃の中で胃石というものが形成されてしまう可能性があります。これが小腸に落ちてしまうと最悪の場合、腸閉塞や穿孔(内臓の壁が破れてしまうこと)が起こる可能性が否定できません。胃が痛いときは薬ばかりに頼るのではなく、消化のよいものを食べるように心がけてください。

以上です。
 

まだ他にもあるのですが、3000字を超えちゃいそうなので今回はここまでにします。

体調を崩されたときは無理をせず、病院に行き正しい原因を探り、正しい処方を受けてゆっくり休養をとることが重要です。

ドラッグストアの薬を使うときは、十分な知識をもつこと・用法用量を守ること・短期的な使用にとどめることを忘れずに、上手にご利用ください。

それではまた次の記事で!

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